長命鎖
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第一章
長命鎖
中国貴州省には百苗族という少数民族がいる、中国ではわりかし多くそして多彩な文化を持っている、その百苗族のある村の長老が若い者達に話していた。
「最近わし等も変わったがな」
「ああ、百苗族もか」
「変わっていうんだな、最近」
「爺様がよく言うけれど」
「全くだよ」
「何とさ」
「そう言うね」
「ああ、昔は違っていた」
九十を越える歳でだ、こう言うのだった。
「本当にな」
「テレビも携帯電話もなくて」
「肉なんて碌に食えなかった」
「車も全然なくて」
「この村も静かだったっていうんだろ」
「その通りだよ、本当に静かで何もなかった」
それこそというのだ。
「いや、昔はそうだったんだよ」
「それで今は、だよな」
「テレビもあって携帯電話もあって」
「肉も食える」
「この村にも車だってある」
「何もかもが変わった。あまり豊かでないけれど静かだったこの村も」
しびじみとした口調での言葉だった。
「何かとな。それとな」
「服もだろ?」
「爺様いつもここでこう言うよな」
「服だって変わったって」
「そう言うよな」
「人民服は抜いて」
「あれも着ている人間がいなくなった」
その人民服のこともだ、長老は話した。
「本当にな」
「だから今時な」
「人民服なんてな」
「着てる人いないさ」
「俺達の民族衣装だってな」
「ああ、しかし昔はな」
長老の若い頃、いや子供も頃はというのだ。
「皆そうだったんだよ」
「男も女も皆民族衣装で」
「俺達百苗族の」
「その服だったっていうんだな」
「ああ、人民服より前はな」
それこそというのだ。
「もうそんなこと言っても誰も知らないな」
「そりゃ村の長老の爺様しか知らないからな」
「爺様が知らないことなんてな」
「俺達も知らないぜ」
「それこそな」
若者達は笑って言う、言いつつだった。
長老の家の中、彼等が今いるその中を見回してだった。彼等はそのうえで今度はこんなことを言い出した。
「爺様の家の中もな」
「何だかんだで変わったな」
「ああ、昔に比べて家具も増えて立派になって」
「テレビも買い換えてな」
「爺様は変わらないけれどな」
「ははは、昔から爺様だな」
「そうだな」
長老の外見は変わらないというのだ。
「爺様自体はな」
「俺達が子供の頃から同じ外見で」
「着ている服は変わってもな」
「爺様は爺様だよ」
「これでも変わったぞ」
その長老からの言葉だ。
「わしもな」
「そうなのかい?」
「全然変わってないだろ」
「ああ、爺様だけはな」
「特にな」
「いや、変わった」
長老が言うにはだ。
「髪の毛は薄くなって皺も増えたぞ」
「そうかね」
「あまり変わってないがね」
「俺達が子供の頃からな」
「爺様のままじゃないか」
「わしが言うにはそうだ、あともう一つ変わっていないものがある」
こうもだ、長老は言った。
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