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戦国異伝

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第二百五話 支城攻略その十一

「殿の仕掛ける謀をです」
「北条氏康が自ら動き言葉で打ち消しています」
「そのあらゆる謀をです」
「自身で」
「そうじゃな、そうなると思っておった」
「ですな、そして」
「謀を仕掛け打ち消させて」
 二人もここで言う。
「そして、ですな」
「北条氏康の動きを止める」
「我等に攻めさせない」
「城を囲む我等を」
「これも攻めじゃ」
 謀もというのだ。
「心をな」
「人の心を攻めて」
「そして動けなくする」
「それもまた謀」
「そうなのですな」
「あの者ならわしの謀も封じる」
 信長もわかっていた、そのことは。
「伊達に相模の獅子と呼ばれておらぬ」
「獅子であるからこそ」
「謀も通じない」
「しかし謀を仕掛ければ」
「それを打ち消さねばならないですな」
「そうして打ち消させることに狙いがある」 
 まさにこれがだ、信長の狙いだったのだ。
「打ち消させてじゃ」
「相手を動かさせない」
「北条氏康を」
「それが上手くいっておるわ」 
 満足している顔で言う信長だった。
「その間に我等は北条の城を一つずつ手に入れていき」
「関東の大名達も加え」
「そして、ですな」
「それからじゃ」
 次の段階のことも言うのだった。
「北条を降した後はな」
「はい、その次は」
「若し伊達と戦えば降し」
「そしてその後は」
「数年は、ですな」
「うむ、また政に励む」 
 それにというのだ。
「田畑を開墾し町を整え」
「そして堤や橋、道を築き」
「民と国を豊かにするのですね」
「検地も行い刀狩りもする」
 この二つも忘れないのだった。
「その双方もな」
「政ですな」
「まずはそれですな」
「戦に勝って終わりではない」
「そちらもしてこそ」
「わしは戦よりも政じゃ」
 そちらに重点を置いているのだ、それもかなり。
「政を万全にしてこそじゃ」
「国が成りますな」
「天下を」
「一つにしても後で泰平にしなければ意味がな」
 それが、というのだ。
「だからな」
「はい、では」
「我等はその時も」
「天下の為に働きます」
「今の様に」
 幸村も兼続も言う、それも強く。
 そしてだった、信長も言うのだった。
「では頼むぞ、これから」
「はい、では」
「これから」
 二人も応えてだ、そしてだった。
 信長は自ら小田原を囲んだうえで戦局を見据えていた、その間も選曲は一歩また一歩と織田に傾いていた。 
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