美しき異形達
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第四十五話 博士その七
「お金もな」
「困っていなかった」
「そうだったんですか」
「そうだったのじゃよ」
まさにとだ、博士は少女達に話した、そしてここで。
眼鏡をかけたズボンのスーツの美女が出て来た、その美女がそれぞれパイプ椅子の席を出して着てそしてだった。
そのうえでだ、こう少女達に言ったのだった。
「どうぞお座り下さい」
「あっ、すいません」
「どうも」
「お茶とお菓子も持って来ますので」
美女は少女達に知的な笑みを向けつつこうも告げた。
「お待ち下さい」
「お茶は何かのう」
博士は美女に楽しそうに笑って問うた。
「それで」
「はい、緑茶です」
「おお、緑茶か」
「お菓子は羊羹です」
それだというのだ。
「小倉羊羹がありますので」
「おお、いいのう」
羊羹と聞いてだ、博士は上機嫌で言った。
「羊羹は最高じゃ」
「博士、そのお言葉お饅頭の時もきんつばの時も仰っていますよ」
「団子の時もどら焼きの時もじゃな」
「はい、勿論洋菓子の時も」
「甘いものは大好きなのじゃ」
それで、というのだ。
「だからどれも最高じゃ」
「そうですか、しかし」
「甘いものを食べた分だけじゃな」
「カロリーは消費して下さいね」
「さもないと後が厄介だからのう」
「糖尿病になります」
これが怖いというのだ。
「折角長生きされていますから」
「これからもじゃな」
「ご自愛下さいね」
「わかっておる、わしも気をつけておる」
そうした病気には、というのだ。
「なってからでは遅いからのう」
「そうです、ですから」
「甘いものは程々じゃな」
「あくまで」
「では羊羹は一切れか」
「博士はそうなりますね」
「わかった、ではな」
博士は美女のその言葉に頷いた、そしてだった。
そのお茶と羊羹も程なくして運ばれて来た、美女だけでなく何処からか出て来た着物を着て頭に笠を被った男の子も持って来た。
その子を見てだ、薊は目を瞬かせてから言った。
「女の人もこの子も急に出て来たな」
「そうよね」
裕香も薊に怪訝な顔で答えた。
「何処からかね」
「何で大学の先生の研究室に子供がいるのか」
「気になるわね」
「ああ、僕は豆腐小僧っていうんだ」
子供は少女達に皿の上に切って置かれた羊羹を渡しながら答えた。皿の上には羊羹と一緒に楊枝もある。
「博士の友達だよ」
「豆腐小僧?」
「ああ、何でもない」
博士がここで二人に言って来た。
「この子のことは気にせんでくれ」
「別にか」
「気にしなくていいんですか」
「わしの古い友達の一人じゃがな」
こう二人に言うのだった。
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