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美しき異形達

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第四十四話 薊達の決意その十五

「戦いに来たんだからね」
「そうなんだよな、じゃあな」
「はじめましょう」
「少しお喋りに時間をかけちまったが」
「あらためてね」
「死んでもらうよ」
 カミキリ虫の怪人は二人に楽しげに告げた。
「これからね」
「ではね」
 蛾の怪人もまた言って来た、そして。
 怪人達はそれぞれ身構えた、その彼等に対して。
 薊はカミキリ虫の怪人を見てだ、こう彼に言った。
「あんたでいいよ」
「僕を指名してくれるんだ」
「これでも結構虫は好きでさ」
 薊は自分のこのことも言ったのだった。
「特にカブトムシやクワガタが好きだけれど」
「カミキリ虫もなんだね」
「そうさ、だからな」 
 それで、というのだ。
「相手をしてもらうぜ」
「それじゃあね」
「じゃあ私はこちらね」
 向日葵は蛾の怪人を見て言った。
「蛾の人ね」
「私でいいのね」
「私蝶々好きなの」
 にこりと微笑んでだ、向日葵は怪人に答えた。
「だからね」
「蝶々と蛾は違うわよ」
「同じ仲間じゃない」
「仲間でも蛾は嫌われるものよ」
 蝶と違って、というのだ。
「特に毒蛾はね」
「貴女毒蛾なのね」
「そうよ、模様を見ればわかるでしょ」
 見れば中々毒々しい模様である、如何にもといった姿ではある。
「この通りよ」
「そうなのね」
「それでも嫌いじゃないの」
「あまり違いないじゃない」
 蝶と蛾には、というのだ。
「だから私はね」
「嫌いじゃないのね」
「そうよ、別にね」
「随分心の広い娘ね、気に入ったわ」
 怪人は向日葵の言葉にその言葉で笑ってみせて返した。
「出来れば命は奪いたくないけれど」
「それでもね」
「戦うのが怪人よ」
 こう話してだ、そしてだった。
 向日葵はその手に弓矢を出した、そして薊もだった。
 その手に七節棍を出した、そうしてそれぞれの怪人と対峙した。二人は博士のところに赴く前にも戦うのだった。


第四十四話   完


                       2014・12・30 
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