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転生とらぶる

作者:青竹
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番外編034話 if 真・恋姫無双編 04話

 
前書き
よ……予定は未定…… 

 
「うーん、相変わらずこの糧食ってのは美味くないな。味が薄いというか、塩気が足りないというか」

 行軍中、糧食として配られた物を食べていたアクセルが思わず呟く。
 糧食とはいうものの、いわゆる干し飯に近い代物だ。勿論米ではなく、他の穀物なのだが。
 ともあれその食事が酷く薄味であり、現代生活に慣れていたアクセルの舌には合わない事この上ない。
 基本的に薄味が好みであるアクセルだが、そんなアクセルにしても殆ど味気ない糧食には不満しかなかった。

「そうかしら? 言われる程美味しくない訳じゃないと思うけど」

 そう言葉を返したのは、アクセルの隣で馬に乗っている雪蓮。
 ……ちなみに当然アクセルも馬に乗っているのだが、最初に乗ろうとした時にはアクセルという存在に本能的に恐怖したのか、物凄く暴れていた。
 もっとも殺気を出して威圧した結果、あっさりと大人しくなったのだが。
 今もどこか恐る恐るといった様子で大人しく背にアクセルを乗せて、雪蓮の乗っている馬の隣を歩いている。
 当然雪蓮が近くにいる以上、冥琳達も同様であり……そんな一行がどこに向かっているのかといえば、黄巾党の征伐の為に遠征中だった。
 現在一勢力というよりは袁術の客将という扱いを聞いたアクセルは早まったかもしれないと思ったのだが、結局はそのま協力する事になっている。
 その袁術からの命令により、現在一行は黄巾党の本隊がいる冀州へと向かって遠征中だった。
 ……尚、袁術軍も黄巾党の遠征に出撃してはいるのだが、向かったのは少数の黄巾党がいる西方であり、それもまたアクセルを呆れさせていた。
 その理由としては、当然大勢の黄巾党がいる冀州には多くの諸侯が集まり、その中で手柄を上げるという事は名を上げるという事になる為だ。
 現在名声を欲している雪蓮にしてみれば、寧ろ願ったり叶ったりといった状況だろう。
 もっとも、そんな風に判断出来たのもアクセルというワンマンアーミーがいたからこそだ。
 もしもアクセルがいない場合は、兵力の損耗に関しても細かく気にしなくてはならなかっただろう。
 同時に、袁術が各地に散らばせていた呉の旧臣を手元に戻す事も許可したというのだから、袁術を倒して母親の残した地を取り返そうとしている雪蓮達にしてみれば、寧ろ感謝さえしても良かった。
 そんな状況で行軍していたアクセルは、空間倉庫から取り出したハンバーガーを隣にいる雪蓮へと手渡す。
 尚、盗賊の討伐の時に炎を使って見せた事もあって一時は五胡の妖術使いではないかと疑われたアクセルだったが、結局は仙術であると誤魔化し、魔法や空間倉庫の存在を雪蓮達に明かしている。

「ん? 何?」
「俺の国の食べ物だ」
「……へぇ、変わったもので包まれているのね」

 呟き、ハンバーガーの包装を剥がして口へと運ぶ。
 一瞬、毒味とかは必要ないのかと思ったアクセルだったが、その辺は雪蓮お得意の勘で大丈夫なのだろうと判断する。
 そうして一口食べ……

「っ!? な、なにこれ……凄く美味しい」

 この時代の食事に慣れきっていた雪蓮にしてみれば、正に初めて食べた味であり、同時に香辛料をふんだんに使った刺激的ともいえる美味さに驚愕の声を上げる。
 ファーストフードというよりも、きちんとしたレストランで出されるハンバーガーだ。以前アクセルがOGs世界を旅していた時に纏めて購入した物の1つで、味に関しては不味い筈がない。

「ほう? それ程に美味いのかの?」
「私もー、食べてみたいですー」

 最初に興味を持ったのは祭と穏。冥琳も言葉には出さないが、興味深そうに雪蓮の方へと視線を向けている。
 そんな者達の視線がアクセルに向けられれば、新たに空間倉庫からハンバーガーを取り出すしかなかった。





「私は貴方を認めない!」

 周囲に響く声に、アクセルは呉でもやっぱりこの手の輩がいるのか……と溜息を吐く。
 行軍中に合流した、雪蓮の妹でもある孫権。
 知っている名前が出てきた事に多少驚いたアクセルだったが、そんなアクセルの前に姿を現した孫権は容姿こそ雪蓮に似ていたが性格は生真面目というしかなかった。また、お付きの甘寧にしても主人に似たのか堅物な性格をしており、雪蓮の側にいるアクセルに胡散臭げな視線を向けている。
 唯一、日本刀のような刀を持っている少女だけは、興味深そうな視線をアクセルへと向けていた。

「姉様も姉様です、このような氏素性の知らぬ者を招き入れるなど、何を考えているのですか!」
「でも……ね? 蓮華もアクセルと行動を共にしていればそのうち分かるってば。だから今は……」
「ね・え・さ・ま?」

 姉としてもこの生真面目な妹に凄まれると弱いのだろう。更に言えば、実際孫権の言葉通りアクセルの氏素性が知れないのも事実なのだ。
 ……もっとも、この世界でアクセルの氏素性を知る者がいる筈がないのだが。

「なぁ、雪蓮。何だったら俺はこのまま軍を抜けるか?」

 自分が原因でこのまま姉妹の仲が悪くなるのは面倒事しか予感できない。それならいっそ自分がこのまま軍を抜けた方がいいのではないか。そんな思いで口にした言葉だったが、寧ろその言葉こそが孫権の眦を釣り上げさせる。

「貴方、姉様の真名を!」
「蓮華!」

 無断で真名を呼んだのだと判断したのだろう。腰の鞘から剣を抜き放とうとしたところで、雪蓮が声を掛ける。

「ぐはっ!」

 同時に、上がる悲鳴。
 周囲の者がそちらへと視線を向けると、そこには地面に倒れている甘寧の姿があった。
 その光景を見れば、何が起きたのかは明らかだ。孫権の言葉でアクセルを排除すべき敵、あるいは動きを取り押さえる必要のある相手と判断した甘寧が、剣を突きつけてアクセルの動きを止めようとしたのだ。だが逆にその手を掴まれ、力ずくで無造作に地面に叩きつけられたのだろう。

「思春!?」

 孫権の悲鳴が周囲に響くが、当然アクセルにしても一応仲間になる人物なのだから殺してはいない。寧ろ地面に叩きつける時に軽く引っ張り上げて、与える衝撃を最小限にするという手加減すら行っている。
 ……もっとも、地面に叩きつけてからすぐさま腹部に足を乗せて身動き出来ないようにしているのが、アクセルがアクセルたる由縁だろう。
 そんなアクセルの様子を、既に性格を理解している雪蓮達4人はやっちゃった……とでも言いたげに苦笑を浮かべていた。
 日本刀のような刀を持った少女は、どうするべきかと雪蓮や孫権を見比べている。

「貴様ぁっ!」

 自らの護衛でもあり、腹心でもあり、友とすら思っている相手に対しての行いに激怒した孫権は、剣の鞘へと手を掛け……

「はいはい、そこまでそこまで。アクセルも蓮華もいい加減にしなさい」
「ですが姉様!」
「いいから。言っておくけど、蓮華がどう言おうともアクセルを追い出す気はないわよ?」
「姉様!」

 自分の意見より、あのような怪しげな風体の者の意見を重視するのか。そんな思いを込めた叫びに、しかし雪蓮は落ち着かせるように孫権の頭を撫でる。

「ほら、いいから落ち着きなさい。いい? アクセルは確かに怪しいわ」

 その言葉に、内心で『おい』と呟くアクセルだが、雪蓮はチラリとアクセルに悪戯っぽい笑みを浮かべるとそのまま言葉を続ける。

「けど、そもそも異国の出なんだから怪しくて当然でしょ」
「異国……? けど、それが本当の事を言っているとは……もしかしたら袁術辺りが送り込んできた工作員の可能性も……」
「あのねぇ。いい? よく見てみなさい。もし本当に袁術が送り込んできたとしても、こんなに目立つ男を工作員として送り込むと思う? 普通ならもっと目立たない人物を送り込むわよ」

 ある意味では当然の事。
 それに納得しかけた孫権だったが、やがて恐る恐ると口を開く。

「けど、姉様。あの袁術ですよ? そこまで考えるでしょうか……?」

 ……そう。『あの』袁術であれば、思いつきで何をやってもおかしくない。それはある程度どころか、1時間でも袁術と付き合いがあれば分かる事だろう。
 それだけに、雪蓮は妹からの言葉に思わず動きを止める。
 だが、すぐに何かを誤魔化すかのように口を開く。

「だ、大体仙人のアクセルが、袁術ちゃんなんかの命令を聞く筈がないわよ」
『仙人?』

 その言葉に孫権や足で踏んでいる相手からの視線を向けられたアクセルは、そのまま指をパチンッと鳴らして幾つかの炎を生み出す。

「……仙術……」

 呆然と呟く妹の様子に、もう大丈夫だと思ったのだろう。雪蓮はアクセルの方へと目配せをし、それを見たアクセルは踏んでいた相手から足を離す。

「……ふんっ!」

 不愉快そうに鼻を鳴らしながら立ち上がると、そのまま孫権の側まで戻っていく。

「さて、取りあえずアクセルを仲間にするのに異論はないわね? 自己紹介しなさい。真名に関してもよ」
「姉様っ!?」
「雪蓮様!?」

 2人が反射的にそう叫ぶが、雪蓮は困った様子もなく口を開く。

「いい? 私達は人数が少ない。それだけに一致団結していかなければならないのよ。なのに、いがみ合いをしていてもしょうがないでしょ」

 それに……と、雪蓮の視線はアクセルの方に向く。

(1人で軍隊と同様の働きが出来るアクセルの力は、私達としてみれば是が非でも欲しい。それを繋ぎ止めておく鎖にするという意味でも丁度いいしね。……ま、私としては身体で繋ぎ止めるってのも面白そうなんだけど。結構好みだし)

 そんな雪蓮の内心は理解出来ないのだろうが、それでも姉であり主君である雪蓮に言われれば生真面目な2人としては従うしか出来ない。
 渋々……そう、あくまでも雪蓮に言われたからという風体を隠しもせず、自分はまだお前を認めた訳ではないという意味を込めてアクセルに視線を向けつつ、孫権が口を開く。

「姓は孫、名は権、字は仲謀よ。真名は蓮華」
「甘興覇。真名は思春」
「姓は周、名は泰、字は幼平、真名は明命と申します!」

 そう告げ、どこかぎこちないながらもようやくの自己紹介は終わって、進軍を再開するのだった。
 明命のみは他の2人と違って、アクセルに対して特に不信感を抱いていないようだったが。





「……また、随分と人数が集まっているな」

 雪蓮達が袁術に攻略を命じられた冀州にある黄巾党の本拠地。そこに到着した時、アクセルは思わずといった様子で周囲を見回す。
 見るからに色々な旗が翻っており、もしかして中華全ての武将が集まってきているのではないかと思える程の規模だったからだ。
 勿論それは錯覚であり、ここに集まっているのはほんの一部でしかない。
 事実、袁術の軍隊は全く違う場所にいるし、諸侯の中でも最大勢力の袁紹の姿もないのだから。

「それで、これからどうするんだ?」

 この世界の軍事的な出来事に全く詳しくないアクセルが、呉の陣地に建てられた天幕の中にいる雪蓮の方へと視線を向ける。
 この中にいるのは主要メンバーのみであり、特に気を遣う必要もない。
 ……もっとも、蓮華や思春といった真面目な者達からは、その言葉遣いに対して咎めるような視線を向けられているのだが。

「普通ならここに集まった軍が協力して、黄巾党に挑むことになるわ」
「そうだな。何しろ黄巾党の勢力は少なく見積もっても20万を超えている。ここに集まっている軍勢が各個に挑んでも、まず数の差で勝ち目はない」
「……この黄巾党を率いている首謀者がここにいるんなら、そいつらを倒してしまえばいいんじゃないのか?」

 20万という数に尋ねるアクセルだったが、それに頷きを返したのは祭だった。

「うむ。じゃが、忠誠心が非常に高いらしいからの。下手に頭に手を出せば、寧ろ暴走する可能性すらもある」
「暴徒が20万か。……で、どうするんだ? 何なら俺が片付けてきてもいいが?」
「アクセル! 貴方、何を適当な事を!」

 軽い口調で告げたその言葉に、蓮華がもう我慢出来ないとばかりに叫び声を上げる。
 仙術が使える仙人であると説明されてはいても、実際にその力を見た訳ではないのだから無理もないだろう。
 だが、蓮華だけではない。500人を超える賊をあっさりと焼き殺す光景を見ていた雪蓮達までもが待ったを掛けた。
 その様子に首を傾げるアクセル。
 まさか、自分の実力を未だに信じられないのか? そんな視線を向けると、雪蓮は違うと首を振る。

「確かにアクセルの力は強力よ。それは間違いない。アクセル自身が言っているように、恐らく本当にあそこにいる黄巾党の奴等をどうにか出来ると思うわ。けどね、アクセルの力を、今ここで……こんなに人目の多い場所で他の皆に見せる訳にはいかないのよ。これから呉を再建する為の、文字通りの切り札なんだから」
「……なら、どうするんだ?」
「そうね。恐らく……」

 雪蓮がそこまで呟いた、その時。

「官軍よりの連絡です。各軍から代表3名を出して軍議を開くとのこと」

 してやったり、とした笑みを浮かべる雪蓮。

「ま、こういう事ね。……さて、軍議だけど出るのは私、冥琳。それに……」

 チラリ、とアクセルの方に視線を向けて口を開く。

「アクセル、お願いね」
「俺でいいのか? 切り札なんじゃないのか?」

 それこそ、他に幾らでも候補がいるだろ。
 そんな思いで尋ねたアクセルだったが、雪蓮は問題ないと口を開く。

「確かにそうだけど、切り札であるというのはともかくとして、アクセルという存在が私達の仲間にいるというのは周囲に知らしめておく必要があるのよ。後々袁術に妙な干渉をされない為にもね」

 こうして、何だかんだ言いつつも結局その3人が軍議に出る事になる。





 軍議の場、既に大勢が集まっているその場に、雪蓮達3人が入り……その瞬間、アクセルの動きが止まる。
 見覚えのある顔があったからだ。
 向こうもアクセルの顔に気が付いたのだろう。思わずといった様子で動きを止める。
 そんな相手に、アクセルは思わず声を掛ける。

「盗賊共の親玉が何でこんな場所にいるんだ?」

 そのアクセルの言葉に、周囲にいた者達の視線が盗賊の親玉と呼ばれた人物……曹操へと向けられるのだった。 
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