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戦国異伝

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第二百四話 箱根八里その十一

「民は苦しみ殿ご自身も」
「その最後はな」
「滅びます」
 そうなってしまうというのだ。
「そして後世に暴君を書き残されます」
「よくはないことじゃ」
「ですから」
「暴君になってはならぬな」
「民にとっても殿ご自身にとっても」
「そういうことじゃな」
「左様です、ですから」
 本多はさらに言った。
「なられるのならです」
「名君じゃな」
「殿ならばなれます」 
 その名君にというのだ。
「ですから」
「なるべきじゃな」
「必ず」
 こう言うのだった。
「名君に」
「わしは数年前までしがない一領主じゃった」
 今川家の下にいるだ、そうした者に過ぎなかったというのだ。
「人質にもなっておった」
「左様でしたな」
「しかしそれが百六十万石の大大名になり」
「天下の柱の一つともなり」
「そしてか」
「はい、名君にもです」
 なれるとだ、本多は主に言うのだった。
「必ずや」
「嘘の様な話じゃな」
「しかし嘘ではありませぬ」
 本多はさらに言うのだった。
「殿ならば」
「そうですな、それがしも本多殿と同じ考えです」
 石川も家康に言うのだった。
「殿ならです」
「名君になれるか」
「はい、ですから」
「励めというのじゃな」
「政にも」
「うむ、ではそうしよう」
 家康もここで遂に頷いた、そうしてだった。
 今は兵達を休めさせた、そのうえでこれからの戦のことだけでなく政のことも考えるのだった。家康もこれからだった。
 

第二百四話  完


                         2014・11・1 
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