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美しき異形達

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第四十四話 薊達の決意その五

「それがどうもね」
「亡くなってはおられないんですね」
「その可能性はかなり低いね」
 人は必ず死ぬものだ、だがこの謎の伯爵についてはだ。その可能性が低いのだ。それも極めて、である。
「まず死んでいないね」
「その後も見たという人がいるからですか」
「それも多くね」
「ナポレオンやチャーチルですか」
「その他にもね」
「ううん、じゃあひょっとしたら」
 裕香は智和の話を聞きつつ考えながら言った。
「私達も会えるかも知れないですね」
「擦れ違っていたかも知れないよ」
「この街で」
「そう、あの人は何時何処にいるかわからない」 
 そのことを誰も知らない、それが故にというのだ。
「だからね」
「若しかすると」
「そう、この街に来ていて」
 そして、というのだ。
「擦れ違っているかも知れないよ」
「そう思うと凄いですね」
「特にこの街は不思議な街だから」
 八条町、今彼等がいるこの町はというのだ。
「妖怪変化の話も多いしね」
「そうしたことからもですか」
「若しかしたらね」
「その伯爵もですか」
「来ている、来ていたかも知れないし」
 それに、というのだ。
「擦れ違っていたこともね」
「有り得るんですね」
「その可能性は皆無ではないよ」
「ううん、そうですか」
「変装も得意という話があるし」
 この面でも謎の人物とされているのだ。
「とにかく正体不明な人物なんだ」
「本当に凄い人なんですね」
「そして日本ともね」 
 今彼等がいるこの国ともというのだ。
「関係があってもね」
「それもか」
「不思議じゃないんですね」
「日本自体も色々な話がある国だからね」
 そうしたオカルト関連の話にも事欠かない国である、それこそ古来よりそうした話が様々な書に残っている。
「特にね」
「特に?」
「特にっていいますと」
「皇室にまつわるお話はね」
「ああ、皇室の方々とか」
「三種の神器もですね」
「そう、皇室の方々にもそのご周辺にもね」
 智和も二人にさらに話した。
「そうした話が多いから」
「あれだろ、今も陰陽師が宮内庁にいるとか」
「その話は本当臭いね」
「凄い術者がいて皇室どころか日本も守っているとか」
 薊はかなり真剣に話した。
「そうした話が」
「本当みたいだね」
「事実は確かめられないか」
「皇居、宮内庁の奥には首相も入ることが出来ないよ」
 みだりにである。
「滅多なことではね」
「首相でもか」
「うん、それだけにね」
「何があるかわからない場所か」
「皇室はある意味日本のそうした話の軸でもあるんだ」
 陰陽道だけではない、様々なそうした術それ以上に宗教で守護されてきた。それが皇室の歴史の一面なのだ。 
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