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美しき異形達

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第四十四話 薊達の決意その二

「気付かないっていうか」
「まだ身に着けていないです」
「そうなんだね、僕はね」
 智和は何故自分がそうした考えを身に着けたのかをだ、二人に話した。
「お祖父さんに教えてもらったからね」
「ああ、あの」
「そう、科学者だったね」
「先輩のお祖父さんって人間的にもいい人だったんだな」
「出来た人だったよ、僕に色々と教えてくれたし」
 智和は懐かしむ笑顔で二人に自分の祖父のことを話した。
「学問以外のことも」
「そうした世間様のこともか」
「うん、教えてくれたんだ」
「本当にいい人だったんだな」
「とても優しかったしね」
「そのうえでしっかりしていた」
「今も尊敬しているよ」
 祖父として、そして人間としてというのだ。
「そうしたことを自分では言わないしね」
「まあ自分を尊敬しろとか言う奴なんてな」
 薊はそうした人間はそれこそ、という口調で口の端を歪ませて言った。
「馬鹿だからな」
「そういう人ってね」
 裕香も言う。
「絶対に尊敬されないわよね」
「かえって馬鹿にされるぜ」
「人間としてね」
「というか恥知らずもいいところだろ」
 そうした人間は、というのだ。
「自分を尊敬しろとか他人様に言うって」
「そうよね」
「それも相当な、な」
 厚顔無恥な愚者だというのだ、世の中はこうした意味でも広く実際にそうしたことを言う輩がいるから恐ろしい。ましてやそうした輩が身近な血縁者であるとこれ以上不幸なことはそうそうないであろう。
「けれどな」
「先輩のお祖父さんはね」
「そうした人じゃなかったんだな」
「立派な人だったのね」
「うん、謙虚でね」 
 智和は微笑んだまま二人に彼の祖父のこの美徳も話した。
「あらゆる面でかくありたいと思うよ」
「そうなんだな」
「そのお祖父さんから言われた通りね」
「博士に連絡取っておいてくれるんだな」
「うん、だからね」
 それで、とだ。智和は二人にまた言うのだった。
「君達はね」
「ああ、その博士のところにな」
「安心して、ですね」
「行くといいよ。何かと色々な噂のある人だけれど」
「百五十歳とかか」
「魔術とか錬金術にも詳しいとかね」
 博士のそうした噂がここでも話された、しかも智和はそうした噂をかなりの割合で真実とみなした口調で話した。
「妖怪とも関係があるとか」
「どんどん人間離れしてきてないか?」
「そうだね、人間でないって噂もね」
「あるんだな」
「普通のね」
 肉体的に、というのだ。
「人間でないという噂もあるよ」
「仙人とかか」
「そうも言われてるよ」
「仙人なあ」
「古今東西のあらゆる学問に精通していて無数の博士号も持っている人だから」
「本当に凄い人だな」
「僕もあの人とは何度もお会いしているけれど」
 智和自身の面識のこともここで言うのだった。
「とにかく知らないことはない」
「何でも知ってるのか」
「そう、そうした人だから」
「ひょっとしたらか」
「君達のこともわかるかもね」
「だといいがな」
「僕の祖父もあの人と知り合いだったんだ」
 智和はこのことも話した。 
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