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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第三幕その一

                 第三幕  長靴を履いた猫
 先生はこの時ご自身の研究室にいました、講義を終えてそうして今は今度発表する論文を書いていました。
 そして一旦書いてからです、同僚の教授さんに見てもらいました。
 先生は教授さんが読み終わってからです、尋ねるお顔で問いました。
「あの、それで」
「はい、論文の内容ですね」
「如何でしょうか」
「はい、面白い論文ですね」
「面白いですか」
「そうです、細菌を生物として捉えたうえで」
 そうしてとです、教授さんは先生が書いた論文を一旦ご自身の前に置いてそうしてから先生ご自身にお話しました。
「その増殖や動きを考察していく」
「それがですね」
「こうした論文はよくありますが」
 それでもというのです。
「先生の論文は」 
「どういったものでしょうか」
「社会や他の細菌との関係も考えていますね」
「はい、細菌の社会です」
「そうしたお考えですか」
「そして僕のその考えがですね」
 先生は教授さんに言いました。
「面白いですか」
「流石ドリトル先生です」
 先生ご自身に微笑んで言うのでした。
「こうしたお考えがあることが」
「左様ですか」
「そう思います、あと先生は」
 今度は教授さんがです、先生に尋ねました。
「医学以外の論文も書かれていますね」
「はい、日本に来てから」
「文学や歴史学、民俗学も」
「そうしたものも研究しているので」
「それで書かれていますね」
「そうしています」
「いや、凄いですね」
 教授さんは先生に対して唸る様にして言いました。
「本当に」
「そちらの論文を書くことも」
「それも日本語で、ですよね」
「こちらに来てからは日本語でも書く様にしています」
「余計に凄いです」
 イギリス人である先生がそう出来ることがというのです。
「いや、本当に」
「そうですか」
「はい、私なんかとても」
 教授さんはまた言いました。
「そんなことは出来ないです」
「文学や歴史学の論文を書くことは」
「はい、出来ません」
 こう先生にお話してです、さらに言うのでした。
「医学だけで精一杯です」
「そうですか」
「先生は理系も文系もですから」
 両方の学問が出来る、そのことがというのです。
「神学もされていますよね」
「あっ、神学は」
「キリスト教のことは」
「僕の神学は実は」
「イギリス国教会の立場ですか」
「日本の神学とは違うと思います」
「そうなのでしょうか」
 教授さんは先生の今のお言葉には微妙なお顔になって返しました。
「先生の神学は」
「はい、この学園には神父様と牧師様がおられますね」
「そうです、カトリックとプロテスタントですね」
「イギリス国教会はプロテスタントの中でも」
「また違っていますか」
「そうなのです」
 こう教授さんにお話します。
「そうなっていますので」
「だからですか」
「こうした論文でいいのかと」
「そう考えておられますか」
「はい」
「ううん、別にいいのでは」
 先生のその懸念にです、教授さんは微妙なお顔になって答えました。 
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