オズのベッツイ
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第三幕その三
「あそこは厄介じゃよ」
「それでも行かないといけないんですよね」
ここでまた言ったナターシャでした。
「あの山脈に」
「そうなるのじゃ、ウーガブーの国に行くには」
「それじゃあですね」
「あそこで山に苦しめられずに進めたらのう」
「お空の上を進めたら楽ですね」
ナターシャはふと閃いて言いました。
「そうですね」
「そうして進められれば楽じゃな」
「その通りですね」
「しかしじゃ」
それでもというのです。
「それが出来るにはな」
「気球があれば」
「空を飛ぶ道具じゃ」
それが必要だというのです。
「気球でなくてもな」
「それが必要ですね、山脈を楽に越えることは」
「私は何度かあの山脈を越えてるけれど」
こう言ったのはベッツイでした。
「だから当然って思っていたけれど」
「それは、ですね」
「そう、貴方達には辛いわね」
山脈を越えることはです。
「考えてみたら」
「そうですか」
「どうしようかしら、このまま越える?」
ベッツイはナターシャ達に尋ねました。
「山脈に回されながら」
「私達も思っていましたけれど」
「じゃあこのまま行く?」
「そうする?」
ナターシャは恵里香達に顔を向けて尋ねました。
「ここは」
「そのつもりだったけれど」
「どうしようかな」
「羊飼いさんのお話を聞くとね」
「やっぱり、かな」
四人はこうナターシャに答えました。
「他の方法で行くことが出来たら」
「それでいいかな」
「ないと最初考えていた通りにそのまま行くけれど」
「あったら」
「まあ他の方向で行きたいのならじゃ」
羊飼いさんが言ってきました。
「わしがあるものを貸すぞ」
「あるもの?」
「あるものっていいますと」
「うむ、この前ここに魔法使いさんが来たことがあってな」
オズの魔法使いです、オズの国の名士の一人であり誰からも愛されている気さくで知恵も備えている人です。
「簡単な気球を借りたのじゃよ」
「気球をですか」
「それを貸そうか」
こうベッツイ達に申し出たのです。
「王女さん達があの山脈を苦労して越えたくないのならな」
「そうしていいんですか?」
「構わんよ、王女さん達は友達じゃ」
羊飼いさんはベッツイに優しい笑顔で答えました。
「だからな」
「そうですか」
「さて、どうするんじゃ?」
こう問うのでした。
「よかったら貸すが」
「ですがお借りしても」
ナターシャが羊飼いさんに言うことはといいますと。
「お返しする方法が」
「ないというんですね」
「山脈を越えたら気球も一緒ですから」
「ああ、その心配はない」
「それはどうしてですか?」
「気球には魔法がかけられていてな」
羊飼いさんはナターシャにお話します。
「一人でにわしのところに帰って来るのじゃ」
「仕事を終えたら」
「そうじゃ、だからそうしたことは気にしなくてもいい」
こうお話してくれるのでした。
「別にな」
「そうなんですね」
「ついでに言うと燃料とかの心配もない」
こちらも、というのです。
「だからじゃ、どうじゃ」
「どうするの?」
ベッツイはあらためてナターシャ達に尋ねました。
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