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ハイスクールV×D ライド28
(何と言うか……オフェンスが頼りに成らない……)
ぶっちゃけ、それが四季のグレモリー眷属に対する評価だった。赤龍帝の能力は実際に戦っているので完全に把握している上で『弱い』し、女王と戦車は己の持てる力を嫌悪から十全に発揮できず、僧侶の片割れはまともに王が扱えずもう一人は回復役……流石にこの状況で敵を癒すと言う事は無いとは思うが攻撃面では期待できない。此処に居ない騎士に至っては四季の評価では三流以下。
(念の為にカイザードに連絡していたけど……不安は残るか)
どちらかと言えばそれは最悪の場合に使う最後の手札……。切り札を切る際に用意しておくための最後の切り札……。己の神器は使いたくないが、最後まで隠すべき手札では無い。……故に『カイザード』は神器と違ってなるべく見せたくない手札なのだ。
だが、最悪の場合、詩乃をこの場から避難させる為には切るしかないカードでもある。
(予想通り、あの時の狂人神父に聖剣マニアに戦争狂か)
フリード、ハルパー、コカビエルと、内心で見事に狂人が三人揃ったと思ってしまう。『類は友を呼ぶ』と言うが真実だったのかと改めて思うほどだ。
(……『ディメンジョンポリス』の力を借りれば、コカビエルに勝つ事はできる……。けど)
流石にそれは出来ない。彼らに頼んでいる役割は、自分達の正体が知られてしまった現状ではどうしても必要となることなのだから。
……魔法と科学……二つの力が融合した惑星クレイの英雄に数えられる彼等の力さえあれば、勝つことは難しくないだろう。だが、彼等の存在は今は知られる訳には行かない……。
「四本の聖剣……」
「これはいったい?」
結界の中へと飛び込んだ彼等の目に写ったのは空中に浮かぶ豪華な装飾の施された椅子に座している男……今回の計画の首謀者である堕天使の幹部『コカビエル』と、魔法陣の中で神々しい光と共に浮いているのは四季が超兵装によって切り裂いた物を含んだ四本の聖剣。
(イリナって奴の持っていた聖剣は奪われたか。ゼノヴィアって奴は巧く逃げられた様だな)
それでも、悪魔では無い人間である四季にとって、その一撃の攻撃力だけは警戒しなければならない破壊の聖剣が敵の手にないのは幸いだった。
「ふん、四本の聖剣を一つにするのだよ」
疑問の声に愉しそうに答えるのは魔法陣の中心に立つバルパー。校庭全体にも広がっている怪しい魔法陣。それが聖剣統合の為の魔法陣なのだろうが……
(なんだ……あの魔法陣から感じられる嫌な予感は?)
ふと、聖剣の浮かぶ魔法陣とコカビエルの目的、そして……堕天使の行動パターンが四季の中で一致する。
(あの魔法陣はまさか……聖剣統合をスイッチに街を破壊する為じゃ……)
まさかとは思うが、街ごと破壊する事でリアスとソーナの命を奪い悪魔への宣戦布告へとする事、同時に廃教会を隠れ家に選ぶと言う神への皮肉を好む……堕天使達の性質とも言える行動パターンも、教会の象徴である聖剣、それも聖剣の代名詞と言えるエクスカリバーを完全体に近づける事をトリガーとすると言うのは……最大級の“皮肉”だろう。
「バルパーよ、あとどれくらいだ?」
「五分も掛からんよ」
「そうか……では頼むぞ。さて、サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」
バルパーとのやり取りでほぼ確信した。……コカビエルは武器……聖剣を武器として使うことを選ぶタイプではない、間違いなくエクスカリバー統合は別の事へのスイッチだ。四季がそう考えているとコカビエルはリアスに顔を向けて尋ねた。
「お兄様とレヴィアタン様の変わりに私達が……!」
『お前を倒す』とでも続くであろうリアスの言葉を遮って風切り音が響いたかと思うと、爆発音が響き体育館が消し飛んでいた。
「流石は聖書に刻まれた堕天使……クレイの英雄の足元程度には力が有るか」
「そうね。今の私達じゃ勝てる相手じゃないわよ……完全に」
「でも、カイザードが居てくれれば勝てる相手だよな」
「だけど、頼ってばかりじゃ駄目でしょ」
「同感」
その光景に驚愕するグレモリー眷属と違い、何処か余裕の有る会話を交わす四季と詩乃。少なくとも惑星クレイの英雄の一人であるカイザードの事を知っているが故に、同じ程度の事は出来るであろう実力者を比較対象にした為に驚愕は少ない。……コカビエルもまだ全力では無いだろうが、カイザードにはまだまだ上がある。
「つまらん。……まあ良い、余興にはなるか」
落胆と言う様子を見せているコカビエルだが、四季達やリアス達との戦いは余興と気を取り直した様子だ。
「余興か……」
「言ってくれるわね……」
そんなコカビエルを前にしても四季と詩乃の二人の闘志は失われていない。目指すべき目標を前にしてもコカビエルの力は通過点、何より隣に立つ大切な人のためにも負けられないのだから。
「う、嘘だろ……」
なお、一番ビビッて居るのは一誠だったりする。まあ、この間まで一般人だったのだから当然と言えば当然だろう。……レイナーレ、ライザーと一応格上を相手にしてきたが、幸運な事に彼の腕に宿る神を殺せる力が有れば、手が届く相手だったのだが……今回のコカビエルは、圧倒的な格上……一斉に取っては未知の領域に居る相手だろう。
『アイツは聖書に記される古からの強者。先代魔王や神達を相手に戦った生き残りだ』
そんな一誠にドライグの励ましが響くが、ギギギッと乾いた動作で一誠の視線が……体育館だった場所へと向く。其処には巨大な光の槍が突き刺さっていた。
「あ、あんな奴に勝てるのかよ?」
『いざとなったらお前の体の大半をドラゴンにしてでも打ち倒してやるさ。倒せないでも、一時間くらい動けないぐらいには出来るだろう』
「……そう言うレベルって事か?」
そう言うレベルである。
一誠が何処までドラゴンになる事でコカビエルを一時間くらい動けなく出来るかは疑問だが、何気に惑星クレイの神聖国家ユナイテッドサンクチェアリでは人からドラゴンへの転生は守護竜が齎した奇跡に近い……簡単にドラゴンに生まれ変わられては立場が無いと思う。
まあ、未だに禁手に至ってない一誠だが、自分の肉体の一部を代償に一時的に至る事が出来るそうだ。ライザーとの戦いでは片腕を代償に一時的に禁手へと至ったそうだ。
「さあ、地獄から連れてきた俺のペットと遊んで貰おうかな?」
コカビエルが指を鳴らすと闇世の中から地響きを慣らしながら、巨大な何かが近付いてくる。
血の如き真紅の双眸、ギラつく牙、そして、凶悪な形相の三つの首を持った犬……それも二体。
「ケルベロス!? 本来は地獄……冥界へ続く門に棲む地獄の番犬……。こんなものを人間界に持ち込むなんて!?」
「や、やばそうっすね……」
驚愕の表情を浮べるリアスと本格的にヒビっている一誠。
「やるしかないわ! 消し飛ばすわよ、皆!」
「「「「はい!」」」」
「一体はオレ達で仕留める。後衛は任せた!」
「任せて、絶対に外さないから」
全員が対峙する地獄の番犬の相手に意識を向ける。凶暴な相手だが、まだまだ控えているコカビエルはそれをペットと言いきれる相手だ。
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