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極短編集

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短編20「よくありそうな、ゲーマーの話」

 2039年。

 人類は一丸となり、地球外生命体を木星まで退く事に成功した。

◇◇◇

「この書類出してくれる?」

「分かりま」

 それは突然だった。気付いた時には、爆風に飛ばされていた。

「いたたたっ!」

 身体を起す。まだ辺りは、白いホコリがまいたっている。目を凝らすと、誰かが倒れていた。同僚だった。同僚はすでに、動かなくなっていた。
 数ヶ月前、俺はスカウトされていた。へんな話しだが、俺はランキング上位者だった。とはいえ、ゲームの話なのだが。
 ゲームセンターでは、俺は、ちょっと有名だった。オンライン式対戦戦闘機ゲーム。つまりは、シューティングゲームが得意だったのだ。

「あの~、ちょっとお話が……」

 とあるゲーム大会での授賞式のあと、大会運営者とは別の人間に声をかけられた。

「えっ、僕がですか?これは勧誘?」

「まあ、そういう事になります。実は……ゲーム大会とは表向きで、本当はゲーム型シミュレーターで、優秀な人材を集めておりました」

「いったい俺なんかに、何が出来るんだよ!?ただのゲーマーだよ!?」

「あっまだ、お話しがっ」

 俺は、面倒くさいことに関わりたくないと思い、慌てて席を立った。男が道をふさいだ。

「いきなりで本当に済みませんっ!しかし、いずれ分ります。これは私の名刺です。もし何かあれば最寄りの自衛隊にご連絡下さい!」

 男は、俺の手に名刺をねじ込んだのだった。
 それからそれは、突然起きた。爆風で飛ばされたが、幸いにもかすり傷ですんだ。しかし、さっきまで話していた同僚は……。俺は、ほんのわずかの違いに身震いした。俺は破壊された壁から外を見た。

「あっ」

 言葉に詰まった。見た事がない物が空に浮かび、街を破壊していた。

「ただいま、未確認の飛行物体により、我が国が攻撃されています」

 携帯のラジオからは、物々しい雰囲気で警報放送がされていた。

「えー、確認されているのは……えっ?日本だけじゃないって!?えー、日本だけでなくアメリカ、中国……」

 とにかく、世界的に何かが始まっているようだった。俺は、会社を抜け出し、車ですぐの実家に向かった。

「あっ……」

 俺は言葉を失った。道を先に行くと……

「ない!何もないっ!あーっ!?」

 今までの人生で初めてであろう、叫び声をあげた。

なかった。

 俺の街が……半分……。目の前は開けていて、街の跡形もなく、焼け野原になっていた。俺はその足で、あの男の所へ向かった。

「お待ちしていました」

 男に会うまでは、2時間ほどかかった。俺は、最寄りの自衛隊の駐屯地に行った。物々しい警備の中、頼りは捨てずに持ってた、クタクタのあの『名刺』だけだった。

「お分り頂けたでしょうか?人類は、地球外生命体と交戦中なのです」

 男は言った。俺はその後、男が呼んだ別の人間に詳しい説明を受けた。その日だけで、人類の人口は半分になった。
 俺は、本当の戦闘機に乗る事になった。最新鋭の、宇宙航空両用戦闘機。まさに、ゲームで使っていた機体だった。
 それから、5年。俺は迎撃の為に、世界中を飛び回った。地球外生命体の攻撃に人類は、国境、人種、宗教の壁を超えつつあった。
 そして、あの日から30年……

 人類一丸となり、地球外生命体を木星まで退く事に成功した。

 稀に、火星付近まで侵犯に来る時もあるが、迎撃出来るだけの力をつけていた。これまでに、幾多の人類が犠牲になっていった。人類は国境を超えて結束した。宇宙の脅威から、自分たちを守る為にと!

◇◇◇

 冥王星軌道上。

 鈍い銀色の球体が、宇宙の闇に浮かんでいた。その球体の中の司令室にて……

「司令、今回のミッションは、短時間でうまくいきましたな」

 と、参謀が言った。

「ああ、地球人は自分の外に目標を設定してやると、結束する性質があったお陰だな!まあ、宇宙連合を作るには、まだまだかかるが、まずは……第一歩だな」

「そうですなあ、やっと宇宙侵略ゲームに参加できたのですが……まだまだ、我々は新興連合ですからねえ」

「これから地球を拠点に、新連合を作り、宿敵の帝国とぶつけ合わそうと思う。まあ、見ていたまえ、私の戦略を!」

 そういって司令は、ゲル状の身体を揺さぶり……


 笑ったのだった。

おしまい



 
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