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インフィニット・ストラトス 乱れ撃つ者

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イレギュラーな試合 前編

「一戦目から当たるとはな……待つ手間が省けたというものだ」


「そりゃなによりだ。 こっちもおんなじ気持ちだぜ」


アリーナの中央でにらみ会う一夏とボーデヴィッヒ。
俺はそんなボーデヴィッヒの後ろで、試合開始の合図を待っていた。



(本気でやって、勝つたい気持ちはあるんだけどなぁ……)


チラリと視線の先にはボーデヴィッヒ。
この試合でVTシステム(ヴァルキリートレースシステム)を破壊しておかないと、何処で暴走するか分かったもんじゃない。
ボーデヴィッヒには早く安全な機体にのってもらいたい。
だが、VTシステムが起動するのはボーデヴィッヒのIS、シュヴァルツェ・レーゲンの損害レベルがDを越え、強い負の感情にボーデヴィッヒが支配されなければならない。



「くそ、解決方法が思い付かねぇ……!」


小さく一人で呟いた。自分一人だけが知っていると言うのに、それを伝えられないもどかしさ。
いっそのこと、先手を打ってボーデヴィッヒに教えておいた方が良かったか? いや、多分、聞く耳を持ってはくれないだろう。
そもそもあれは秘密利に搭載されていたシステムだ。
教えても戯れ言と思われておしまいというのもある。



「………結局、答えは出ずか……」


試合開始のカウントダウンが始まった。
もうあーだこーだと悩むのは止めよう。 どうせ答えなんて出ないだろうから


成せばなる。昔の人はそう言った。
なら、俺もこの場の雰囲気とノリと勢いにこの身を任せよう



両手のピストルビットのグリップをギュッと握り締める。
ボーデヴィッヒは俺のことなど考えずに一人で特攻するに決まっている。
前衛にボーデヴィッヒ、後衛に俺。バランスだけ見ればかなり相性のよいコンビだ。



「……よし、成せばなる!」


直後、アリーナに試合開始のブザー音が鳴り響いた。

















「おらぁぁっ!!」


開始と同時に一夏が雪片弍型を構えてボーデヴィッヒに突っ込んだ。
だが、予想していたのか、ボーデヴィッヒはAICを発動させ、これを阻止。一夏の動きを止めた


「開幕直後の先制攻撃か。 分かりやすいな」


「そりゃどうも。 ……以心伝心でなによりだ」



二人の間でこんな会話が交わされる。
俺はその間にアリーナの壁際、ボーデヴィッヒの遥か後方に移動をする。
俺が見るのはシャルルの動きだ。
一対一なら、一夏とボーデヴィッヒなら間違いなくボーデヴィッヒが勝つ。 だが、シャルルとの連携を取られると厄介だ。
二人の特訓での動きは、なかなか完成度の高いものであったため、ボーデヴィッヒが一人で対処するには荷が重いだろう。



「ライフルモード!」


手に持ったピストルビットの内、一基をホルスターにしまいこむと、もうひとつのグリップとセンサーの取り付け位置を変え、ライフルモードに変更する。


「動いた!」


ボーデヴィッヒが止まった一夏にレールカノンを向けると、一夏の真後ろから姿を表したシャルルがアサルトライフルを放った。
この攻撃で集中を切らしたボーデヴィッヒがAICを解除し、すかさず距離をとる。
そして、シャルルの追撃。
手元に新たに銃を呼び出したシャルルは逃げるボーデヴィッヒに向けて銃を乱射しようとする
高速切替(ラピッドスイッチ)。シャルルの得意技だ。
だが、その追撃をみすみす逃すつもりはない


「狙い打つ!」

センサーで照準を合わせビームを放つ。
攻撃に気づいたシャルルだったが、これを避けることは叶わず直撃。
なんとか、追撃を中止させた。

「中か!」


その様子を見ていた一夏が俺を見つけると、白式で向かってきた。
俺はすぐにホルスターに手持ちのライフルビットを収納すると空に飛んだ。
上空なら、俺のビットは上下左右、三百六十度のどの位置にも展開できる。



「くそ、待てよ!」

「言われて待つやつはいねぇよ!」


一夏が追ってきているのを確認しつつ、横目でボーデヴィッヒの方を確認する。
一対一となっている今は上手くシャルルの攻撃をAICで防いでいるようだ。


(なら、このまま一対一でやってもいいな)


俺はホルスターから一基のピストルビットを展開させ、後ろから追ってくる一夏に牽制の一発をお見舞いする。
いきなりの攻撃に驚きながらも、なんとか回避した一夏。 だが、これで動きは止まった。
俺は一夏に正面から向き直り、残りのピストルビット全てを周りに展開させた。
全部で十四基のビット



「……相変わらず、どうやって動かしてんだよ、そのBT兵器」


「俺だから、としか言いようがねえよ」


「セシリアでも四基で動けなかったんだけどな……」



雪片弍型を構え、戦闘体制をとる一夏。
どうやらやる気は満々、といったとかろのようだ


「まぁ、個人の問題だからな。 んじゃ、続きは終わってから、てな!」


行けっ!と合図を出して全てのビットを出撃させる。
計十四のビットは絶え間なく一夏にビームを浴びせ続ける。


「クソッ! 数が、多いっ!」


「まだまだいくぞ!」


サバーニャの体の各所に搭載されたマイクロミサイルを十発発射。
ビットに意識が向いていた一夏は何発かを雪片弍型で破壊するが、やはり無理があったようで残りのミサイルとビームを喰らった。
ミサイルの爆発で煙が上がる。
一夏が見えないため、一時ビットを引かせるが油断は出来ない。 いつ、どこから瞬時加速(イグニッションブースト)で距離を詰められるか分からない


周囲に目を配り、一夏の動きを読む。 まさに、その時だった


サバーニャに攻撃が当たった

「なっ!? どこから……」


見ると、視線の先にいるのは、ボーデヴィッヒのワイヤーブレードを避けながらこちらをアサルトライフルで狙っていたシャルル。


「あの状況で撃つとか……!?」


「もらった!!」


シャルルの方に気を取られていたせいで、一夏への警戒を怠ってしまった。
その隙を見逃すまいと零落白夜を発動させた一夏。
そのエネルギー状の刃がサバーニャを襲う。

「クソッ! これでも喰らえ!」


零落白夜はあらゆるエネルギーを打ち消すそうだ。
なら、このミサイル以外に実弾兵器を持たないサバーニャには相性が悪すぎる。
残りの六十六発のミサイルが一夏を襲う。
これで足止めできればホルスタービットが展開できる。


「ハァッ!!」


だが、一夏はその一降りでミサイルを全て凪ぎ払い、そのまま直進。
くそ! 時間も稼げねぇのか!


一夏に距離が詰められる。
もう少しで零落白夜の攻撃範囲に入ってしまう。
どうする、使うか? 負けないためには使うしかないが、まさかこんなところで使うことになるとは……


目の前の画面に現れるのはTRANS-AMの文字列。
……仕方ないか


「トランザムッ!!」


その言葉に反応するように、赤く輝き始めるサバーニャ。
各所のコンデンサーに貯蔵されたいたGN粒子が全面解放されたのだ


「な、なんだ!?」


突然のことで、動きを止めた一夏。
会場の観客もそうだ。 恐らく、この試合を見ている織斑先生や、山田先生なんかもそうなのだろう
きっと、目の前の一夏のように何が起きているのか分からないはずだ


「一夏、こんな大勢の前でこれを使わせたんだ。 誇っていいぞ!」


俺は機体とともに赤く輝くビットを全て展開させ、加えてホルスタービットも展開する


「さぁ!! 乱れ撃つぜぇ!!」 
 

 
後書き
宣伝といいますか、ニシュラのリアルの友達が暁で化け物語の小説を書いております。
深井波乃上というペンネームなので、興味のある方は、是非読んでくださいね 
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