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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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ALO編 Running through in Alfheim
Chapter-13 仲間との絆
  Story13-7 危機を知らせに

第3者side


キリトたちは補給と情報整理を兼ねて、この街で一泊することにした。

先ほどの大規模な戦闘で時間を取られ、リアルではもう既に深夜0時に近い。


2人並んで城門をくぐると、BGM代わりのNPC楽団の陽気な演奏と、幾つもの槌音が出迎える。


「へええー、ここがルグルーかぁー」


リーファが初めて眼にする地底都市の賑わいに思わずといった感じで歓声を上げる。

そして、早速手近な商店の店先に足を向ける彼女を微笑ましく思いながらキリトは後をついて行った。


そこは武器屋のようで、店先の陳列棚には数々の剣が並んでいる。

「そう言えばさあー」

銀造りの長剣を手に取って眺めているリーファに、キリトがのんびりした口調で言った。

「ん?」

「サラマンダーに襲われる前、なんかメッセージ届いてなかった?あれは何だったの?」

「……あ」

リーファは口をあんぐりと開けると、こちらを振り返った。

「忘れてた」

慌てた様子でウインドウを開くが、メッセージの謎は解けなかったようで直接メッセージを打とうとしたみたいだが、どうやらオフラインらしい。


「何よ、寝ちゃったのかな」

「向こうで連絡とってみたら?」

リーファは少し考え込むが、直ぐに結論が出たらしくキリトを見た。


「じゃあ、ちょっとだけ落ちて確認してくるから、キリト君は待ってて。

あたしの体、よろしく。

……あ、ユイちゃん」


リーファがユイを見ると、最後に付け加える。


「はい?」

「パパがあたしにイタズラしないように監視しててね」

「りょーかいです!」

「あ、あのなあ!!」


心外だという風に首を振るキリトに、クスクスと笑い合うとリーファは手近なベンチに座り、左手を振ってログアウトボタンを押した。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆














数分後、リーファは眼をあけ立ち上がった。

「おかえり」

「おかえりなさーい!」

「うん……」

その返事に元気がなかった。

「ごめんなさい!」

リーファが急に頭を下げた。

「何かあったのか?」

「うん。あたし、急いで行かなきゃいけない用事ができちゃった。

説明してる時間もなさそうなの。

たぶん、ここにも帰ってこられないかもしれない」


「そうか、なら移動しながら話を聞こう」

「うん、ありがと!」

キリトたちはルグルーの目貫通りを、アルン側の門を目指して駆け出した。


人波を縫い、巨岩を削りだした門をくぐると、再び地底湖を貫く橋が真っ直ぐ伸びていた。


リーファが事情を話し終わると、キリトは何事か考えるように視線を前に戻し、口を開いた。


「なるほど。

いくつか聞いていいかな?」

「どうぞ」

「シルフとケットシーの領主を襲うことで、サラマンダーにはどんなメリットがあるんだ?」

「えーと、まず、同盟を邪魔できるよね。

シルフ側から漏れた情報で領主を討たれたら、ケットシー側は黙ってないでしょう。

ヘタしたらシルフとケットシーで戦争になるかもしれないし……

サラマンダーは今最大勢力だけど、シルフとケットシーが連合すれば、多分パワーバランスが逆転するだろうから、それは何としても阻止したいんだと思うよ」


二人は橋を渡り終わり、洞窟に入っていた。

少し先を行くリーファが、マップを確認しながら走りつづける。


「……後は、領主を討つことによって生じるボーナスね。

討たれた時点で、討たれた側の領主館に蓄積された資金の3割を無条件で入手できるし、10日間だけ領内の街を独占状態にして税金を自由に掛けられる。

そうなれば、もの凄い額になるわ。

サラマンダーが最大勢力になる前、シルフの初代領主を罠にはめて殺したの。

普通領主は中立域には出ないから、ALO史上、領主が討たれたのは後にも先にもあの一回だけなの」

「なるほど……」

「これは、シルフの問題だから……これ以上キリト君が付き合ってくれる理由はないよ……


この洞窟を抜ければアルンまでもうすぐだし、多分会談場に行ったら生きて帰れないから、またスイルベーンから出直しで、何時間も無駄になるだろうし。


……ううん、もっと言えば…………君の目的を達成するためにはサラマンダーに協力するほうが最善かもしれない。この作戦に成功すれば、サラマンダーは充分以上の資金を得て、万全の体制で世界樹攻略に挑むとおもう。君たちなら傭兵で雇ってくれるかもしれない。

今ここで、あたしを斬っても文句は言わないわ」

リーファは目をつむり、拳をぎゅっと握って立ち止まった。

その時は抵抗はしない。

そうみえた。

だが、キリトの答えは決まっている。

「所詮ゲームだから何でもありだ。殺したければ殺すし、奪いたけば奪う」

少し間を置き、再び言葉を紡ぐ。

「そんな風に言う奴には、うんざりするほど出会ってきたよ。けどな、そうじゃないんだ。仮想世界だからこそ守らなくちゃいけないものもあるんだ。


俺はそれを大事な人から教わった…………だから俺は君を斬ったりしないよ」

「あ、ありがと………」

リーファは涙をためながら言った。

「じゃ、洞窟出たとこでお別れだね」

「や、俺も一緒に行くよ。

時間、無駄にしちゃったな……ユイ、道案内頼む」

「わかりました!」

元気な返事が返ってきた。

「ちょっとお手を拝借」

「え、ええ??」

リーファは急に心臓がドクンと早くなるの感じている。
だが、そんなものも冷めるほど……

「急ぐぞ!」

キリトはリーファの手を取って猛烈なスピードで駆け出した。


「わあああ!?」

たまらずに声を上げる彼女が、前方の少し広くなった通路に大量のオークの群れが居るのに気づいたらしく、口を開く。

「あの、あの、モンスターが」

そんなリーファの言葉を気にもせず、キリトはオークの群れの僅かな隙間を通って走る。





いつの間にか、後ろにオークの集団が出来ていたがそれも気にしない。

そして、白い光が見えてきた。


「おっ、出口かな」


そうのんきに呟いた直後、視界が真っ白に染まり、足元から地面が消える。


「ひぇぇぇぇっ!?」

リーファとキリトは翼を展開して飛び始めた。


「ぷっはぁ……寿命が縮んだよ!」

ようやく、落ち着いたリーファが言った。

「でも時間短縮になっただろう?」

「ダンジョンっていうのはもっとこう……索敵に気を使いながら、モンスターをリンクさせないように……あれじゃ別のゲームだよ全く……」


ぶつぶつ文句を言ううちに漸く落ち着いたのか、リーファが周囲を見回している。





眼下には広大な草原が広がり、所々に湖が青い水面をきらめかせている。

それらを蛇行する河の流れのその先には、雲海の彼方に朧げに浮かぶ巨大な影。


「あっ……」


リーファが思わず息を呑んだ。

空を支える柱を思わせる太い幹が垂直に天地を貫き、上部には別の天体に等しいスケールで枝葉が伸びている。


「あれが……世界樹か……」


――あそこにアスナが居る


キリトも、そんな思いで真っ直ぐ世界樹を見つめた。


山脈を超えたばかりのこの地点からは、まだ20キロ近く先ではあるが、その大樹はすでに圧倒的な存在感で空の一角を占めている。


その根元に立てば上の方は霞んで見えない程の高さがあるその世界樹を、しばらく無言で眺めていたが、やがてキリトが我に返り言った。


「あ、こうしちゃいられない。

リーファ、領主会談の場所ってのはどの辺りなんだ?」

「あっ、そうね。

ええと、今抜けてきた山脈は、輪っかになって世界中央を囲んでるんだけど、そのうち3箇所に大きな切れ目があるの。

サラマンダー領に向かう『竜の谷』ウンディーネ領に向かう『虹の谷』あとはケットシー領につながる『蝶の谷』

会談はその蝶の谷の、内陸部の出口で行われるらしいから……」

リーファはぐるりと視線を巡らせ、北西の方向を指す。


「あっちにしばらく飛んだとこだと思う」

「了解。残り時間は?」

「大体20分位かな?

サラマンダーが会談を襲うなら、あっちからこっちに移動するはずだし」

「となると、俺たちより先行してるのどうか微妙だな。

ともかく急ぐしかないか。

ユイ、サーチ圏内に大人数の反応があったら知らせてくれ」

「はい!」















Story13-7 END 
 

 
後書き
悲報です。シャオンの出番がしばらくの間減ります。
シャオン「何だって!?」
理由……シャオンたちの方がキリトたちよりも早くアルンに着くからです。
シャオン「まぁ、キリトのファンにはありがたい措置だよな」

さてさて、三周年まであと2ヶ月ちょいの蒼閃です。僕KZMの呟きに返信、または感想に呟きの答えを書いてください。質問、待ってます。

じゃあ……

シャオン「次回も、俺たちの冒険に! ひとっ走り……付き合えよな♪」
 
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