リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第百十三話 夢を見る
前書き
天使軍団との戦いの途中。
異世界のヒカリが夢を見る。
これは大輔達が再び次元漂流する前の話。
ヒカリ『あの、本宮君?』
大輔『何だ?』
睨むように自身を見つめる大輔。
今回はタケルが急用でおらず、一緒にダークタワーを破壊しようということになった。
ヒカリ『あの…京さん。今日もコンビニの手伝いで来れないんだって…』
大輔『そうか。で?今度は何をやらかした?あいつのことだから商品を並べ間違えたり、発注の品物の数を間違えたんだろ?』
ヒカリ『あ、うん…商品を並べ間違えたり、発注の品物の数を間違えたんだって。(何で分かるんだろ…?)』
大輔『多くか?それとも少なくか?どっちにしろ叱られるだろうけど』
ヒカリ『多く。何でも寝ぼけてたらしいの』
大輔『アホだ。救いようのない奴だ。あいつ将来社会人としてやってけねえよ』
ブイモン『頭の栄養が足りてないんじゃないのか?』
テイルモン『(…京の場合は頭の栄養というよりも体質みたいな感じじゃあ…)』
大輔『ドジ体質かよ。』
テイルモン『(え?何で私の考えてることが分かるの?)』
大輔『何となくだ』
テイルモン『あんたもしかして読心術使えたりする…?』
ブイモン『お前が分かりやすいだけだ鼠(爆)』
テイルモン『ブチン』
大輔『キレた』
ヒカリ『キレた音、口で言った。というかテイルモン、鼠だったの!!?』
テイルモン『!!?ち、違うわヒカリ!!私は猫よ!!これはブイモンの罠よ。私を陥れようとしているのよ!!』
ブイモン『鼠鼠鼠~♪ハツカ~ネズミ~モ~ン♪(元ネタ、魚魚魚~♪魚を食べ~ると~♪)』
ブチイイイッ!!!!
テイルモン『あんたああああああああ!!!!』
見事にぶちギレ、ブイモンに襲い掛かるテイルモン。
ブイモンもテイルモンを迎撃する。
大輔『さて、行くか。』
ヒカリ『え?あ、うん…』
こうして二人はデジタルワールドに行くのだった。
大輔『そういえば、八神』
ヒカリ『え?な、何?』
大輔の視線がヒカリの髪留めに注がれる。
大輔『お前まだその髪留めしてるのか?最近は可愛いのが沢山あるだろ?捨てろよそんなボロボロの奴』
ヒカリ『いいの、これは大輔君がくれた物だから』
大輔『…昔の何も知らなかった頃のな』
苦々しげに呟く大輔。
この髪留めは夏の冒険が終わった直後に、大輔がくれた物である。
“ヒカリちゃんてさ、いい子だけど何か暗いよね。”
そう言われた時、ヒカリはショックを受けた。
それが悲しくて学校を休んだこともあった。
その時、大輔がお見舞いに来て、太一から事情を聞いたのかこの髪留めをくれたのだ。
“これで元気を出して”と。
この時の大輔の優しさは嬉しかった。
小学生のお小遣いなんてたかが知れてるだろうに。
自分のために少ないお小遣いを使ってプレゼントをしてくれたことが嬉しかった。
いつの間にか、大輔の優しさに慣れてしまい、こんな状態になってしまったが。
大輔『…そんなガラクタなんかよりいい物をくれてやる』
大輔がヒカリに投げて寄越したのは美しい輝きを放つ鉱物。
ヒカリ『本宮君、これ…』
大輔『…ある場所で偶然手に入れた。純度が高いからもしかしたら代わりになるかも…』
ヒカリ『えっと…この石は何なの?』
ヒカリが大輔に問うと、心底呆れたような目で見られた。
大輔『選ばれし子供のくせに何も知らないんだな…それはホーリーリングとかの元になる原石だ』
ヒカリ『ホーリーリングの!!?』
大輔『テイルモンは今、ホーリーリングがないから役立たず状態。けどそれを加工すればホーリーリングの代わりにはなるかもな。正規のじゃない分。本来の力を取り戻すくらいの力しか出せないだろうけどな』
ヒカリ『本宮君…』
大輔『あんた、闇に引き込まれやすいんだ。もう一個やるからお守り代わりにでもしろ』
もう一つ鉱物を渡すと大輔はダークタワーのある方に向かうのだった。
ヒカリ『ありがとう、大輔君……』
今は前みたいに気安い関係にはなれないけれど。
一杯頑張って成長して、いつか昔みたいに笑いあえるように頑張ろうと、ヒカリは誓うのだった。
IF~もし、大輔達がエテモン戦後にの続き~
大輔「はっ!!」
気合い一閃と言わんばかりにシュートを敵チームのゴールに叩き込んだ大輔。
田町少年FCとの練習試合なのだが、この時代に戻ってから実戦訓練を重ねている大輔には少し物足りなさを感じていた。
大輔「(物足りない…早く来い賢…)」
ヒカリ「凄いわ大輔君!!」
太一「あいつ本当に上手くなったな。もう俺より上かもしれない」
大輔「来るなって言ったのに…」
苛立ちを感じながらヒカリ達に作り物の笑みを浮かべる大輔。
京「何で?何で賢君いないのよ!!」
ポロモンを抱えた京が鋭い声で伊織に尋ねる。
伊織「僕に言われても……」
京「何でよーっ!!?」
大輔「うぜえ…」
応援に来たんじゃないなら帰れと言ってやりたい気分だ。
しばらくして数人の女子に囲まれ、スポーツバッグを肩から下げた賢がタクシーから降りて来ていた。
大輔「(賢…)」
賢「(こうして会うのは久しぶり…かな?)」
デジタルワールドでは選ばれし子供とデジモンカイザーとして、本宮大輔と一乗寺賢個人として会うのは実に久しぶりだった。
大輔「賢、会えて嬉しいぜ」
賢「フッ、僕もこの日を楽しみにしていたよ」
どちらも本宮大輔として、今の一乗寺賢としての表情で笑い合う。
大輔「一つ言っとく。手抜きは許さねえからな」
賢「勿論さ、全力で行かせて貰うとも。君に半端なやり方は通用しないだろうしね」
大輔「当然だ。こっちも遠慮なく全力で行くぜ」
キックオフ。
ホイッスルが鳴ったと同時に大輔と賢は走り出していた。
【え?】
大輔のチームと賢のチーム、そして観客の誰も反応出来なかった。
それ程までに二人が速かった。
大輔「やるな賢!!」
賢「そちらこそ!!」
どちらも一歩も譲らない攻防。
そして賢からボールを奪うと一気にゴールに向かう。
賢「やらせないよ」
一気に大輔を追い付き、今度は大輔がボールを奪われた。
大輔「しまった…」
方向転換をする前に得点を奪われてしまった
大輔「へへ、流石だ。どうやら長距離でのスピードはお前の方が上のようだ。」
賢「…そのようだね」
大輔「けどよ…」
試合再開と同時に大輔は賢より早く動いた。
賢「!?」
大輔「瞬間的な速さは俺の方が上だぜ!!」
賢「チッ!!」
舌打ちすると同時に賢は大輔を追いかけ、何とか追いつくと再び攻防が始まる。
太一「……レベルが違いすぎる……あいつら、一体どんな練習をしてきたんだ?どっちも小学生のレベルじゃないぜ?」
テクニックは賢が上だが、大輔は過去の戦いで身につけた戦闘センスでテクニックの差を補う。
しばらく凄まじい攻防が続くが、暗黒の種の力で得たスタミナは大輔の特訓の成果を上回る。
大輔「っ、しまった…」
疲労で足がもつれた。
それを賢は見逃さずロングシュートを放った。
大輔と賢の攻防を見て呆然としていたキーパーは反応出来ず、ボールはゴールに。
それと同時に、試合終了のホイッスルが鳴った。
「2対1で、田町少年FCの勝ち!!」
大輔「ちっくしょう…」
賢「ふう…」
疲労のためか、二人ともかなりの汗を流しながら座り込んだ。
大輔「(やっぱ負けたか。まあ、前回よりはマシな結果なだけいいか)」
賢「(やっぱり彼は僕と同じだ。凡人の中に埋もれていい存在じゃない。この僕とここまでやれるなんて…)」
大輔「負けたよ。でも全力は尽くした。悔いはねえ…楽しかったぜ賢」
賢「僕も楽しかったよ。こんなに本気を出したのは本当に久しぶりだった。」
握手を交わす二人。
前回は賢にとってただのお遊びに過ぎなかったが、今回は本気を出させることが出来ただけよかった。
賢「やっぱり君は凡人の中に埋もれていい存在じゃないよ」
大輔「はは…」
観客からの盛大な拍手を受けながら大輔と賢は笑みを浮かべた。
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