雲は遠くて
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77章 川口利奈、大学の音楽サークルに入る
77章 川口利奈、大学の音楽サークルに入る
川口利奈は、入学したばかりの早瀬田大学の、
健康栄養学部・管理栄養学科で、仲よくなった木村奏咲(そら)と、
サークル活動の学生が集まる学生会館に向かって、楽しそうに話をしながら歩いている。
「戸山キャンパスって、樹の緑もたくさんあって、芝生もきれいで、気持ちいいよね」
利奈は、奏咲(そら)にそういって、ほほえんだ。
「うん、そうよね。わたし、この大学を選んでよかった。イケメンの男子も多いんじゃないかしら?」
「そうかしら?」
利奈と奏咲は、目を合わせて、声を出してわらった。
春の陽ざしが静かにそそぐ、キャンパスの風景に、ふたりの胸もはずんだ。
二人が向かう学生会館は、東棟が11階で、
西棟が6階という、大きな建物である。
西棟の2階にある、春の陽ざしも入る大ラウンジでは、
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の部員たちが、ソファやテーブルのイスでくつろいでいる。
大ラウンジには、セブンイレブンもある。食品、雑誌、文房具、生活用品、
ATMも完備している。予約の弁当の受付、配達もおこなっている。
3階には、ファーストフードのモス・バーガーもある。
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)は、大学公認のサークル活動で、
ポップ・ミュージックやロックやブルースなど、いろいろな幅広いジャンルの音楽を気軽に楽しんでいる。
毎回のライブごとに、気の合う人と、バンドを組んだり、
あらたなメンバーを集めたりする、フリーバンド制で、
音楽を楽しむことを大切にするサークルであった。
部員数は、男子32人、女子37人で、69人だった。
「よく来てくれましたぁ。サークルのみんな、大歓迎なんです。はははは」
遠慮がちに、そーっと、大ラウンジに入ってきた、利奈と奏咲(そら)に、
谷村将也はそういうと、ちょっと頭をかいて、照れながらわらった。
大学4年になった谷村将也は、MFCの幹事長になった。
これまで、幹事長だった矢野拓海は、大学を卒業した。
これまで、会計を担当していた岡昇は、3年生になって、
いまは副幹事長をしている。
「みなさーん、今度、サークルに入ってくれることになりました、川口利奈さんと、
木村奏咲(そら)さんです。利奈さんのお兄さんは、大先輩の、
クラッシュ・ビートの川口信也さんです。ご兄妹で、
ミュージック・ファン・クラブに入っていただけるということで、大変にうれしいことですよね」
みんなの歓迎の拍手が、大ラウンジに鳴り響いた。
「みなさん、よろしくお願いします」
利奈と奏咲(そら)は、さわやかな笑顔で、みんなにむかって挨拶をした。
「利奈ちゃん、奏咲ちゃん。おれ、岡昇です。わからないことがあったら、
なんでも、おれに聞いてくださいね。信也さんには、いつもお世話になっているんですよ」
岡昇が、利奈と奏咲にそういった。
「利奈ちゃん、奏咲ちゃん、よろしくね。これから音楽を楽しくやりましょう!」
そういって、利奈と奏咲に握手を求めたのは、ロックバンド、グレイス・ガールズの、
ギターリストでヴォーカリストの大沢詩織である。詩織は、この4月から、3年生だった。
「詩織さん、こちらこそ、よろしくお願いします」
利奈は、信也の彼女である詩織とは、すでに親しい仲だった。
「わたしたちの、グレイス・ガールズは、リーダーの美樹ちゃんが卒業しちゃったから、
ちょっとさびしかったのよ。美樹ちゃんは、いまだって、グレイス・ガールズのリーダーですけどね。
でも、利奈ちゃん、奏咲ちゃんが入ってくれたのは、すごく、うれしいわ!ねえ、みんな!」
グレイス・ガールズのドラムスの菊山香織は、そういって、微笑んだ。
「うん。利奈ちゃん、奏咲ちゃん、大歓迎よ!」
「利奈ちゃん、奏咲ちゃん、これから、よろしくね」
グレイス・ガールズの、ベースギター担当の平沢奈美と、
リードギターの水島麻衣は、心の底から、うれしいといった笑顔でそういった。
この4月から、平沢奈美は大学3年生になり、菊山香織は4年生、
リードギターの水島麻衣は4年生になった。
「わたしたち、グレイス・ガールズさんの歌が好きなんです。すごく、憧れてもいるんです。
そんなわけですから、憧れのみなさんと、音楽活動ができるなんて、夢のようにうれしいんです。
それに・・・、わたしたちも、オリジナルの歌を作れるように、がんばれたらいいなと思っています。
ね、奏咲ちゃん。目標は高くもって、グレイス・ガールズさんたちのようになれたら、
うれしいなと思っていいます。ね、奏咲ちゃん。
でも、きっと現実はきびしいですよね。でも、いつまでも叶わなくても、
そんな夢を追うのもいいのかなって思ったりもします。
でも、歌うことは、わたしも、奏咲ちゃんも大好きなんです。これから、よろしくお願いします!」
兄の信也に、容姿や性格とかが、どことなく似ている利奈が、
思うままに素直に、そんなことをいうものだから、みんなの明るいわらい声が、大ラウンジに響いた。
≪つづく≫ --- 77章 おわり ---
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