蟹の友情
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3部分:第三章
第三章
彼等は長い間共に過ごしていた。しかしある日だ。沼に二人の人間が来た。
「人間?」
「そうみたいだね」
沼の中からその人間達を見た。見ればだ。
一人は従者の様だ。あまり身体つきもよくなく繊細な感じだ。しかしだ。
もう一人の先に立つ男は獅子の皮を被っている大柄な男だ。その獅子の皮を見てだ。
ヒュドラーは九つの顔を強張らせてだ。こうカルキノスに言った。
「あの獅子は」
「知ってるの?」
「俺の兄弟だよ」
そうだというのだ。彼のだ。
「俺の兄弟のネメアの獅子だよ」
「ネメアの獅子?っていうと」
「そう、どんな剣も矢も効かなかった」
鋼の如き身体を持っていたのだ。しかしだった。
「けれどそれが」
「殺されたらしいね」
「ヘラクレスに絞め殺されたんだ」
まさにそうなったとだ。ヒュドラーは忌々しげに答えた。
「そして皮を剥ぎ取られた」
「じゃああの人間は」
「間違いない、ヘラクレスだ」
他ならぬだ。彼だというのだ。
「あいつが来た」
「そのヘラクレスが」
「許せない。兄弟の仇だ」
ヒュドラーの言葉に怒りが宿っていく。そしてその九つの口から。
それぞれ毒液を垂れ流す。それが沼地に落ちしゅうしゅうと音を立てる。
彼は怒りのまま沼から出てだ。ヘラクレスに襲い掛かった。それを受けてだ。
カルキノスも沼から出た。そしてヒュドラーに言うのだった。
「僕も行くよ」
「君も?」
「行ったじゃないか。僕達は友達だよ」
それ故にだとだ。ヒュドラーに答えてだ。
共にヘラクレスに向かいながらだ、カルキノスはさらに言った。
「何時でも一緒だし。君の仇ならね」
「一緒に戦ってくれるんだ」
「君の仇は僕の仇だよ」
ここまで言ってだ。そのうえでだった。
カルキノスはヒュドラーと共にヘラクレスに向かう。彼等とヘラクレスの戦いがはじまった。
ヘラクレスは強かった。カルキノスと戦いながらだ。ヒュドラーの首を切っていく。しかしヒュドラーの首は切ったそばからすぐに二つ新しい首が生えてヘラクレスを襲う。それを見てだ。
ヘラクレスは首の切り口を松明の炎で燃やしてだ。傷口を塞いで首があらたに生えない様になった。しかしだ。
中央の首は何があっても倒れずだ。ヘラクレスに襲い掛かっていた。そしてカルキノスも。
その巨大な鋏でヘラクレスを襲う。両者の戦いは一進一退だった。しかしだ。
ヘラクレスはヒュドラーよりも先にだ。カルキノスを倒すことにした。そしてだった。
一旦飛び上がり鋏をかわしてだ。そのうえでだ。
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