美しき異形達
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第四十二話 近付く真実その一
美しき異形達
第四十二話 近付く真実
一行は長い旅行を終えて神戸に戻った、それからすぐに智和の屋敷に集まった。鈴蘭と黒蘭も一緒である。
全員屋敷の応接室に案内されてだ、そのうえで久し振りに会った智和にこう言われた。
「旅行は楽しかったみたいだね」
「ああ、最高だったぜ」
にかりと笑ってだ、薊は智和の言葉に答えた。白い歯が実に奇麗だ。
「関西巡りな」
「それは何よりだね」
智和も薊の言葉に笑みで返した。彼の笑みは優しい笑みだ。
「本当に」
「ああ、それで今日はさ」
「挨拶に来てくれたんだね」
「それとお土産の感想をさ」
それも聞きに来たというのだ。
「それで来たんだけれどさ」
「そうなんだね」
「それでどうだよ」
薊はあらためて智和に問うた。
「土産もの」
「どれもよかったよ」
「そうか、どれもか」
「ただ。お菓子が美味しくて」
それでとだ、智和はここでジョークを言った。
「食べ過ぎてね」
「太りそうかい?」
「歯磨きが大変だよ」
「ああ、虫歯な」
「歯は大事だからね」
智和は冗談混じりの笑みのまま薊に言葉を返した。
「毎日しっかりと磨いているよ」
「それはいいことだな」
薊も智和が歯磨きを丁寧にしていることに大いにいいことだと返した。
「歯ってのは一生ものだからな」
「そう、だからこそね」
「毎日磨いてだな」
「大事にしているんだよ」
「若し歯磨きを丁寧にしていないと」
「特に甘いものをよく食ってるとな」
「虫歯になるよ」
それこそ簡単にだ。
「だから最近はね」
「歯を磨いてるんだな」
「そうしているよ」
「そこまで食ってくれてるんだな、あたし達のお土産」
「そうさせてもらってるよ」
「そうか、それで先輩最近は」
今度は薊から智和に問うた。
「やっぱり受験に備えて」
「うん、入学は内定しているけれどね」
八条大学医学部にだ。
「それでもね」
「勉強はか」
「ずっとしているよ」
「けれどさ、もう入学決まってるなら」
受験勉強に対しての見方からだ、薊は智和にこう言った。
「する必要なくね?勉強」
「いや、勉強。学問もそうだけれど」
智和はその薊に彼のその穏やかな笑みで答えた。
「ずっと続けるものだと思ってるから」
「大学行けることが決まっててもか」
「基礎学力がないとね」
それが備わっていなければというのだ。
「大学に入ってから困るから」
「だからか」
「そう、その為にね」
「勉強は続けてるんだな」
「そうだよ」
「そうなんだな、ただな」
薊は智和の言葉に納得した、しかし。
それと共にだ、彼にあらためて問うことがあった。その問うこととは。
「ただ、勉強と学問って」
「その違いだね」
「一緒じゃねえの?」
こう智和に言うのだった。
「それって」
「確かに近いね」
「近いけれどか」
「そう、僕は別のものだと思っているよ」
「じゃあどう別なんだよ」
「それはね。勉強は学校だけでのことだけれど」
勉強についてはこう規定するのだった。
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