小さな信頼
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3部分:第三章
第三章
「本当にできると思っているのか」
「だから。思ってるから言うんだよ」
「じゃあ行って来い」
兄もだ。遂に放り出した。そうしてだった。
ダビデはペリシテ軍の方に向かった。無論その手にスリング、それと行く途中で見つけた適当な石を拾ってだ。それから向かうのだった。
そしてそのうえでだ。こう彼等に言うのだった。
「ゴリアテってのはいるかい?」
「あん?何だ?」
「子供じゃないか」
「何なんだ一体」
彼の声を聞いたペリシテ人達がそれぞれ言う。
「ゴリアテに用か?」
「用があるってのか?」
「それでゴリアテってのはいるのかい?」
またこう彼等に問うダビデだった。
「いたら出て来てくれないか?」
「おい、ゴリアテ」
「呼んでるぞ」
鎧と兜、それに剣や槍で武装した兵達がだ。それぞれ後方に向けて言った。
「何か子供が読んでるぞ」
「小さな奴がな」
「んっ、何だ?」
それを受けてだ。そのペリシテ人の軍の後ろからだ。
雷の如き声がした。そうしてだった。
一際大きな男が出て来た。顔中髭だらけで逞しい身体が鎧を着ていてもわかる。兜で頭も頬も覆い巨大な槍を手に持っている。
その天も衝かんばかりに巨大な男が出て来てであった。
ダビデを見てだ。こう問うのだった。
「俺を呼んだのは御前かい?」
「あんたがそのゴリアテなんだな」
こうだ。ダビデはその大男に尋ねたのである。
「そうなんだな」
「そうだって言えばどうするんだ?」
「僕はダビデだ」
次にはだ。彼はその名を名乗った。
「ヘブライのダビデだ」
「ふん、何かと思えばヘブライのガキか」
ゴリアテはその彼の名前を聞いてだ。それまで何だといった顔をしていたがそれを馬鹿にしたものに変えてだ。こう言うのだった。
「何だ?ガキは帰れ帰れ」
「そうだそうだ、大人になってから来い」
周りのペリシテ人達も言い出した。
「ここは子供の来るところじゃないぞ」
「ガキは帰って母ちゃんに甘えてろ」
「ガキの相手はしないんだよ」
「いいや、そういう訳にはいかないんだ」
ダビデは不敵な笑みで彼等のその言葉に返す。
「僕はあんたを倒すんだ」
「俺をか」
「そうさ、そのあんたをな」
不敵に笑ってだ。ゴリアテに言うのである。
「絶対に倒してやるんだ」
「言ったな。じゃあ俺が御前に倒されたらだ」
「どうするんだ?」
「決まってるさ。ここから退いてやる」
笑ってだ。ダビデに対して言うのである。
「そして御前等の勝ちにしておいてやるさ」
「言ったな」
「ああ、言ったさ」
笑ったまま再び言うゴリアテだった。
「何度でも言うさ。勝てたらな」
「よし、それならだ」
ダビデはゴリアテのその言葉を聞いてだ。確かな笑みを浮かべた。
そしてそのうえでだ。彼を見据えて話した。
「じゃあ今からな」
「俺と一騎打ちか」
「一撃で倒してやる」
ダビデは言った。
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