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とある愚者の転生記

作者:冬夏春秋
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リリカルなのは編
  第六話 いや、化け物と言われても

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!

「俺は今から俺のターンだと、部屋にいる誘拐犯をボコボコにしたと思っていたら、いつの間にか部屋の外の他の誘拐犯は倒され、扉が開いてなんか飛んで来た」

 な…、何を言っているかわからねーと思うが、俺も何をされたかわからなかった………。
 頭がどうにかなりそうだった…。
 催眠術だとか超スピードとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ………。





 嘘です。





 アリサさんとすずかさんに色々言ってた誘拐犯を皮切りに部屋にいる奴ら(俺を蹴った奴ら含む)をボコっていたら、外でドカバキって音がした。
 状況の変化に備えようと思って、2人に近づいてとりあえずロープを斬っていたら、突然扉が開いて、黒い影(後で聞いたら飛針とかいう暗器らしいです)が飛んで来た。
 まぁ、ロープを斬った時点で「円」をして備えていたので、なんとか叩き落としたけどね。
 もちろん、その正体は戦闘民族高町人の高町士郎さん、高町恭也さん、高町美由希さんの3人です。
 まじパネェっす。
 「円」をしてたので、反応できましたが、「円」を解いていたらまったく気付かず攻撃されていたでしょう。
 しかも、その一瞬の間に窓から高町士郎さん、高町恭也さんが侵入し攻撃可能な位置にいるのです。
 近づく間にこちらが誘拐犯では無いことに気付いてくれて、幸い攻撃されることはなかったのですが、攻撃されてたらかわすことはできなかったでしょう。
 なんていうか、あの強さの高みに上がるのにどんだけの修練が必要なのかと思わされました。

 とにかく、3人の人外の強さを持つ戦闘民族により、俺たち3人は救い出されました。

 とりあえず、お礼を言って帰ろうとします。
 表面的にはただ、誘拐に巻き込まれた少年Aですから。
 それを押し通して。

 が、当然ながらそうは行きませんでした。
 まぁ、色々聞いてはいけなさそうなことを聞いてしまったのはバレバレようです。
 「夜の一族」とか「吸血鬼」とか。とりあえず、(いわゆるリムジンというやつですね)で送ってもらい、巻き込んでしまったお詫びに伺う、ということが決まりました。もちろん、拒否権なんぞはありません。なお、後日改めて月村邸に伺うことも決定しました。

 家に送ってもらった時に出迎えた母さんには、当たりさわり無い話しをしてもらいました。



 その夜、部屋でリニスに詳しい話しをします。

 怒られました。
 
なんだかんだいって初の実戦で俺はテンパっていたのでしょう。リニスに念話で助けを求めることすら気付きませんでした。
 こんこんと説教されてしまいました。

 平謝りに謝り、やっと許してもらった俺は今後についてリニスと相談します。

「まずは、こちらの能力を結果として見られたこと、高町家の能力というか戦闘力を知ってしまったこと、そして、「夜の一族」という知ってはまずいことを知ってしまったこと、の三点の対応ですね」
 リニスが俺から聞いた話しから要点をまとめてくれます。

「こっちの能力としては、武術としての面を押し出せば、流派の秘密とかうんぬん考えて、追求はお互いしないカタチになるんじゃないかな」
「まぁ、のび太が攻撃されたカタチですから、そう追求もしてこないでしょう。巻き込まれたうんぬんも正直に話せばいいでしょう」

「「夜の一族」については、こちらにあえて関わってこなければ、俺としてはどうということもないんだけどなぁ」
 もちろん、原作知識どおりならば、だが。

「そういえば、「吸血鬼」っていうのは次元世界ではどういう扱い?」
「「吸血鬼」ですか。地球で言うところのモノをあえて定義するのなら、おとぎ話しの範疇ですね。ただ………」
「ただ?」
「のび太から聞いた能力、つまり明晰な頭脳や、高い運動能力・再生能力を持ち、その代償として生き血を求めるというと次元世界でいうレアスキルの範囲内に収まらなくもないですね。生き血を求めるというのがどの程度かにもよりますが」
「ふーん。そんなものか。レアスキルを継承する一族という括りか。あとはその一族の秘匿性に依るわけか。んで、向こうが納得しないと記憶消去という手段にも出るというわけだ」
「そうですね。向こうの事情からすればそうかもしれませんが、だからといってそれを甘受するかどうかは別問題です」
「まぁ、そうだよねぇ」
 などと2人で遅くまで話し合います。

 結局、猫姿のリニスを離さず連れて行き、念話で相談し対処することにしました。
 念話を傍受される能力まで踏まえて、秘匿性の高いリニスとの接触念話で相談することにします。
 この辺は、原作知識からある程度信じられると判断する俺と、その秘匿性から強硬手段もあり得ると考えるリニスとでは、そもそも考え方の始点が違うので、考え方をまとめることすらできませんでした。



 結局あの誘拐事件に巻き込まれた日から最初の土曜日に、月村邸へお呼ばれされました。
 リニスを入れたケージを抱え、迎えに来たリムジンに乗り訪問です。リムジンはメイドさんが運転してました。

 月村邸は豪邸でした。
 そして猫屋敷でした。
 もふもふしたいなぁ。と少し現実逃避を………。

 メイドさんは、ノエルさんと紹介されました。本当はもっと長い名前を紹介されましたが、長過ぎて覚えれませんでした。
 一応、原作知識のためこっそり「凝」で確認するとオーラを感じません。こちらが気付かないほど上手く隠していない限り、やはり自動人形なのでしょう。

 ノエルさんに応接室に案内されると、月村忍さん(事件当時紹介された)とすずかさん、それと高町恭也さんがいました。おそらく関係者ということなんでしょう。

「とりあえず、今回の事に関して、月村家当主として、お詫びを先に言わせてもらいます、誘拐事件に巻き込んでしまいご迷惑をおかけしました」
 向かいあったソファーから立ち上がって、忍さんとすずかさんが頭を下げてきます。

「いや、お気になさらないでください。偶然巻き込まれただけですから。それで、すみません。連れてきた猫を出してもよろしいですか」
 小学生の返答じゃないな、と思いつつ、リニスをケージから出して抱えつつ、ひとしきり、リニスの名前や月村邸で飼っている猫の話しをして場を和ませます。
 
「それでここからが本題なんだけど。何故すずかが狙われたかなんだけど………」
「み、身代金とかじゃないんですか?」

「お金じゃないわ。理由は月村家にあるの」
「月村家に?」
 と言った瞬間、恭也さんから頭に向けて何か飛んできます。思わず、頭を傾げて避けてしまいました。どうやら手元にあった角砂糖のようです。

「君は何者だ? 只の小学生に今のはかわせない」
 どうやら、間抜けなミスをしてしまったようです。恭也さんからはまだ敵意を感じませんが、最初からこちらに疑問を持っていたようです。あるいは入口の扉に控えているノエルさんも逃亡防止のためにいるのかも知れません。

「いや、只の小学生ですが。と言っても信じてくれませんか」
(どうするんです、のび太?)
(どうするって言ってもある程度正直に話し、穏便に済ませるしかないなぁ。ただ、もしものために転移呪文だけ準備してて。さて、どこまで話すべきか………)
(わかりました)
 リニスと念話で打ち合わせです。

「只の小学生は、誘拐事件に巻き込まれて、平静で家に帰らないし、大人に蹴られたら無事にはすまない」
 うわぁ、言われてみればその通りだ。とりあえず、「念」については「気」として説明するか。

「えぇ。そうですね。なんと説明すれば良いかわかりませんが、恭也さんは「オーラ」「気」あるいは「気功」というのは聞いたことはないですか?」
「それは武術でいう「気」のことか?」
「ええ、おおむねそんな感じです。特に武術を習っているわけではありませんが。ただ、俺はオーラと呼んでいますが、いわゆる「気」を身体に廻すことができるので、ある程度の身体能力の向上や回復力の向上をできます」
 などと色々怪しい説明を繰り返し、体系的な武術をやっているわけでないので、戦闘能力はそれほどない(ここ重要、主に高町家的に)が、身体能力はそこそこあるということで恭也さん的には納得させることに成功。

 ただ、「つまり、誘拐犯の話しを聞いて、いや、聞けていたのね」と忍さんから追求されてしまいます。もうバレバレですね。

「そうですね。蹴られたのを防ぎながらですから途切れ途切れではありますが」
 しょうがないのである程度は聞いているという玉虫色の返事をします。
 あぁ、すずかさんがうつむいちゃいました。

「そっかー。やっぱり聞かれちゃってるか。じゃぁ、詳しいことを話すから長いけど聞いてね」と、「いや、いいです」とは言えずに、「夜の一族」について詳しく説明されてしまいます。
 簡単にまとめると、ただの普通の人間の突然変異が定着した一族で、美しい容姿と明晰な頭脳、高い運動能力や再生能力、あるいは心理操作能力や霊感など数々の特殊能力を持つ集団であり、これらの代償として体内で生成される栄養価、特に鉄分のバランスが悪いため、完全栄養食である人間の生き血を求める、ということらしいです。
 まぁ、こちらの知識とそう変わらないですね。これなら何とかなりそうです。

「そういえば、吸われた人も吸血鬼になるんですか?」
 と一応知らない振りをして一番聞きそうなことを怪しまれないように聞いておきます。

「さっきも言ったけど、私たちは吸血鬼と言っても、物語にあるような吸血鬼そのものであるわけじゃないの。だから陽を浴びても灰にならないし、鏡にも写る。もちろん血を吸ったからと言って吸血鬼にできるわけではないわ。せいぜい貧血になる程度ね。一族の中には死ぬまで吸う奴もいるけど、そういうのは一族の中で処分されるわ」

「わかりました。それで、そこまで俺に話した理由を教えてください」
 そう答えると、うつむいていたすずかさんが
「のび太君は怖くないの? 私たちは化け物なんだよ!」
 と声を張り上げます。

「いや、化け物と言われても。話しを信じないわけではないですが、そんなこと言ったら俺だって十分、化け物ですし。」
「でも、私達は人の血を吸うんだよ」

「まぁ、そう言われるとそうなんですが。ただ、俺の持っているオーラの技術の一つとして、「誓約」と言うのがあるんです。詳しいことを除きますが、「血を吸う」という行為を条件に能力を底上げすることもできたりするんですよ。それを考えると根底のところで俺の持つ技術と変わりがないと言えるんです。もちろん無差別に人を襲って吸うとか、相手が死ぬまで吸うとかになると「人」としてまずいですが、そうじゃないでしょ?」

「そんなことはしないよ! 今は輸血パックから吸ってるんだから!」
「でしょう? なら、怖いとかはありませんよ。他人に害をなすとかじゃなければ、プラスマイナスひっくるめて体質とかで良いんじゃないですかね」
 ちょっと強引すぎますかね? ただ、ここはなんとしても肯定することでうやむやにしたい。

「でも、人よりも強い力で相手を傷つけちゃうかもしれないよ」
「そんなん、誰だってそうです。というか、人なんか簡単に死ぬんです。力が強い事が悪いわけじゃない。使い方が問題なだけです。ぶっちゃけ、拳銃持っている知らない人間とすずかさんでは、拳銃持っている知らない人間のが怖いです。」

「それじゃ、のび太君は私の事を気持ち悪く思わないの?」
 すずかさんがすがるように聞いてきます。

「俺個人としては全然。むしろ、すずかさんのほうが俺が怖くないですか? 改めて考えると俺の持つ力は、普通に人を殺せる力ですよ」

「………、私はそんなことは思わないよ」
 少し驚いたようだけど、すずかさんははっきりと答えてくれます。

「それは良かった。せっかく友達になれたんだから、嫌われたくないですしね」
「私もそうだよ!」
 少しは元気が出てきたみたいです。

「それじゃぁ、話もまとまったようなんで契約に入りましょう」
と、忍さんから提案される。

「契約?」
「そ、契約。「夜の一族」のことを他言しないようにしてもらうためにする契約よ」

「何するんです?」
「簡単よ。すずかと恋人になればいいのよ」
「お姉ちゃん!!」
 すずかさんが顔を赤くして声を上げる。おいおい、まだ小学生だぞ。

「冗談よ。ただ誓ってくれればいい、ただその誓いを破れば………」
「あぁ、そうですか。わかりました、誓います。このことは誰にも口外しません」
(まぁ、リニスが聞いてるのは気付かない方が悪いと言うことでノーカンだよね)
(のび太………)

「誓約はなされました。本当は月村家の身内にするために結婚とかさせるんだけど………。まぁ、まだ小学生だしね」
「もうお姉ちゃん!!」
 すずかさんの顔は真っ赤ですが、これでとりあえず納得はしてくれたみたいだ。
 
 なんとか、追求をしのぎきったようで、その後、猫天国をもふもふ味わって家に帰った。
 恭也さんは忍さんと2人でどっか行った。
 「チッ、リア充が」と思った俺はきっと悪くない。
 リニスが月村家の雄猫に言い寄られてたのも俺は悪くない。と思う。

 その夜、月村姉妹がどんな話しをしていたか、それはまた、別の話し………。 
 

 
後書き
というわけで第六話です。月村さんへの説明(言い訳)のために「夜の一族」をレアスキル・念能力的に解釈という名のねつ造した回でした。 
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