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ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~

作者:白崎黒絵
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神風と流星
Chapter2:龍の帰還
  Data.20 《体術》

 岩山やら荒野やらの足場の悪い環境をひたすら進み、ようやく辿り着いたのは一軒の小屋の前。

「ここが?」

「あア。ここが、エクストラスキル《体術》を獲得できるクエストが受けられる場所ダ」

 アルゴはそう言うとずんずんと小屋に近づいて行き、ドアを開けて中に入る。

「俺達も行くぞ」

 疲れて倒れているシズクを(蹴って)起こし、俺もその後を追った。

 小屋の中には少量の家具と……なんかムサいオッサンがいた。

 鍛え上げられた肉体に道着を纏い、仁王立ちしているNPC。頭上に金色の『!』が出ているので、こいつが件のクエストを授けてくれるのだろう。見た目的にも《体術》っぽいし。

「さて、んじゃやるか」

「あ、待って待って!あたしもやる!」

 お前は剣あるから近接系のスキルはもういらないだろ。

「そうだナ。武器を失った時とかに重宝するだろうからシーちゃんも受けておいた方がいいんじゃないカ?」

 む、そうか。そういう場合にも使えるのか。

 アルゴのアドバイスも尤もだったので、俺はシズクと一緒にクエストを受けることにした。

「あれ?そういやこのクエって二人同時に受けられるのか?」

「さア?流石にそれはオイラも試したことが無いから知らないけど、たぶん大丈夫ダ」

 若干不安になる発言だったが、まあいいか。ダメだったら一人づつ受けりゃいいだけだし。

 というわけで、俺とシズクはオッサンの前に立ち、クエストを開始させる。

 目の前に立つ俺達にオッサンは問いかける。

「入門希望者か」

「そうだ」

「修行の道は長く厳しいぞ」

「望むところだよっ!」

 そこで一旦会話は途切れ、オッサンは小屋の外に出て行く。無論、俺とシズクもそれについて行く。ついでに何故かアルゴも。

 やがて辿り着いたのは、庭の端にある大岩の前だった。

「汝らの修業はたった一つ。両の拳のみで、この岩を割るのだ。為し遂げれば、汝らに我が技のすべてを授けよう」

「……」

 絶句。流石の俺も絶句した。隣を見るとシズクも同じように固まってる。そしてアルゴは凄く重々しく頷いている。

 俺とシズクはお互いに顔を見合わせて言う。

「「そんな簡単なことでいいの!?」」

 あ、何か知らんがアルゴがズッコケてる。

 どうした? と問おうとした矢先、オッサン――――改め師匠が道着から筆と壺を取り出し、俺とシズクの顔にズバババッ、と何かペイントする。

 そして一言二言だけ言い残して小屋に帰って行った。

 ちなみに何をペイントされたのかは隣にいる猫っぽくなったシズクを見れば一目瞭然だった。墨で動物的なヒゲを描かれている。

「あははっ!ルリくん可愛い~!猫みたい!」

「お前もな」

 さて、じゃれあっている場合でもないような気がするのでさっさとこのクエストを終わらせよう。と、俺が岩に近づくとシズクが遮る。

「ちょっと待ったルリくん。あたしが先にやる」

「別にいいが……大丈夫か?」

 この『大丈夫か』は、攻略法をきちんと分かっているのかという意味だったのだが、自信満々な顔を見る限り大丈夫だろう。ダメだったら思いきり笑ってやるが。

「そんじゃ、お先にどうぞ」

「ありがと」

 それだけ言ってシズクは岩に近づき、岩に耳を当ててコンコンと軽く叩く。

 もちろん、それだけで割れるはずはない。俺の見立てではあの岩は破壊不能(イモータル)オブジェクト寸前くらいの耐久度がある。

 しかしシズクはなおも軽く岩を叩く。色々な方向から、色々な角度で。

「……ルー坊、シーちゃんは何をやっているんダ?」

 いつの間にか近づいてきていたアルゴが問う。

「見てれば分かるさ」

 アルゴは不思議そうな顔をしていたが、それでも素直に従ってシズクの動向を観察し始めた。

 やがてシズクは叩くのをやめて、数秒考え込んだかと思うと、少し歩いて位置を修正し――――

「せいやっ!」

 一閃。全身の力と体重を込めた渾身の正拳突きをを炸裂させる。

 すると大岩は拳が当たったところから徐々にひび割れていき……砕けた。

「……」

 呆けた顔をしているアルゴに、俺は軽く説明してやる。

「SAOのオブジェクトは現実に近づけるためにかなりリアルに設定されているのは知ってるよな?」

「あ、あア……」

「で、現実の鉱物……つーか物体は大体どこかに構造的に脆い部分を持ってるんだよ。だからそこにちょっと大きな衝撃を加えてやれば……」

「ああいう風に割れるってわけカ。なるほど、じゃあシーちゃんさっき岩を叩いていたのはそれを探すためだったんだナ」

「そういうことだ。第一、こんなエクストラスキルが報酬とはいえ、こんな低階層のクエストであんな岩を正攻法で割らせるわけないだろ」

 いくらなんでも鬼畜過ぎる。ゲームバランスが完全におかしい。

「……それもそうだナー」

 あっはっはと笑うアルゴ。キリトといい、こいつといい、もう少し頭を捻れよ。何事もまずは疑ってかかることが大切だ。

 そんなことを話していると、とてて、とシズクが戻ってくる。

「ただまー!」

「おかえり。んじゃ、次は俺か」

 俺はさっきのシズクと同じ手段で岩を粉砕し、俺達は見事クエストをクリアして《体術》を手に入れたのだった。

 ちなみに顔を落書きを消すときに用いられたのは師匠が道着から取り出したボロ布だったため、クエスト本来とは関係ないところで精神的ダメージを負ったのだったが、それはまた別の話。
 
 

 
後書き
今話で用いられた理論は捏造かつ適当、そして無理矢理です。変なところしかありませんが目を瞑ってください 
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