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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第27話 節が七つあるからナナフシというわけではないらしい

 
前書き
どうも、蛹です。

ナナフシは節が七つあるから“七節”ではなく
七が「たくさん」と言う意味を持つからだそうです。

節と言えばヌンチャクを想像しました。
調べてみると三節棍、五節棍、七節棍、九節棍と
多節棍は奇数倍に連結が増えるらしいです。
九節と来るともうジャラジャラして大変そうですね。

あー、中国でこれ使う奴出せば良かった‥‥‥‥ort

ortは“落胆した人”を表す象形文字みたいなものです。
ネット上で発見したので早速、使用していますww

最近、“フシ”と入れて変換すると“不死”になります。
よく考えたら25.5話で多用しましたからね。

節の話からどんどん逸れ始めたので、ここで戻ります。
果たして、マリーを助けることは出来るのか!?

それでは第27話、始まります!! 

 
「ギィッ!!」

ナナフシ型は細長い腕でマリーを掴んでいた。
そして、その腕を近くにまで引き込んだ。

「マリちゃんを離しやがれッ!!」

 ガシャシャン!!

アスラは"鎧骨格"を換装して、そのまま跳びかかった。
そして、日本刀をナナフシ型の腕に向かって振り抜こうとした。

 グイッ!

「キャッ!!」

しかし、ナナフシ型はその延長線上にマリーを持ってきた。
アスラは日本刀の軌道を無理矢理逸らした。

 ブオッ!!

間一髪、マリーに当たることなく空を切った。
ナナフシ型はマリーの盾としての使い道を察したらしい。

 ズザッ!

「クソッ!"鎧虫"ってそんなに頭良かったっけ?」

地面に着地して体勢を整えながら、アスラは迅に訊いた
迅はナナフシ型を睨みながら答えた。

「"鎧虫"は基本的に知能はほとんどない。
 マリーが一番の弱点というのは、本能的に気付けるはずがない。
 つまり‥‥‥‥‥‥‥またアイツか‥‥‥‥?」

迅の頭の中に浮かぶ人物の名前がアスラにも浮かんだ。

「まさか、ディーンかッ!?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

奴の"強制憑依(ポゼス)"を使えば
ただの"鎧虫"を操ることなど、造作もないことだろう。
迅の返事がないので、アスラはそれを確定づけようとした。

「いや、違う。コイツはディーンではない」
「‥‥‥はぁッ!?」

迅の一言にアスラは困惑した。
戦闘中なので、少し早口で説明をした。

「コイツがもしディーンなら
 また、あの高笑いで挑発しながら戦ってくるはずだ。
 それに、アイツなら戦闘能力のある"鎧虫"で来るはずだからな。
 ナナフシは腕や脚は細く、力もない。つまり、アイツじゃない」

前のカマキリ型の時を思い出していた。
猛烈なパワー、鎌の威力、そして"超技術"。
戦闘能力はとてつもないものだった。
迅が確定付けているということは
こういう事が何度かあったということなのだろう。

「だが、少なくとも油断はできない。
 コイツには他のとは違って知能があるからな」
「単純な作戦は効かないってか」

それなら、どうするべきなのか。アスラは悩んでいた。

「ギィィ‥‥‥‥‥」

 ガサガサッ‥‥‥

ナナフシ型は森の中へと姿を消していった。

「あっ!待ちやがれッ!」
「やめろ。危険だ」

迅に肩を掴まれたので、アスラは止まった。
ガサガサと音源はどんどん遠くまで言ってしまい
ついに聞こえなくなってしまった。

「‥‥‥‥どうするんだよ?」
「まずは作戦を練ろう」

遠くからホークアイ達が駆け寄って来た。
とりあえず、アスラと迅は彼らと合流した。



    **********



「しかし、ワケ分かんねぇ"鎧虫"だなぁ。
 油取らずに嬢ちゃんだけ取っていくなんてな。
 まぁ、もともと油はいらねぇだろうけど」

ヨセフは腕を組んだまま言った。
ハビブもそれを聞いてうなずいていた。

「まるで、始めからマリー狙いだったみたいだな」

ホークアイは迅の方を向いて
同意を求めるように言った。

「あぁ、確かに。じゃないと逃げる意味が分かんないからな。
 マリーを盾にしながら戦えばよかったはずだ」
「なのに、アイツはわざわざ逃げた‥‥‥うーん‥‥‥‥」

全員は唸り声を上げて悩んだ。
迅は思い出したように付け加えた。

「胸元に"起動装置"のあるマリーは
 あの両腕をガッチリ固定された状態じゃあ
 "鎧人(ガイト)"には変身できないだろうな」
「じゃあ、自力で脱出するのは無理なのか。
 それじゃあ作戦も考えにくいなぁ‥‥‥」

リオさんも腕を組んで唸った。

「とりあえず、二人はここにいた方がいいな」

ホークアイはヨセフとハビブにそう勧めた。

「あぁ、言われずともそうするつもりだったさ」
「俺達が行っても足手まといだからな。
 つーか、さっきは全然動けなかったしな。
 あの時の俺らを見る目、滅茶苦茶ビビったぜ‥‥‥‥‥‥」

二人は普通の人間だ。ここで待ってもらった方が得策だろう。
万が一"鎧虫"が来ても油を少しまいておけば大丈夫だろうし
"侵略虫"が来た時も‥‥‥‥そういえば、効くのだろうか?

「"侵略虫"に油は効くのか?」
「いいや、確かに好きな匂いではないらしいが
 寄ってこれない程ではないらしい」

ヨセフは小瓶を振りながら答えた。
護身用にいつも用意している物らしい

「一応、吸わせてくれ。オレも"侵略虫"だからな」
「マジか!?結構キツいらしいからな、気を付けろよ」

そして、迅は軽く小瓶を開けて
手で仰いで匂ってみた。

「‥‥‥~~~~~~ッッ!!!」

迅は少しのけ反った。あまりの刺激の強さに目から涙が滲み出ていた。
例えるなら、虫刺されの薬をもろに臭ったようなものである。
迅は少し息を整えて言った。

「‥‥‥まぁ、行けるヤツは行けるだろうな‥‥‥‥オレは行きたくないけど」

油の威力で少し鼻声になっていた。
迅は目を擦って涙を拭いた。

「まだ、鼻がスースーする‥‥‥やめとけばよかった‥‥‥‥‥」

迅はあまりミント系は好きではないので
ものすごく後悔していた。

「少し休ませてくれ‥‥‥‥」

そう言って顔を押さえて横になった。
仕方ないので、もうしばらく休憩することになった。
結局、ヨセフとハビブには護衛として
ホークアイとリオさんが残ることになった。



    **********



 ガサガサッ‥‥‥‥

「‥‥‥ようやく来たか」

全身に黒い服を纏った男が溜息まじりにそう言った。
ナナフシ型は男の前で足を止めると、しゃがみ込んだ。

「ギィィィ‥‥‥‥」

ナナフシ型は男にマリーを差し出した。
彼女はずっと締められたままだったので気を失っていた。 

「‥‥‥‥やはり、どこか見たことがあるな」

男はマリーの顔を眺めながらつぶやいた。
しかし、記憶の中からはその詳細が思い出せなかった。

 ガサッ!

「お、彼らが来たようだ」

先程、茂みを鳴らしたのは1m級"鎧虫"だった。
向こうに小さな人影がこちらに近づいて来ていた。
その"鎧虫″は、まるで意志を持って
彼に合図をしたかのような動作だった。

「では、後は頼んだよ」

そう言って、男はこの場から退散した。
ナナフシ型はその場に伏せたまま動かなかった。


 ダダダダダダダダダッ!!


ナナフシ型の近くに全員は駆け寄った。
意志を感じないガラス玉のような目がこちらを見ていた。

「ギィィ‥‥‥ッ」

 ザッ ザッ ザッ ザッ

ナナフシ型はゆっくりと横に移動し始めた。
それに合わせて、アスラ達も反対側にに移動した。
しばらく、円を描くような対立状態が続いていた。

「警戒してるのか?」

アスラはナナフシ型を睨んだままつぶやいた。

「このナナフシ型、何というか‥‥‥‥
 時間稼ぎをしているようにも見えるな」

迅は剣の柄に手を掛けて言った。
不確定なものだが、確かにそのようにも見える。

 シャキンッ‥‥‥  ジャキンッ‥‥‥

迅は剣を、アスラは日本刀をゆっくりと抜いた。

「頼むから、いきなり来んなよ‥‥‥‥っうお!」

 ガツッ! 
 
その瞬間、アスラは前ばかりを気にしていたため
足元の石を踏んでバランスを崩した。そのとき―――――――

「ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 ゴオッ!!

ナナフシ型が突然、頭から突っ込んできた。

「うおっ!?」
「跳べ、アスラ!!」

 ダダンッ! 

迅とアスラは当たる寸前で跳んで
ナナフシ型の強襲を回避した。


 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!


ナナフシ型の頭が地面に軽く埋まっていた。
しかし、すぐに頭を引き抜いた。

「クソッ!マリちゃんを放せ!!」

 ガシャシャンッ!!

アスラは"鎧骨格"を換装して
ナナフシ型に走り込みながら叫んだ。

「ギィィッ!」

 バッ!

再びマリーを盾にした。アスラは日本刀を振り抜こうとはしなかった。
いや、する必要がなかった。

「やはり単純な事しかできないようだな」

反対側から迅が駆け寄って来ていた。
アスラと丁度、真反対からである

「さっきは知能の事を考えて出来なかったが
 これを受けるには人質(たて)が二人必要だったな」

二人は同時にジャンプした。
ナナフシ型は誰が見ても分かるほど困惑していた。

「ギィィィッ!!」

 ブオッ!!

ナナフシ型は残りの脚で二人に攻撃を仕掛けた。
しかし、スピードのない攻撃で二人が倒せるはずがなく‥‥‥

ズババッ!!

全てバラバラに断ち切られた。
それにより、ナナフシ型は少しバランスを崩しかけた。

「ここには二人しか来てないから人質はない。
 これで終わらせるぞ!アスラッ!!」
「おぉッ!!」

二人は同時に斬りかかった。

「ギッ!?ギィィッ!!?」

ナナフシ型はマリーをどちらの盾にするか迷っていた。
そして、迅の方向に彼女を差し出した。

「ん?オレの方が強いと受け取ったみたいだな。
 だが、それは同時にアスラをナメてるってことだよな」

アスラは渾身の力を込めて日本刀を振り抜いた。

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉらあぁぁぁぁぁあああッ!!」

 ズバッッ!! パカッ!!
 
ナナフシ型の胴体が真っ二つになった。
そして、そのまま地面に崩れ落ちた。
脚にはすでに掴む力は残っていないらしく
マリーは脚を抜けて、落下し始めた。

 ガシッ!

「危なかった‥‥‥」

迅は彼女を空中で見事にキャッチした。
本来ならこれはアスラにさせるべきことだったのだが
彼はナナフシ型にとどめを刺したので良いとしてもらおう。

「まったく、タチの悪い"鎧虫"だったぜ‥‥‥‥」

 キンッ!

アスラは日本刀を鞘に収めてつぶやいた。



     **********



「う、うーーん‥‥‥‥」

マリーは少し唸ってから目を開けた。
目の前にはアスラが彼女の方を向いて座り込んでいた。

「お、起きた?」

アスラはマリーに話しかけた。
彼女はゆっくりと起き上がってうなずいた。

「‥‥‥うん、起きた」

あまり気持ち良くはない目覚めだった。
全身がほんの少し痛かった。
そして、先程の事を思い出したのでアスラに訊いた。

「私、捕まってたの?」

アスラはそう訊かれて口を閉じた。
彼が答えないのでマリーは察したようだ。

「‥‥‥‥‥‥‥‥ごめんね」

マリーはうつむいて謝った。

「いっつもそうだよね‥‥‥‥‥私はみんなに迷惑かけるばかりで
 何の役にも立たない。本当に‥‥‥‥‥ごめんね‥‥‥」

マリーの手に涙がポロポロと落ちた。
彼女は悔しさのあまり両手を強く握りしめていた。

「全然いいよ。気にしなくて」

アスラは明るく言った。
それを聞いたマリーは思わず顔を上げた。

「‥‥‥‥‥‥‥でも」
「だってさ、完璧な人なんてこの世にはいないじゃん。
 マリちゃんがいつも捕まるなら、俺たちがいつも助ければいい。
 そうやって支え合って生きていく事が大事なんだし、それに‥‥‥‥」

アスラは少し顔を赤くして言葉を切った。
マリちゃんは傍にいてくれるだけでオレの支えなんだから
なんて、とても本人の前では言えるはずがなかった。

「‥‥‥‥‥‥‥ありがと、アスラ」

マリーは笑顔でそう言った。そして――――――――


 ちゅっ


アスラの頬に軽くキスをした。

「~~~~~~~~~ッ!!」

彼の顔は今にも燃え上がりそうなほど、真っ赤になっていた。
そして、恥ずかしさのあまり顔をそらした。

「あははは♪」

マリーはしてやったりとでも言いたげな顔になっていた。
でも、顔はアスラと同じくらい真っ赤になっていた。

『‥‥‥‥‥‥‥‥』

そんな二人の光景を陰ながら見守っていたホークアイは思った。

『好きって‥‥‥一体どんな感じなんだろうな‥‥‥‥‥‥‥』

そして、磨いていた銃をホルスターに入れて
2人の関係をイジりに向かって行った。



    **********



「無事に届けられて良かったね」

マリーはヨセフにもらった小瓶を弄りながら言った。

「そうだね、それにあの家族は優しい人達だったなぁ。
 食事やら何やら全部世話になったもんな」

アスラ達は2、3日ヨセフの家に泊まらせてもらい
再び世界を巡る旅を始めたのである。

「子供が三人もいるなんて幸せな家族だね。
 私も大人になったら子供欲しいなぁ」

マリーは理想の夢の中に入り込んでいた。
迅はそれを聞いて、彼女の頭に手を置いた。

「出来るさ。マリーには優しい旦那様がいるからな」
「‥‥‥‥‥‥‥うんッ!!」

マリーは嬉しそうだが、隣に反応に困っている人が一人。
そんな感じで明るく旅を続けていた。



 ギュオッ!! ドゴオオオオオォォォォォォォォォオオンッッ!!!



突然、全員の目の前を黒い影が高速で通り過ぎた。
そして岩でゴツゴツした壁に激突し、身体は深々とめり込んだ。

「‥‥‥ッッ‥‥‥‥ガハッ!!!」

黒い影は口から吐血した。
そして、そのままズルズルと音を立てながら
地面に腰から崩れ落ちた。

「どうした、その程度か?|アギト」

黒い影が飛んできた方向から来た男が
余裕そうな声でそう言った。
飛ばされた黒い影は中国で共に戦った"鎧人"、アギトだった。

「ぐ‥‥‥‥ガハッ!‥‥‥‥ハァ、ハァ」

アギトは岩壁にもたれたまま荒い息をしていた。
口からは血を流しており、腹部は″鎧骨格"が
砕けており、大きく陥没した状態だった。
状況を見る限り、腹部に強烈な一撃を喰らい
岩壁にまで勢いよく飛ばされたようである。

「ぐッ‥‥‥ハァッ、ハァ‥‥‥お、俺は‥‥‥まだ‥‥‥‥‥‥」

アギトは執念で右手を男の方向に伸ばしているが
男はすでに彼から興味を失っているようだった。

「今の君には興味はない。さらに強くなってから来るんだな。
 でなければ、この“スペック”には勝つことは出来ない」

そう吐き捨てて、スペックはこの場を去って行った。
それを見計らって、アスラ達はアギトの元に駆け寄った。
全員は声をかけてみたが、すでに意識がもうろうとしているようだ。

「‥‥‥何だ‥‥‥‥‥‥来るな‥‥‥‥‥‥こっち‥‥‥‥‥な‥‥‥‥」

 ガクッ

何かをつぶやくと、アギトはそのまま意識を失った。
弱いが息をしているため、早急に手当てが必要だった。

 ガシャシャシャン!!

アギトの"鎧骨格"の換装が解けた。
そして、全員は目の前の光景に絶句した。

「お‥‥‥‥‥‥女‥‥‥‥‥‥?」

辛うじて出た声でホークアイはつぶやいた。
そこには、ズタズタになった服を着た少女が壁にもたれ掛かっていた。 
 

 
後書き
アギトがまさかの女!?
サウジアラビア編、まさかの2話完結の匂いを
周りに漂わせておきながらの強襲です。

中国編であれほど余裕で戦っていたアギトが
岩壁にめり込むぐらいにやられるというのは
一体“スペック”とはどれほど強いのでしょうか?

ライバルに見せかけての、新たな仲間に見せかけての
まさかの新ヒロインの登場なのでしょうか!?
それとも作者のただの趣味なのか!?(失礼)
彼女が後の戦いに大きく関係していきます。

次回 第28話 男のふりをしている女性キャラは貧乳が多い お楽しみに! 
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