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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第百四話 傲慢の正義

 
前書き
記憶喪失のピノッキモンがホーリーエンジェモンを撃退し…。

ルーテシア「リリカルアドベンチャー、始まります」 

 
ホーリーエンジェモンを撃退し、記憶喪失となり、凶暴性を失ったピノッキモンは大輔達と穏やかな時間を過ごしていた。

はやて「にしても、何やのあの馬鹿天使は?」

大輔「あれは自分の正義に酔った大馬鹿野郎だ。それで周りがどれだけ傷つこうが関係ない。はっきり言って、善悪がはっきりしてるデビモンやヴァンデモンの方がまだあいつらより好感が持てるね」

一輝「自分の正義が正しいと思い込んでる分、タチが悪いな。しかし人間もそうだ。自分が正しいと思ってる奴がいる。ただ、あいつらは善とか正義とかにこだわりすぎてるから馬鹿に見える。基本的には悪い奴らじゃねえ。基本的にはな」

賢「しかし、ホーリーエンジェモンはセラフィモンに報告すると言った。多分僕達は天使型デジモンに狙われることになる」

遼「だろうな。俺達は光の軍勢の中でも高い実力を持つホーリーエンジェモンを撃退したし。ピノッキモンを庇ったからな」

大輔「(クラヴィスエンジェモンを倒した時点で狙われてもおかしくないんだけどな…)」

今思えば、クラヴィスエンジェモンは天使型の究極体デジモンで、光の軍勢でも上位に位置するはずだろうに。
大輔は知らない。
なっちゃんと出会ったあの場所は特殊なエリアで、エネルギーの探知が難しくなるのだ。
だからクラヴィスエンジェモンがマグナモンに撃破されたのはまだ光の軍勢には知られていない。
しかしそれも時間の問題であろう。
クラヴィスエンジェモンが転生し、セラフィモンに報告するまで。

アリサ「早くスパイラルマウンテンの森のエリアを消さないとね。消さないといけないんだけど…」

チラリとピノッキモンを見遣る。
ピノッキモンは森を消そうとしているが、全く上手くいかない。
もしかしたら…。

すずか「(もしかしたら、ピノッキモンの命とエリアが…?)」

ならピノッキモンが何をしようと森のエリアに何の変化もないのに納得がいく。

すずか「(どうしよう…)」

ピノッキモンを殺すことなど出来ない。
確かにピノッキモンはダークマスターズで倒すべき敵だ。
しかし、今のピノッキモンは優しい心を持ち始めている。
闇だからという理由で殺したくはない。

賢「……少し休もうか」

暗くなってきた雰囲気を察した賢が提案する。
大輔達はそれぞれ散り散りになった。































賢「はあ…」

知らないうちに疲れていたのか、賢は深い溜め息を吐いた。

ピノッキモン[どうしたの?]

溜め息を吐いた賢に気づいたピノッキモンが声をかける。

賢「え?あ、いや…何でもないよ。疲れてるだけさ。」

苦笑しながら言う賢にピノッキモンは首を傾げた。

ピノッキモン[ふーん。でも何か悩みがあったら聞くよ?だって僕達友達でしょ?]

賢「へ?」

ぽかんとなる賢にピノッキモンも疑問符を浮かべた。

ピノッキモン[あれ?違った?]

更に疑問符を浮かべるピノッキモンに賢は首を横に振る。

賢「あ、いや、そんなことはないよ。友達だよね。ならピノッキモンは僕の新しい友達だね」

ピノッキモン[へへ♪]

嬉しそうにするピノッキモンに本当に変わったなと自分でも思う。
いや寧ろこれがピノッキモン本来の性格なのかもしれない。
暗黒の力で性格が歪んだだけで、そう、まるで自分のように。

賢「(絶対に死なせないで森のエリアを消す方法を見つけてみせる)」

賢がそう決意して立ち上がった時であった。
賢とピノッキモンの周囲に光の障壁が張られた。

賢「!!?」

ピノッキモン[な、何!!?]

驚く賢とピノッキモンだが、次に空を見上げると、全身が刃のような天使型デジモンが現れた。

ワームモン[誰!!?]

[我が名はスラッシュエンジェモン。セラフィモン様からの命を受け、ピノッキモンと裏切り者の選ばれし子供達を排除しに来た。]

賢「裏切り者って…元から僕達は君達に従っていたわけじゃないけどね…ユニゾンエボリューション!!」

ワームモン[…ワームモン超進化!ジュエルビーモン!!]

完全体に進化し、槍をスラッシュエンジェモンに向けるジュエルビーモン。
ピノッキモンもハンマーを構えた。

スラッシュエンジェモン[ピノッキモン。闇の力を持って世界を我が物にしようとした罪、そして選ばれし子供達の裏切りの罪、死を持って償うがいい!!]

スラッシュエンジェモンがピノッキモンとジュエルビーモンに襲い掛かる。
ジュエルビーモンとピノッキモンはそれを回避するとスラッシュエンジェモンに武器を向けた。

ピノッキモン[ブリットハンマー!!]

スラッシュエンジェモン[ふん!!]

ピノッキモンがハンマーをスラッシュエンジェモンに叩きつける前にスラッシュエンジェモンは両腕の剣でハンマーを両断した。

ピノッキモン[あ!!?]

スラッシュエンジェモン[終わりだ!!]

とどめとばかりにピノッキモンを剣で切り裂こうとするがジュエルビーモンが槍で剣を受け止める。

ジュエルビーモン[くっ…]

スラッシュエンジェモン[我が剣を受け止めるとはな。だが、所詮は完全体。]

槍に罅が入り始める。

ジュエルビーモン[馬鹿な…!!?]

スラッシュエンジェモン[私の敵ではない!!]

一気に力を入れ、槍を粉砕するとジュエルビーモンを弾き飛ばした。

ピノッキモン[ああ!!?]

スラッシュエンジェモン[貴様は後で排除してやる。ピノッキモン…覚悟しろ!!]

ピノッキモン[あ…ああ…]

身体がガタガタと震える。
攻撃の要のハンマーを失い、ジュエルビーモンが簡単に倒されたことで、ピノッキモンの身体が恐怖で震える。

ジュエルビーモン[や、止めろ…ピノッキモンはもう戦意がないじゃないか!!]

スラッシュエンジェモン[黙れ、闇はこの世界を穢す。穢れはこの世界にあってはならない。]

ジュエルビーモン[貴様…!!]

スラッシュエンジェモン[貴様からも闇の力を感じる。貴様も、そして貴様の仲間達も排除してやる。そして二度とこの世界に穢れないように、一度軍を率いて現実世界に行き、穢れとなる可能性のある者を排除する]

賢『何だと…どれだけの人間が犠牲になるか分かっているのか!!?』

スラッシュエンジェモン[正義のためなら多少の犠牲は仕方ない。寧ろ世界のために犠牲になるのならば光栄だろう]

賢『ぐっ…ピノッキモン!!逃げるんだ!!少しでも遠くに!!』

ジュエルビーモンが立ち上がり、時間を稼ごうとするが、スラッシュエンジェモンはそれを腕の一振りで薙ぎ倒し、逃げるピノッキモンに剣を向け、それを一気に振り下ろした。

賢『あ…』

真っ二つにされたピノッキモンの身体。
賢は自分の身体が震えるのを感じた。

ピノッキモン[い、痛い…よ…た、助、け…て…]

真っ二つにされたピノッキモンは粒子化し、デジタマと化した。

賢『あ…ああ…』

どうしてこうなった?
敵とはいえ、ピノッキモンとは分かり合えそうだったのに。

スラッシュエンジェモン[次は貴様だ。闇に従った自分自身の罪を悔やむんだな。]

賢『罪だと…?』

怒りが全身を熱くする。
凄まじい力が全身から漲って来て、今ならスラッシュエンジェモンを倒せそうな気がしてきた。

賢『ふざけるなよ、何が正義だ。自己中心と正義を履き違えた馬鹿が…』

怒りに呼応するようにジュエルビーモンからどす黒いエネルギーが放たれる。

ジュエルビーモン[お前だけは許さないぞ…]

どす黒いエネルギーがジュエルビーモンを包み込み、エネルギーが消えた時にはそこにいたのはジュエルビーモンではなかった。

スラッシュエンジェモン[き、貴様…まさか、七大魔王!!?]

そこにはボマージャケットを始めとして、全身黒を基調とした衣装を身に着けており、左腕には赤いスカーフが巻かれている七大魔王、七つの大罪“暴食”を司る魔王型デジモン、ベルゼブモンが立っていた。

ベルゼブモン[…ふう、待たせたな。お前が最期の時が来たぞ]

スラッシュエンジェモン[ば、馬鹿な…闇の存在たる貴様が神聖な光の存在たる私に勝てるわけがない!!ぐはああ!!?]

台詞を言った直後、スラッシュエンジェモンの腹に凄まじい衝撃が襲う。
ベルゼブモンの膝がスラッシュエンジェモンの腹に減り込んでいた。

ベルゼブモン[どうした?お前に勝てるわけがないんじゃないのか?]

スラッシュエンジェモン[な、何だと…こ、この結界は私の力を大幅に増大させ、闇の存在を大きく弱体化するはずなのに…]

ベルゼブモン[成る程な、通りでおかしいと思った。キメラモンカオスより遥かに弱いお前の動きに俺がついていけなかった理由がな。だが、それもこうして進化されたらおしまいだな]

スラッシュエンジェモン[調子に乗るな…!!]

激しい攻防戦をベルゼブモンは楽しんでいるようだった。
終始余裕のまま、時折挑発までも混ぜ、スラッシュエンジェモンを相手にする。
此処まで力の差があれば結界など関係ない。
地に叩き落とされて背を踏みつけられたことで、呻き声を上げるスラッシュエンジェモンを足蹴にし、ベルゼブモンはニヤリと笑う。

ベルゼブモン[いいザマだな、スラッシュエンジェモン。お前達の自己中な正義に殺された連中の気持ちが少しは分かっただろう?]

スラッシュエンジェモン[だ、黙れ…下賎な存在の分際で…]

ベルゼブモン[救いようのない奴とは正にお前のようなのを指すんだろうな。]

ベルゼブモンの足が地面に、正確にはスラッシュエンジェモンの背に向かって踏み込む。
スラッシュエンジェモンの背はベルゼブモンの足の形のまま押し窪み、鈍い音を立てて潰れた。
スラッシュエンジェモンは粒子化し、デジタマと化したが、ベルゼブモンはデジタマを足で踏む。

ベルゼブモン[ピノッキモンを殺し、現実世界に侵攻しようとしたお前に転生する資格はない]

グシャッと音を立ててデジタマを破壊した。
スラッシュエンジェモンは転生することも出来ずに消滅したのだ。
スラッシュエンジェモンが死んだことで結界が消えたために、大輔達が来る。

ティアナ[ピノッキモンは!!?]

賢『ピノッキモンはデジタマとなった。スラッシュエンジェモンに殺された。』

大輔「そんな…いきなり天使型デジモンが襲い掛かってきてまさかと思ったら…くそ…」

はやて「ベルゼブモン…ウィルス種、魔王型…究極体…七大魔王の一柱。七大罪の暴食を司る。ナイトメアソルジャーズの頂点に立てるほどの実力を持ちながら、群れることを嫌う孤高の魔王。冷酷無比な戦闘狂だが、高いプライドを持ち、弱者を虐げることは好まない。愛用の二丁拳銃ベレンヘーナはオリンポス十二神の一柱である鍛冶神ウルカヌスモンが彼に惚れ込み作り上げたものである。必殺技は二丁拳銃“ベレンヘーナ”の高速連射によって敵を蜂の巣にする“ダブルインパクト”…。」

ギンガ「許せない…許せないよ…!!」

ユーノ「それは多分、ここにいる全員の気持ちさ」

大輔「ああ、ダークマスターズをぶっ潰したら、二度と自分勝手な正義を振り回せないようにしてやる!!」

天使型デジモンへの怒りを強めながら、大輔達はピノッキモンのデジタマを回収して、森のエリアを後にした。
 
 

 
後書き
ピノッキモン死亡、しかしデジタマに転生出来たために、ある意味救われたのかな?
友達も出来たし。 
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