真ゲッターロボ・地球最凶の日 第一部「滅亡への夜明け!」
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燃えよ!ゲッター篇第七話「燃え上がれ!帝都・後篇」
前書き
早めに後篇を更新します。今回は結構おふざけがすぎました。今では反省している……
夜空の上空を低空で嵐山中隊の戦術機の編隊、そして三機のゲットマシンが飛行していた。
まず、中隊は二手に行動してサソリもどきの要撃級やサイのような突撃級を撃破しつつ奥に潜むレーザー族種を殲滅するという流れだ。しかし、この戦略にゲッターは入っていなかったのが癪だ。
「おい、女隊長!俺らは何すりゃあいいんだよ!?」
呆れて俺は無線で赤い隊長機へ怒鳴った。
「貴様らはそこで我々の活躍を見物していろ!」
「あぁ?舐めた口きいてんじゃねぇぞ!」
俺はついぶち切れて言い返す。ちなみに俺たちはあくまでも民間人だ。群とは違って士官に口答えしたってかまいやしない。
「ケッ!紅牙、こうなりゃ俺達が先に行くぞ?」
見かねた疾風の考えに俺や赤城も賛成だ。
「よっしゃあ!そうと決まれば、最初はこの俺が先陣を切らしてもらうぜ!」
好戦的な笑みを浮かべる俺は、すぐさま乗機のイーグル号を合体体制へ移行させて初陣をゲッター1できらせてもらった。
「チェーンジ!ゲッター1ッ!!」
炎の燃えしきる上空から飛来する赤い巨人、それは肩部から取り出した双方の斧を両手に振り回しながらBETAの群れへ突っ込んでいく。
「オラオラァ!俺たちを物量で押し流してみろや!!インベーダーの雑魚共ぉ!?」
BETAを一網打尽に無双するゲッターの姿に嵐山の中隊が逆に彼らの活躍を見物しているはめになった。
「くぅ!余計なことを……我々も続け!あの図体だけのデカ物に後れを取るな!?」
「「了解!」」
女学徒だけしか構成されていない中隊から少女たちの返答が無線から飛び込み、それと同時に戦術機による独自の機動戦が始まった。
「このぉー!!」
戦術機の一人が、我武者羅に突撃形態の頭部へ射撃を浴びせるが、突撃形態の頭部の甲羅に弾かれて無効であった。
「志摩子!訓練を思い出して!」
「!?」
唯衣の叫びにそのパイロットと各機体は低空飛行で奴らの真上を飛び越え、後ろに回り銃撃をくらわす。
丸腰の後部を食らった突撃形態は唸りを上げるかのように倒れていく。しかし、
「レーザー!?」
唯衣がコックピットから響くレーザー級の警戒音に反応する。
「高すぎるっ!!」
「え……?」
隣を飛行していた志摩子か気付くも、すでに遅かった。レーザー級の放つ閃光が一直線に彼女の機体へ直進する……が、
「ゲッタートマホークブーメランッ!!」
真横から円状に回転して突っ込んできたゲッタートマホークがカーブを描いて志摩子に迫るレーザーを弾き返した。
「な、何なの!?」
突然横から何かが回転して光線を弾いたことが今でも信じられなかった。
「レーザー注意!」
隊長が叫ぶと同時に彼らの真上を幾つもの光線がギリギリに通過する。
「くそ!レーザー級がこんなに早く砲撃を開始するなんて……」
まさかの急展開に俺は唇をかみしめた。これでは俺達はともかく嵐山中隊が危うい。奴の光線などゲッターにとってはそよ風も同然なのだが、戦術機の装甲はあの射撃を食らえば貫通して撃墜される。この世界にとってレーザー級はBETAの中で最も恐ろしい脅威らしい。くそ!奴らが現れたんじゃ、こっちは戦術機に合わせなきゃならないため余計に戦いづらくなってくる……
中隊は距離をつめられ、攻め来るサソリもどきとの近術戦へと持ち込まれた。奴らの鋭いく分厚い両腕の爪が彼女たちに襲いかかる。しかし、彼女らも伊達じゃない。
「うおぉ!」
戦術機は両手に握りしめた太刀で蠍形態を次々と切りつけていく。中には逆にやられそうになる機体も見受けら得るが、俺たちにフォローされつつ、今のところ撃墜された機体は一機もない。
そして俺たちを先頭に戦術機らは後方へと回った。徐々に詰められていた戦況も今では真逆だ。
「八分か……」
長いようで短い、「死の八分」を乗り切り、ついに退却命令が下った。
「や、やった!私達……死の八分を乗りきったんだ!」
パイロットの一人で唯衣の友人、石見安芸が途端に浮かれていた……その刹那。
「危ない!」
そんな油断するパイロットの背後から突撃級が突っ込むが、そこをゲッタートマホークが振り下ろされ突撃級は真二つにされた。
「大丈夫か!?」
俺は振り向き、足元で尻餅をつく戦術機へ問いかける。
「ここは俺たちに任せてとっとと後退しろ!?」
疾風が叫び、中隊は悔しくも渋々と交代を始める。とくに女隊長の機体は破損が酷かった。
「う、己惚れるな……!」
そう彼女は言い残すと、赤い機体は俺たちに背を向けた。負け惜しみか何かか?
「さて……邪魔な奴らはこれでいなくなったことだし」
俺はゲッター1を浮上させてレーザー級の陣を見下ろした。当然撃ち落そうとレーザーの弾幕を浴びるわけだが、ゲッターにとってその攻撃は無意味のほかない。
「そんじゃあ……ド派手に一発花火でも打ち上げてやっか!?」
万弁の笑みで俺はゲッタービームを引き金を引いた。
「ゲッター……ビィームゥッ!!」
光線を浴びながらもゲッター1は平然と腹部の射出口からゲッター線を光らせた。
*
八幡防衛ラインでは想定以上の津波で押し寄せるBETAと戦術機の部隊が猛攻を繰り広げていた。しかし、物量によって徐々に押され、部隊は次々とBETAの波に飲み込まれて行く。
「た、隊長……!!」
目の前のBETAの大群が押し寄せ、足がすくむパイロットも少なくはなかった。
「何が何でも帝都へは一歩も入れてはならん!!」
「し、しかしこの数では……」
まさに奴らの群れが彼らを飲み込もうとする瞬間、目の前の津波に一筋の深緑の閃光を浴びて爆発と共に炎上した。
「こ、これは……!?」
上空からの攻撃と知った隊長機は上空を見上げると、そこには紅牙達とは違うもう一体のゲッター1の姿であった。
「こちらは東北支部のゲッターチームだ!これより、貴君を援護する」
「げ、ゲッターだと!?」
東北支部の研究所からはゲッターの出動要請はかかっていないはず。しかし、ここで出てくれたからには天からの救いだった。少なくとも帝国軍らにはそう思えた。
「よっしゃあ!そんじゃあ俺のゲッター1でガンガン行くぜぇ!!」
ゲッター1の担当パイロット、剛田城二のテンションは絶好調であった。
「待ってろよ茜!お前の笑顔を、俺がこの手で守り通して見せるぅ!!」
ビシッと決める城二だが、ジャガーとベアーのコックポットからはうざいといわんばかりの苦情が来た。
「城二さん……いい加減漫画の主人公ぶるのはやめてください?」
「そうですよ?下らん妄想はやめてさっさと現実に帰ってください」
「う、うるさいぞ!?太一!健二!お前らも姉貴に良いところ見せてみろ!?」
「ね、姉ちゃんのことは言わないで下さいよ!?」
長男の太一が突っ込む。
「ところで……九州の一文字兄さんのゲッターチームはどうなってんだ?」
と、城二。
「大丈夫ですよ、一文字さんのことですから美味しいところは城二さんにとっておいてあるので」
「それよりも、まだ敵は残っているんですよ?城二さん、最後はあなた御自慢の、片腕を真っ赤に燃やした「バカ熱ゴッド・ゲッタービーム」で何とかしてください?」
と、次男の健二。
「って!何がバカ熱だぁ!!そこをいうなら爆熱だろうが!?」
「それよりも、早く撃ってください!」
「ったく……そんじゃあ行くぜぇ!?ゲッター・オブ・ハートの名にかけてぇ!!」
城二のゲッター1が地上へ降り立ちゲッタートマホークでBETAへ切りかかる。
「メン!メン!メェーン!!」
BETAへ切りつけるごとにそう叫んでいる城二。
「城二さん、剣道じゃないんですから……」
再び健二が呆れる。
「城二さん!そんなことしている間にもエネルギーの充電が終わりました」
太一の知らせに、待っていたと歓喜になる城二は再びゲッターを浮上させた。
「よぉっしゃあぁ!!そんじゃあ決めるぞぉ!!」
と、ゲッター1は右手を目の前にかざした。
「俺のゲッターが真っ赤に燃えるぅ!キサマらを倒せと轟き吠えるぅ!!必殺、爆熱・ゴッド・ゲッタービィームッ!!」
「城二さん、さっきからサ〇ライズのキャラと被りまくってますよ?」
と、健二。彼言葉を最後に城二のゲッタービーム(以下略)が放たれ、八帖防衛ラインへ進攻するBETA群が一瞬で消滅した。
*
「なに!BETAの小規模群が地中を進んで帝都へ!?」
一方嵐山補給基地にて、受話器を取る俺はそう叫んだ。これは、速やかに急行せねばならない。幸い、こちらの戦況はゲッターによってBETAは殲滅された。残るは地中を進んで帝都へ侵入しようとしている小規模BETA群である。
とりあえず、俺たちゲッターチームと第一中隊の唯衣と能登、山城が向かい、他のメンバーは基地の警護にあたった。
だが、俺達が来た頃には既に遅く、帝都の路上からBETA共がわんさか湧いて出てくる
「あれは……!?」
そんな帝都にて一体の戦術機、それも新型とおもわれる不知火と言う機体が目の前のBETAと交戦しているのを目にした。そして、その機体は俺達へ振り向くと、無線をつないだ。
「ゲッターロボ?お前たちか……!」
その声は、
「せ、先公!?」
俺は叫んだ。そう、あの眼帯の先公こと真田教官だ。よく無事に生きていてくれてなによりだ。しかし、その機体には損傷が目立ち、これ以上の派手に動きは無理だろう。
不知火は進撃獣の返り血を浴びて真っ赤に染め上がっている。
「随分見ない間に戦士らしくなったようだな?」
「教官、我々がこの戦域を引き受けます。教官は後退を……」
唯衣はそう心配するが、
「心配はいらん!まだやれる……」
強がるかのように教官は動じない。
「しかし……!」
「先公!俺たちに代われ……その様子だとテメェの機体はもう無理だ」
と、疾風。珍しくこいつは今まで散々嫌っていた先公を心配していた。
「貴様らに言われる筋合いはない!」
「テメェに死なれたら、唯衣たちが困んだろうが?テメェは、部下のことも考えずにそうやって勝手に死んじまうのかよ?」
「……?」
疾風のその台詞のうちには、かつて大切なものを失った彼の悲しみと後悔の意がこもっていた。真田自身も、これまで多くの部下を見殺しにしてきたが、だからといって自分が死に急いでも死んでいった部下たちへの罪滅ぼしにはならなかった。
「……わかった、しかし無茶だけはするな!?」
諦めた真田は不知火を浮上させて戦前を離脱した。これでよかったと、疾風はわずかな笑みを浮かべる。
*
帝都へ侵入したBETAの中には最大の大きさを誇る要塞級が存在した。奴は強酸が塗りたくった触手を鞭のように振り回して建物のを壊していく。しかし!
「ゲッタードリル!」
要塞級の真下から巨大なドリルをかざすゲッター2が現れ、そのドリルで要塞級の腹部はあっけなく貫かれた。
周囲から湧き上がるBETAも音速を超えるゲッター2の機動戦で次々と肉片にされていく。
「ゲッターミサイル!」
ドリルがミサイルとなって発射し、目の前の中型のBETA陣へ命中する。しかし、ゲッターとしては帝都の街中では狭すぎて動きが取れない。
「疾風!ここは俺に任せてくれ?」
赤城が名乗り出る。
「ゲッター3か!?」
ゲッター3の自在に伸縮できる両椀部なら……!
「よし!チェーンジ・ゲッター3!!」
ゲッター2からゲッター3へ分離し、ゲッター3特有の両椀部が無限に広がり帝都の街中を駆け抜けて、次々と路上のBETAを潰していく。これで中型のBETA陣はあらかたつぶしたと思える。
「す、すごい!」
後方から見ていた唯衣たちは目の前の非常識な現象に目を疑った。
「これが、ゲッターロボ……」
能登は、その戦いに見とれていた。
「……!」
しかし、山城はそんなゲッターに劣等感と嫉妬を感じている。
「待って……レーダーに反応?」
そのとき、彼女たちの後方から巨大な機影が飛び出してきた。もう一体潜んでいた要塞級である。
「なに!?」
要塞級に衝突した三機の戦術機はそのまま京都駅へと墜落して行った。
「くそ!」
潜んでいたその要塞級を肉片にした後、イーグルのハッチから俺が飛び降りた。
「紅牙!どこへ行く!?」
まだ兵士級や戦車級が街中に潜んでいるかもしれないというのに、何を考えているのかと疾風が慌てて呼び止める。
「唯衣たちを探してくる!」
「よせ!駅にも無数の小型種が潜んでいるかもしれないんだぞ!?」
「一度俺と戦った相手なら俺が、どれほどタフがわかるだろ?」
「……」
疾風はそのことなら返す言葉がない。確かに紅牙は自分と互角以上に渡り合える相手だ。しかし、そんな相手だからこそ危険な目に会ってほしくはないのだ。そして新たに得た掛け替えのない仲間としてでも。
「行かせてやれよ?疾風」
そんな彼の元へ赤城から無線がはいる。
「赤城、しかし……!」
「女の子の一人も守れずに、男っていえねぇよ?それに、紅牙は唯衣ちゃんのことが好きらしいからな?」
と、赤城はコックピットから紅牙を見下ろしてニヤニヤした。
「ば、バカ!そんなんじゃねぇよ?」
赤くなってそれを否定する俺だが、大方否定はできずらかった。
「……わかった。とりあえずゲッター2と3でこの周辺を見張っておく。何かあったら連絡しろ?」
疾風は、許可して彼を京都駅へ向かわせた。紅牙が居ない以上ゲッター1は使えない。その間はゲッター2と3でどうにかしなくてはならない。
「紅牙……」
疾風は、京都駅へ消えてった紅牙の身を案じた。
「へへ!疾風、やっこさんがドンドン来たぜ?」
赤城の言葉に、次々と中型のBETAが無数に湧いて出てきた。
「ああ、そうらしいな?」
「京都駅には指一本触れさせないぜ?」
「行くぞ赤城、紅牙が出てくるまで京都駅を守るんだ!」
「おうよ!!」
*
「う、うぅ……」
墜落した場所は京都駅。黄色い専用機から身を乗り出し、機体を放棄したのは唯衣である。
「ここは……?」
暗くて視界も厳しく、ハンドガンと懐中電灯を手に京都駅の階段を少しずつ下りていく彼女。そんな彼女は共に落ちたとみられる仲間たちの名を口に叫んだ。
「和泉!山城さん!神威さん!紫電さん、どこ!?……黒銀様!!」
しかし、いくら叫んでも返事はない。静まり返った沈黙の中で彼女は恐怖に見舞われながら駅の奥へと進んで行く。そして、彼女は奥へと突き進んでとあるホームへと足を踏み入れた。天井から明いた巨大な穴から一帯を月の光が照らしていた。
そして、その光に照らされている一帯にはある物体がある。白い戦術機で彼女の同機であったのだ。
「あれは……!?」
近付こうとしたそのとき、機体を幾体もの戦車級が囲いだした。機体によじ登り、巨大で長い腕で機体の装甲を次々と引っぺがしていく。そして、奴らの両腕が機体の搭乗ハッチをはがした時、パイロットの姿があらわとなった。そのパイロットを目に唯衣は叫ぶ。
「山城さん!?」
「ゆ…唯衣……?」
額から血を逃し、それどころか両腕両足共に骨折し機体からの脱出は不可能であった。
逃げる事が出来ず、BETAに食い殺されるのを待っている彼女は、唯衣へある決断をした。
「私を……お願い、私を……撃って!」
「……!?」
突然の言葉に唯衣は戸惑う。しかし、今の彼女に考える時間など無い。こうしている間にも戦車級の赤い手が山城へと迫ってくる。
「お願い!撃ってよ!?コイツらに食われる前にぃ……!!」
「…う、うああぁ!!」
叫びながら唯衣は銃身を握りしめ、引き金を引いた。しかし、薄暗い空間では銃声しか響かず、弾は山城から大きく外れた。
「……出来ない、私には……できない!」
戦友を撃つことはできず、彼女はその場で膝をついた。そのときには既に山城は戦車級共の腕につかまり、手足を掴まれると持ち上げられ……
「や、やめてぇ!!」
山城の体を引きちぎろうとする。ギチギチと嫌な音を立て唯衣は必死で耳をふさぐが、次の瞬間!
「うぉりゃあ!!」
月をバックにある一人の影が照らされ、こちらへと舞い降りて山城を引きちぎろうとする嫌な音は、彼女を捕えた戦車級を一網打尽に切り裂く爽快な斬撃音へと変わった。
「く、黒銀様!?」
涙ぐむ唯衣の泣き顔は途端に笑顔と変わった。
「唯衣!山城!二人とも無事か!?」
そこには両手に斧を握りしめる紅牙の姿があった。
「黒銀様!助けに来てくださったのですね?」
「後は俺がやる、お前たちは安全なところへ逃げろ!?」
俺は、山城を担いで唯衣に渡すと、彼女の機体へよじ登る戦車級を一網打尽に斧で切り裂いていく。この斧はゲッター線と取り入れた対BETA白兵戦用兵器として開発されたビームトマホークという代物だ。軽く一振りすれば小型種ならあっけなく蒸発させたり、切り裂くことができる。持前の喧嘩の身体能力で次々と戦い舞う。
「す、すごい……!」
唯衣に担がれる山城は、戦車級を次々と薙ぎ払っていく紅牙の雄々しさに見惚れていた。彼女はつい最近まで彼を小馬鹿にしていたはずが、今では彼に救われ、今に至ることから己の愚かさに恥じらいだした。
そして、次に気付いたころには周辺の戦車級は俺によって肉片にされていた。
「二人とも怪我はねぇな?」
「はい、助けていただいてあり田郷とざいます!黒銀様」
紅牙の戦いっぷりに見惚れたのは山城だけではなく唯衣も同じだ。彼女は顔を赤くしていた。
「とりあえず、出口へ向かおう?外で疾風と赤城が待ってくれている……あ、そういや能登は!?」
目の前には唯衣と山城の二人しかいない。別の場所へ落ちたのだろうか?だったらすぐに探さなくては……だが、二人を連れたままBETAが蔓延る夜更けの帝都を歩き回るのはいささか無理がある。だが、
「能登は俺が助けたよ?」
その声は俺の背後から聞こえてきた。振り返ると、そこには見覚えのある青年が気絶した能登をおぶさって現れた。
「あ!お前は!?」
そう、あの能登のペンダントに移っていた彼女の彼氏で婚約者の……名前なんだっけ?
「久しぶりだな?黒銀紅牙君、俺は九州支部のゲッターチームに所属しているゲッター2のパイロットを務めさせてもらっている田上忠道だ」
「ああ!確か俺らが見学へ行ったあそこの!?」
「あはは……まぁね?大切なフィアンセを守るためにゲッターチームに志願したんだ。本当は戦術機のパイロット試験に落ちたことで吹っ切れた勢いでゲッターチームに入隊したら、それが大当たりってわけさ?当初ゲッターチームなんて単なる変人の寄せ集めとか言われてたから入隊を希望している奴なんかゼロだったからね?」
「そうか……ま、それよりも能登は無事なんだな?」
「ああ、俺の正体を知った途端に泣き崩れながら俺に抱き付いてこられて少しびっくりしたよ?あと少し遅かったらソルジャー級に食われそうになっていたからな?」
「まてよ?お前がいるってことは、もう一体ゲッターロボがあるってことは……一文字の旦那もか?」
言い忘れていたが、九州支部のゲッターチームでゲッター1のパイロットをしているのが俺のいた世界で冥夜の送迎係の運転手をしている元走り屋の男だ。どこかのカー漫画に出てくる豆腐屋の息子みたいな顔立ちだが、その辺はノーコメント……
「ああ、一文字さんが待っているから早いとこ出ようぜ?もうこの辺には小型のBETAがいないようだ。さっき和泉を襲おうとしていたソルジャー級は俺が始末したし……」
ちなみに、田上も紅牙同様にずば抜けた戦闘能力を有するパイロットだったりする。
俺は、田上と共に駅を出てそれぞれのゲッターロボへ戻った。
駅に出たころにはゲッター3が出迎えに来てくれて3のデカい掌に乗って俺は少女二人と共にイーグルのコックピットへ乗せた。
無線で一文字さんと話がしたかったが、あちらもいろいろと忙しいようなので、とりあえずおしゃべりは後にしよう。さて、俺たちも早いとこ帰るとするか……ん?
「レーダーに多数の機影を確認した!」
疾風が叫ぶ。レーダーには巨大な機影が幾つも現れる。それは、地面を突き破って次々と現れた。
「ポート級か……!」
疾風は前方の影をにらむ。そう、あれはポート級こと要塞級であった。おそらく、ゲッターが原因で救援に駆けつけたのであろう?
「要塞級が……さ、30?」
赤城は次々としぶとく出てくる敵に呆れた。
「今日のところはデカさで勝負しようとしているらしいな?」
疾風が残忍に笑む。
「へっ!そんじゃあ最後もやっぱアレで適当に片づけとくか?」
俺はニヤニヤしたままゲッター1へ変形しようとしたが、
「待て待て?ゲッターのGだと強化装備じゃ厳しいぞ?一旦唯衣たちを隣のゲッターに預けてもらえ?」
と、疾風。やばいやばい、忘れてた。そういや強化装備のスーツじゃゲッターのGには女性だと耐えきれないな?
「一文字さん!この二人を頼みます」
俺は九州ゲッターに無線を入れてほかの二人を預けてもらうよう頼んだ。
『どうした?紅牙……』
無線からは紳士のようなクールでカッコいい声が聞こえた。これが一文字さんだ。
「一文字さん、二人を連れて先に行ってください?まだ連中がしぶとく出てきますんで、ゲッタービームで一掃しておきます」
『わかった、くれぐれも帝都を全壊させないでくれよ?」
「半壊ならいいっすね?」
『いや……半壊もどうかと……』
と、九州チームは先に戦線の離脱し、残った俺たちは要塞級の群れへと振り向いた。
「行くぜぇ!ゲッタービームッ!!」
*
翌朝、次に唯衣が目を覚ました場所はとある救護テントの中だった。
「ここは……」
そういえば、昨夜に起こった眩い光が無数の要塞級を飲み込んで……それ以降はあまり記憶にない。
「気が付きましたの……?」
隣のベッドに横たわる山城が、唯衣に尋ねた。
「山城さん?」
「京都駅で、命からがら助かりましたわ?」
「和泉は……?」
「外へ出ておりますわ?たそがれながら「やっぱり忠道君が運命王子様だったのね?」とか妄想にふけっておりましたけど?」
(夢じゃなかった?じゃあ教官は!?)
「山城さん、教官は?」
「無事に生還して軍に復帰しているころでしょう?」
「よかった……で、ゲッターチームの人たちは?黒銀様はどこに?」
「黒銀さんたちは今頃研究所へ戻っているころでしてよ?そこまでの詳細は知りませんわ」
「そう……」
またすぐに会えると、唯衣は思いテントから外へ出た。そして崩壊した街並みを見つめる。BETAによる被害ではなく、ゲッターがBETAを撃退するのに巻き込まれたための被害だ。幸い犠牲者は居ず、不幸中の幸いであった。
(この世界は……滅びの道へと歩んでいるというのか?いや……ゲッターがある限り我々人類にはまだ残された希望があるはず。しかし、ゲッターの強大なその力には神にも悪魔にもなりうるだろう?私は、ゲッターが神でも、悪魔でもなく、我々人類の希望となることを望む……)
晴れた空を、彼女は眺めた。いつしかこの空をゲッターロボと戦術機が飛び交えることを信じて……
後書き
新たな戦地アラスカ、新たなる反逆の砦ユーコン、黒銀はその地で謎の少女と運命の戦友と出会う!
次回
真ゲッターロボ・地球最強の日
第八話「三匹が行く……」
次回から本編へ突入します。こっからが正真正銘の石川ゾーンです!R指定ギリギリの包囲網をかいくぐっていきます!
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