美しき異形達
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第四十話 大阪の華その十七
「戦えるさ」
「私もよ。じゃあ」
「今回はあたしと菊ちゃんでいいかい?」
薊は菊以外の面々に顔を向けて問うた。
「それで」
「ええ、いいわ」
「それならね」
他の面々は薊の問いに微笑んで答えた、その返答を受けてだった。
薊は己の右手七節棍を出した、そしてそれを両手に持って構えた。
菊も忍者刀を出した、そして苦無も出しそれぞれ右手と左手に持った。そのうえでだった。
「こっちはいいからよ」
「早く出て来たら?」
こう相手に言うのだった。
「いつもこうした出方だけれどな」
「今回もそうなのよね」
「ああ、いつもか」
「いつもなのか」
ここで薊達とは別の声がした、それも二つ。
その二つの声がだ、こう言って来たのだった。
そうしてだ、怪人達が出て来た。その怪人達は。
一人はザリガニ、そしてもう一人は鰐だった。ザリガニの色は赤、そして鰐の色は青だ。そのそれぞれの怪人達が出て来てだ。
薊と菊の前に出て来た、そのうえで。
怪人達は薊と菊にだ、こう言って来たのだった。
「じゃあ今からな」
「はじめるか」
「出て来るまでは勿体ぶってるけれどな」
「今回はあっさり戦いに入るわね」
「まあそっちの方がな」
「私達としてもいいけれどね」
二人はこう言ってその怪人達を見据えた、そのうえで。
薊がだ、二人の怪人達に問うた。
「で、どっちがあたしの相手をするんだい?」
「俺達のうちどちらがか」
「ああ、どっちなんだい?」
「私も聞きたいわね」
菊も怪人達に問う。
「どっちが私の相手をするのかしら」
「そうだな、じゃあな」
「ここは公平に決めるか」
怪人達は顔を見合わせてだった、そのうえで。
ザリガニに似た怪人は鰐の怪人にだ、こう言った。
「じゃあ俺が赤いのやるか」
「同じ色だからか」
「ああ、ロブスターの怪人の俺がな」
こう楽しそうに言うのだった、そしてここで。
ロブスターの怪人は自分の両手、その鋏の両手を観てだ。鰐の怪人に対してこう言った。
「じゃんけんで決めようにもな」
「ははは、御前の手だとな」
「絶対に負けるからな」
「鋏だからな」
「じゃんけんになっても一つしか出せない」
自分でもそれがわかっている言葉だった。
「だからな」
「それでだな」
「ここはしても意味がないだろ」
「そうだな、じゃあそれなしで決めるしかないからな」
「色で決めようと思ったがな」
「そうだな、俺は色違いになるけれどな」
鰐の怪人は自分の青い身体、身体は人と鰐の間の子であり顔は完全に鰐のその身体でだ。こう言ったのだった。
「黄色いのをやるか」
「そっちにしてくれるか」
「わかったぜ、じゃあ御前は赤いのをやれ」
鰐の怪人は薊を見つつ相棒に告げた。
「それでな」
「やるか、じゃあ」
「ああ、今からな」
こう話してだった、怪人達は。
それぞれ薊、菊に正対した。薊と菊もそれを受けて。
その怪人達と対してだった、薊はあらためてだった。
構えてだ、自身の相手となるロブスターの怪人に告げた。
「あんたも倒すぜ」
「他の奴等も倒してきたんだったな」
「ああ、そうさ」
その通りだとだ、薊は笑ってこう返した。
「あたしが倒したんだよ」
「そうだな、まあ仇討ちって訳じゃないけれどな」
「それでもなんだな」
「あんたは俺が倒すからな」
怪人は軽い仕草をしつつ薊に返した。
「覚悟しろよ」
「覚悟はしないさ」
それはないというのだ。
「そっちの覚悟はな」
「戦う覚悟はしてるんだな」
「そうさ、そのことを言っておくな」
「そうか、じゃあな」
「闘おうか」
こう話してだった、薊は怪人との闘いに入った。そして菊と鰐の怪人もだった。
対峙していた、少女達は通天閣においても戦わねばならなかった。その理由は彼女達の誰も知らなかった。
第四十話 完
2014・11・24
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