IS<インフィニット・ストラトス> ―偽りの空―
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Turn
第四十四話 二次移行
『ちっ、面倒な』
先ほどまで相対していた相手……箒の機体が突如として光を放ち始めたことにエムは舌打ちする。
この状況でISに起こる変化といえば、考えられるものは数えるほどしかない。なんらかの機能が解放されたのか、あるいは二次移行を果たしたのか。可能性は限りなく低いが単一仕様能力に目覚めたということもあり得る。本来は二次形態から発現する可能性のあるものだが、織斑一夏という前例と機体を作ったのが篠ノ之束である以上はそれも不思議ではない。
だが、いずれにしても目の前の敵の戦力が跳ね上がるのは間違いないことはエムも確信している。その上でただ面倒なだけだと言い切ったのだ。
傲慢ともとれるがそれは自身の能力に対する絶対の自信であり、先ほどまで福音との戦いを見ていた中で箒の実力自体は現時点で驚異に値しないと判断したからだ。ましてや、相手はすでにエネルギーが枯渇している。
もっとも、エムが篠ノ之束という存在についてもう少し理解が及んでいれば多少なりとも警戒したのかもしれないが……。
そしてその余裕は思いもしないところから崩されることとなる。
新たな光が柱となって海中から現れたのだ。
『一夏? 一夏ぁ!』
海中から上がった光は二本。確信はなかったがそのどちらかに一夏がいると信じ、そのもとに向かおうとする箒。しかしそれを黙って見過ごすエムではなく、手元の射撃武器『星を砕く者』による妨害を行う。もちろん下手に直撃させて、束の妹ということで利用価値のある箒を殺すつもりはなかったので、明らかに手加減したものである。それでもエネルギーの尽きた箒を行動不能にするには十分な一撃であった。
そう、本来であれば。
しかし確かに仕留められるはずのその一撃を受けてなお、箒は止まらずにそのまま光へと辿り着き海へと潜る。
あり得ない出来事にエムは一瞬の動揺を見せるもすぐに持ち直し、追撃に向かう。
しかし、さらにあり得ないことは続く。
(あれは……西園寺さん?)
箒が潜った先にいたのは、彼女との思いとは裏腹に紫苑であった。不思議なことに海底へと沈み切らずに停滞し、光の柱を発している。
一夏ばかりを気にかけていた箒にとっては当てが外れたという思いはあったものの、箒はその姿を見た瞬間に今までの自分の考えや思いがすべて吹き飛んだのを感じた。
身を挺して守ってくれた。自分は決して、そのように守ってもらえるような態度をとった覚えはないにも関わらず。今回だけではない、思い起こせば『西園寺紫音』という存在は遠まわしに自分のことを気にかけてくれていた。その場では気付かなかった……いや、そう思いたくなかったその事実を今、ようやく箒は理解した。
(もしかしたら姉さんも……)
紅椿という唯一無二の贈り物を譲り受けてなお、箒は束の思いを信じ切ることができなかった。だが今、彼女の中で何かが変わった。一夏がすべてだった彼女の世界が今、広がっていく。
そして箒の手が紫苑に届いた瞬間、光は収束する。同時に巻き起こるエネルギーの奔流。
それは『絢爛舞踏』、一夏に対する箒の強い思いにより目覚めた唯一無二の力……単一仕様能力。しかし世界の広がった箒にとって、この力はもはや一夏のためだけに使われるものではない。
白式の『零落白夜』のエネルギー消滅能力と対をなす、エネルギー増幅能力。先ほどエムの攻撃に耐えることができたのも、微かに残っていたエネルギーをこの能力により一気に増幅させたからだ。そして今、そのエネルギーは紫苑の天照へと渡る。本来であればコアのシンクロなどが必要で困難が伴うエネルギー譲渡、それをただ触れるだけで一瞬で。
ちょうどそのころ、相互意識干渉から目覚めつつあった紫苑は箒の姿と自分の現状を認識して一瞬驚愕するも、すぐに落ち着きを取り戻す。そして未だ混乱した様子の箒を安心させるために優しく微笑みかけた。
『ありがとうございます、箒さん』
このとき、改めて箒は思い知った。この人を遠ざけていたのは自分だったのだと。
『あの……その』
そのまま何かを言おうとする箒だが、紫苑はそれ以上は不要とばかりに人差し指を彼女の口元に運び、言葉を遮る。それは、今までのことは気にしていないし謝る必要も無い、という彼からのサイン。
『今は、織斑君を。私は……彼女達を止めます』
また、同時に彼は一夏が自分と同様に海に墜とされたことも認識しており一刻も早い救出が必要だと感じていた。
『! わ、わかりました……紫音さん!』
ただ名前を呼び合うだけの行為。それだけで箒は吹っ切れた思いだった。先ほどまでの暗鬱とした表情は既になく、ただ鋭い目線でもう一つの光柱へと向かう。その口元に微かな笑みを浮かべながら。
そしてそれは紫苑も同じだった。
束の妹、頼まれたから、切っ掛けはそんな程度ではあるがそれでも数ヶ月の間に目が離せない存在になっていた。もっともそれは単純な好意では決してなく、危なっかしいからというような、曖昧なものだったが。それでも悪感情をもっていたかといえばそうではない。
彼もできれば、箒とは蟠りなく接したかったのだ。そしてそれは今叶った。
束の存在がある程度抑えていたとはいえ、以前は負の感情が溢れていた紫苑。しかしその負の感情が彼の原動力となっていたのも事実だ。
しかし学園に入りやがてゼロを経て、それは正へと反転した。黒が白になるように……。
今は彼の正の感情が力となる。そしてそれは彼の機体である天照へも進化を促した。
二次移行……新たな力の発現である。
一夏のもとに向かう箒を一瞥し、すぐさま自身は海上へと浮上する。
『貴様、なぜ……それにその姿は……』
すぐにエムの声が聞こえてくる。
彼女が指摘したように、紫苑の姿は先ほどまでとはやや変化している。
その身を纏っていた装甲は、今まででも通常よりは薄い程度だったにもかかわらずさらに薄くなった。肩部は露出し、腕部も肘まわりに薄い布のようなものがある程度。スカートタイプの装甲は相変わらずであり、もはやそれは鎧というよりもドレスのようである。それでいて淫靡な妖艶さは感じられず、むしろ神々しい雰囲気を纏っている。
また一方で、背後のフィンがやや大きくなり薄い光を発していた。
自身の姿を客観的に見ていないため今は平気だが、後に紫苑が悶絶するのは間違いないくらいにその姿は美しかった。
『まぁいい。もう一度墜とすまでだ!』
海に沈んだはずの紫苑が再び現れたことに一瞬動きを止めたエムだったが、すぐさまそう言い放ち攻撃に移る。
スターブレイカーとビットによる同時攻撃。以前のセシリアのように同時行動ができないということはなく、完全にビットを制御しながらの本体との波状攻撃だ。
しかし、今度こそエムは驚愕することになる。
紫苑が背後のフィンで自身を包み込み、その後にエムから放たれた光線を振り払うように動かす。すると、彼に殺到した全ての光線が……弾かれたようにあらぬ方向へと拡散していったのだ。
『なっ!?』
自分のすぐ横を掠めるように通り過ぎる、自身が放ったはずの光線。
『八咫鏡』、二次形態で新たに使用可能となった武装である。その性質はまさしく、鏡。光学系攻撃やエネルギー波など実体を持たない攻撃の反射だ。
『馬鹿な、リフレクトシールドだと!?』
ある意味で、エムが狼狽するのは当然なのだ。防御用の武装というのは確かに存在するし、エム自身も使用可能である。だがそれはシールドタイプであり、あくまで威力を減衰したりあるいは無効化するものである。リフレクトシールド自体は、第三世代機用の装備として理論上は可能ということで構想はあったものの、実用化には至っていないはずだったのだ。
それが今、存在する……ブルー・ティアーズやサイレント・ゼフィルスのように光学系が主武装となる機体にとってまさしく天敵といってもいい武装だった。
そんな八咫鏡だが、当然万能ではない。反射位置を思い通りにするには、膨大な演算能力が必要であり戦いながらそれを行うのはまず不可能だ。先ほどエムの方にはじき返したのは偶然でしかない。つまり、一人で戦うならまだしも複数人の場合は味方に当たる可能性もあった。
また、天叢雲剣の機能を使用するときと同様に少量ながらもシールドエネルギーを消費する。直撃するよりはマシであるものの、それでも持久戦となった場合は間違いなく先にエネルギーが尽きることになるだろう。
『ちぃっ、ならば!』
そしてその特性上、物理的攻撃には無力だ。
それを瞬時に見破ったエムは、スターブレイカーに備わったもう一つの機能である実弾攻撃に切り替える。
それはある意味で正解なのだが……この場では無意味だった。
紫苑のもとに迫った弾丸は全て彼に届く直前で一瞬、停止した。そして慣性を失ったそれは力なくただ海へと落ちていく。
『何だ……何なんだお前は!』
『八尺瓊勾玉』、二次形態で発現した最後の武装。それは使用者の半径5メートルに効果を及ぼす刹那の慣性停止。
第三世代兵器にアクティブ・イナーシャル・キャンセラーというものがある。これはラウラのシュバルツェア・レーゲンに搭載されている慣性停止結界であり、自身が指定した対象を文字通り停止させる。
しかし八尺瓊勾玉はそれとは似て非なるものだ。
AICは、限界はあるものの対象を任意の時間停止させ続けられるのに対し、八尺瓊勾玉は一瞬だ。しかし複数停止が困難なAICとは違い、範囲内に入ったもの全てを対象として慣性を自動、もしくは故意に奪うことができる。
その正体はナノマシン。
それ故に例えミサイルであっても、単純なものであれば推進力を奪い無力化することも可能である。
だが、やはり万能ではなく他の武装同様にシールドエネルギーを消費する。さらには効果が一瞬であるために目標の長時間の停止は困難である。
そして、やはり光学系の攻撃には無力であるし近接攻撃にも効果が無い。
だが、彼の武装は一つではない。
つまり……。
『はぁっ!』
『ふっ!』
エムのナイフによる攻撃を躱し、紫苑は天叢雲剣で斬りつける。それをエムも身をよじってなんとか回避するがもはや余裕は欠片もない。
もとより、中~遠距離で戦うことを想定した機体でありエム自身もそうした戦い方がメインである。剣一本しか武装がなく、また生身においても常日頃から武術を嗜んでいた紫苑に及ぶべくもない。
そう、天照に新たに発現した力の本質は……近接戦闘を半ば強制するものだった。
天照の防御を抜けるには、慣性停止の及ばない自身での近接攻撃か圧倒的質量による遠距離攻撃によるエネルギー切れを誘うしかない。
いや、天叢雲剣のような遠距離からの近接攻撃……剣撃や、直撃させなくても爆風でダメージを加えることが可能な威力の攻撃……例えば更識楯無の愛機ミステリアス・レイディによるクリア・パッションなどならあるいは可能かもしれないが。
しかし、それでも相手の選択肢を大幅に狭めることができるのは間違いなかった。
ところが今、二人の戦闘は拮抗しており紫苑はエムに決定打を浴びせることができずにいた。なぜか……それは単純に敵がエムだけではなかったからだ。
『La、lala』
天照のあふれ出るエネルギーに感化されたのか、先ほどまで蹲って動かなかったはずの銀の福音が途中から動き出し、遠距離から攻撃を加え始めたのだ。
それでなお、拮抗したのである。
理由は単純だ、天照の新たな力が銀の福音の攻撃を全て無効化したからだ。とはいえその力の行使により紫苑の行動も制限されてしまう。それがこの拮抗した状態を作り出していた。
(とはいえ、これじゃジリ貧だし、先にエネルギーが切れるのは僕の方か。なら……!)
このままでは再びエネルギー切れで負けると判断した紫苑は、先に銀の福音を墜とすことを決断する。
『はぁっ!』
紫苑はエムの不意をつき、威力ではなく衝撃によるノックバックを重視した掌底を当てた。
『くっ』
そしてエムが硬直した一瞬の隙をつきその場を離脱、そのまま銀の福音へと肉薄した。
接近を許した銀の福音も持ち前のスピードを駆使して距離を離そうとするが、二次移行を果たした今、瞬間的な加速では紫苑が上回っていた。一閃、二閃……近距離用の武装をほとんど持たないためにまともな抵抗ができない相手を、一気に畳みかける。
ただ効率のみを追求した機械的な動き、しかしそれ故に紫苑にとっては読みやすく、結果的に銀の福音はあっさりと窮地に陥った。
紫苑が、そのまま勝負を決める……そう思ったときだった。
突如として銀の福音が眩いばかりの光を発したのだ。それは忘れるはずもない、紫苑自身に起こったものと同じ……二次移行だった。
(厄介な……、できればこのまま無力化したかったのに!)
『き、さまぁ!』
ダメージのほとんどなかったエムも復帰し、さらなる激情を紫苑へと向ける。一度銀の福音から距離をとり、先ほどより激しい攻防になる、と紫苑が覚悟を決めたところで再び事態は動く。
『西園寺さぁん!』
紫苑と同じく、海へと沈んでいた一夏が箒によって救出されたのだ。
しかも先ほど負ったはずの傷まで癒えて。
紫苑がエムによって墜とされた際、彼は一夏ほど怪我は負っていなかった。ただ絶対防御が発動してしまい、その衝撃による意識障害が起こったのだ。そのため復帰時にはそれほど支障なく動けているのだが、その際のわずかな傷は当然そのまま残っている。
だが、一夏は違った。重傷とも言える怪我を負っており、紅椿によるエネルギーの補給があったとしてもまともに動けるものではなかった。しかし、今はその面影はない。
ISによる生体再生……それはかつて『白騎士』のみに与えられていた能力。
仮に紫苑が一夏の怪我のことを知っていれば、その事実に気付くことができたかもしれないが、それが叶わぬ以上この場にその異常を指摘できる者は存在しない。
『よかった、無事だったんですね』
一夏の姿を見て安堵の声を漏らす紫苑。もちろん、その間も敵に対する警戒は解いていないが、最大の懸念だった一夏の無事を確認できた以上その喜びも一入だ。
そして、その姿で彼も直感した……一夏も二次形態に至ったと。
一夏の左手には、彼の新たな力である『雪羅』があった。操縦者の意思に合わせて変化することができるそれは、今はエネルギー状の爪を顕現させている。
『はい……こいつは俺が抑えるので、西園寺さんはあいつを止めてください!』
『わかりました。箒さんは織斑君のサポートについてください』
『……はい!』
覚悟を決めた表情をしながら言い放った一夏は、今までの様子からは想像できない紫苑と箒のやりとりを不思議に思ったが、すぐに気を引き締め直して眼前の相手と対峙した。
『どいつもこいつも……死に損ない共がぁ!』
『La……』
そして戦いは終局へと向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『……ルス、……まえ』
先ほどまで暗闇の中に一人囚われていた彼女の耳へ、何者かの声が聞こえてくる。
『ナターシャ・ファイルス、聞こえていたら応答したまえ』
徐々にはっきりとしてきた意識で、それが自分に向けられたものだとようやく気付く。そして、それがどうやら自分の上司からであることに思い至る。
『……は、はい! こちらナターシャ・ファイルスです!』
『ふむ、ようやく通じたか。状況は理解しているかね?』
ナターシャは上司に問われ、初めて自分の置かれている状況に気が付いた。
彼女は先ほどまでハワイ沖で試験稼働をしていたはずなのだ。それなのに機体が彼女に示す情報ではここは日本近海、しかも目の前では見知らぬISがこちらに対して身構えている。その上すぐ近くでは別の、同じく彼女の知らない機体同士が戦闘を繰り広げている。まるで状況が理解できないナターシャだが、眼前の操縦者がいつ自分に攻撃を仕掛けてきても不思議ではないだろうことは、彼女にも察することができた。
『これは一体……』
『ふむ、混乱しているところ済まないが、君がこれからすべきことは単純だ。すぐにその機体をコアごと自壊させたまえ』
『なっ、どういうことですか!』
状況を理解できていないナターシャは、上司のいきなりの命令に思わず感情を露わにする。
『その機体は二次形態に達した……そしてそのデータも採集できた。機体は惜しいがこのまま墜とされればIS学園……つまりは日本が機体を接収するだろう。これ以上IS分野において日本が利するようなことを看過することはできん』
一方彼女の上司はただ淡々と、冷徹に言葉を続ける。
『それに所詮は試験機、データさえあればいくらでも代替は可能だ』
それはナターシャにとって理解はできても、到底納得できない命令だった。
彼女はテストパイロットに任命されてからこの機体をまるで自分の子供のように可愛がってきた。単なるISと操縦者という関係ではない……故にその命令は親に子を殺せと言っているのと同義であった。
『なら……私がこの場を脱することが出来ればこの子は死なずに済むんですね』
『その可能性は限りなく低い、目の前の相手は異常だ!』
『それでも!』
『やめ……』
ナターシャは上司の言葉を待たずに通信をOFFにする。
仮に逃げることができても、国に戻れば自分は処罰されるかもしれない。それでも、この機体が無事である可能性があるなら、と彼女は覚悟を決めたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一夏と箒がエムと戦闘を開始した一方で、紫苑は目の前の状況に戸惑っていた。
(動かない……?)
二次移行により銀の福音から感じる圧力は増している。にも関わらず、再び動きを止めてしまい一切攻撃をしてこなかったのだ。
紫苑としてはその隙をつくことも考えたのだが、二次形態でどのような力を得たのか想像もつかないため、一定の距離で様子見をすることにしたのだ。
だがそのわずかな時間が銀の福音……ナターシャの覚醒と覚悟をもたらした。
やがて、事態は動き出す。先に動き出したのはナターシャだ。二次形態より発現したエネルギーの翼が容赦の無い攻撃を繰り出す。
それは先ほどまでの機械然としたものから、明らかに感情がある人間のものへと変化していた。
そして、それがさらに紫苑を動揺させる。
『もしかして……意識が戻っているのですか?』
『この子を死なせる訳にはいかないのよ!』
迫るエネルギーの弾雨を八咫鏡で逸らしながら呼びかけた紫苑だが、返ってきた答えは彼に理解できるものではなかった。
ナターシャは半ば混乱しながらも、必死に離脱を試みる。しかし紫苑もこんな状態の相手を逃がした場合、どんな被害が起こるか想像できないため、天叢雲剣の伸縮を利用してとにかく退路を遮るように動いていた。
『邪魔をしないでぇっ!』
『はぁっ!』
そしてその決着はすぐに訪れる。
紫苑を排除しなければ離脱は困難だと判断したナターシャが、抗戦を選んだ……その時点で勝敗は決した。暴走時の記憶があれば違う道があったかもしれない。しかし、彼女が使用した攻撃は既に紫苑にとって既知のものであり、彼はそれを無効化する手段を有していた。
結果、彼の剣はナターシャへと届きそのエネルギーを全て刈り取った。
『おね……がい。この子を、たす……けて』
力を失い、崩れ落ちるナターシャを思わず受け止めた紫苑。しかし懇願するように紡がれたナターシャの言葉に、彼の疑問はさらに深まるのだった。
後書き
更新が遅くなって本当に申し訳ありません。
次話もある程度は書き上がっているのですが、
定期的な更新は難しい状況です。
まずは早期の次回更新を目指します。
ページ上へ戻る