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片目の老人

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3部分:第三章


第三章

「その通りだ。我等は決して逃げはしない」
「そうか、わかった」
「それならだ」
「我等もまた」
「全力で戦おう」
 彼等も長の言葉を受けてだ。戦いを選択した。そうしてだ。
 戦いがはじまった。その中には当然ながらシグナルもいる。
 彼は装飾のない鎧と兜、それに剣と盾で武装している。北欧の標準的な武装である。
 その武装でいつもの様に戦う。しかしだ。その動きは普通ではなかった。
「何だ、これは」
 そのことに本人も気付いた。何とだ。
 普段よりも素早く身軽に動ける。さらにだ。
 疲れない。全身に力がみなぎる。敵の動きもよく見える。それでだった。
 戦場で縦横無尽に動き回りだ。敵を次々と倒していく。順調にだ。
 最早今の彼にはだ。敵の数なぞどうということはなかった。
 次々に倒していってだ。戦場に駆けた。
 戦いはだ。彼の活躍により彼の部族の勝利に終わった。倍の数だったがそれでもだ。それをものともしない活躍だった。
 勝利を収めてだ。彼等の部族は満面の笑顔で村に戻りだ。そこでだった。
 蜜酒やビールを掲げ羊の肉や魚で乾杯する。その中でだ。
 長がだ。ビールを飲みながらシグナルに問うのだった。
「今日は違っていたな」
「動きがですか」
「いつもよりも遥かによかった」
 こう言うのだった。
「普段からそれ程悪くなかったがな」
「あの戦いの時は」
「まるで別人だった。とにかくよかった」
 そのシグナルを見ながらの言葉だ。
「本当にどうしたのだ?」
「いえ、別に」
「たまたま調子がよかったのか」
「はい、普段よりもかなり」
 まさにだ。そうだというシグナルだった。
「それだけです」
「そうか、それではだ」
 それを聞いてだ。長はこう言った。
「あれだな。オーディンの加護があったな」
「オーディンの?」
「そうだ、オーディンの加護がだ」
 それがあってのことだという長だった。
「それでだ。そこまで動けたのだ」
「そうだったのですか」
「そうとしか考えられないな。しかしだ」
「それはいいことですね」
「戦士冥利に尽きる」
 長は笑顔で話した。
 
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