世にも不幸な物語
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第九章『過去的な位置』
幻想郷の夕暮れは外の世界と違って綺麗だ。空気が綺麗だからだろうか、まだ日は完全に堕ちていないのに星が見える。こんな綺麗な風景を見られたから幻想郷に落とされてよかった、と輝は感傷的な気分になってしまう位に空が綺麗だ。
「空なんて見てないで動きなさいよ」
「あ、すいません」
輝は宴会の料理を運んでいる最中だ。もちろん生前料理をやっていた屍に作っている。
「それにしても、アンタの能力って便利ね」
今は五分間能力が使えない状態だ。本当に手伝ってくれるかどうか不安だったが約束通り手伝っている。
「そうですか?」
「そうよ。人並みかと思ったら私以上に美味しい料理出来るし、屍の特技って言うのかしら。それってアンタが自分で探して出してるの?」
「はい。ちゃんと料理が出来る人を探して出してます」
「へぇ~意外ね。適当に出してると思ったわ」
「ははは」
確かにそう見られても仕方ない。人や鳥、馬だったら探していると分かるが、人で何かに特化している人を探して出しているなんて誰が思うだろうか。輝自身も幻想郷に来てからこのことが分かったのだから。
「ふぅ、一通り出したかな」
最後の料理を出し終えて一息ついた。宴会だから大勢人が来てかなり忙しいと予想していたのだがそうでもなかった。来ているのは、白黒の魔法使い見たいな人・眼鏡をかけた銀髪の青年(輝たちより年上)・酔っ払いの少女・新聞記者の烏天狗・脇巫女・ボケしかしない友・新八もどきのめがねの七人。輝を含めて計八人しかいない。
「輝は休んで良いわよ。当分料理は困らないし」
「では、お言葉に甘えて」
「所で」
「なんですか」
「あの二人はどうしたの」
霊夢が指さした方を見るとお賽銭箱の前で、燃え尽きて真っ白な灰になっている風と零の姿が見えた。
「さぁ、知りたくもありません。あんな灰」
「なにげに酷いこと言うわね。それより何とかしなさいよ。お酒が不味くなるわ」
「霊夢さんも酷いこと言いますね」
確かにあの落ち込みようはどうにかしないと。なぜ落ち込むのだろう。始まる前はあんなに浮かれていたのに、おかしいにも程がある。
「もしもしお二人さん。どうかしましたか?」
二人に近づき声を掛けてみたが反応が無いどうやら屍のようだ。
二人を仲間にする
風を仲間にして零の墓を作る
零を仲間にして風を燃やす←ピッ 決定
「おいっ!何で俺だけ燃やされんだよ!!」
風が蘇った。
しょうがないから話す←ピッ 決定
風を殴る
風を斬る
無視して零に落ち込んでいる理由を聞く
「はぁ~・・・なんで落ち込んでんの?お前ら」
「色々ツッコみたいが、まぁいいだろう。無かったことにしてやる」
「選択ミスったな。零にしとくんだった。やり直せねぇかなコレ」
「なんでだよッ!」
「いや・・・ほら・・・だって・・・ムカつくから?」
「悪かったな!」
「うわ、それが人に謝る態度ですか。貴方が悪いのに逆ギレですか。いやだわ~、人としてどうかと思いますよ?」
「てめっ・・・・。すいませんでした」
「なにそれ?謝ってんの?謝るんなら土下座して額を地面に擦り付け『皆さんと同じ地面を立っていてすいません』と言いながら頭を垂れろ」
「お前いつからSキャラになった!?」
何時もの風に戻ったようなので本題に入ろう。
「なんで落ち込んでいる?」
「スルーすんな!たくっ・・・・宴会に来ていねぇんだよ」
「来ていない?」
「妖夢とか美鈴とかウドンゲとかが」
「つまり・・・お前の嫁たちが来てないのか」
「そうゆうこと」
道理で落ち込んでいる訳だ。二人は東方の人達が来るのを楽しみにしていたのにたった五人しかいないとなると落ち込むはずだ。
「零も咲夜っていう人が来ていないから落ち込んでいる、と」
「そういうことだ」
「咲夜はどうして来ないんだ。何故こないんだ・・・・・」
「ネガティブになるほど落ち込んでんのか。元気出せよお前ら」
「輝よ・・・俺らにとっちゃぁ重大なことなんだ。元気がでんよ」
「あっそ」
「咲夜ぁ~~」
深い溜息を突き再び座り遠くの方を見だした風。もう輝ではどうすることも出来ない。暫くほっといた方が良さそうだ。
「そんじゃ、俺は向こうにいくから」
「「はぁぁ」」
言葉は耳に入っていないようだ。
取り敢えず霊夢に二人はどうにも出来ないことを報告するしかない。今の二人に言ったって上の空だろう。
霊夢の所に戻ろうと向かうとき、肩を叩かれ振り向いた。そこには箒を持っていて白と黒をメインとした服を着た魔法使いらしき女性がいた。
「よっ、外の世界から来た人間ってのはアンタのことか?」
「はい。そうですけど」
そう輝が返事を返すと、白黒の魔法使いは笑顔になり手を差し出した。
「そうか、話は文から聞いているぜ。私は霧雨 魔理沙。よろしくな」
「どうも、俺は輝です」
手を差し出されたから手を握ろうとしたが女性の手をあまり握ったことが無い輝は一瞬迷ったが、握手しないと失礼だと思い魔理沙の手を握った。初めて握る女性の手。輝はほんの少し照れくさくなった。
ふと魔理沙の顔を見るとさっきの笑顔から可笑しくて笑っている顔になっていた。
「何が可笑しいですか?」
「だって握手しただけで頬を赤くしているお前を見ると可笑しくて」
「えッ!?」
「くっはっはっはっはっはっは、文の情報通りだぜ。まさかここまで初心だったとは驚きだ」
まさか初心の情報もあるなんて。恐るべし烏天狗。別に初心ではないと思うのだが。と輝は思った。
「所で、あの二人もお前の連れか?」
「はいそうです」
「ならどうにかしてくれよ。あんな辛気臭い顔でいられると酒が不味くなる」
霊夢同様酷いことをさらりと言う。
「無理ですよ。今さっきまで俺が元気付けようとしましたが、美鈴だの咲夜だのが来ていないから元気がでないそうです」
「めいりん?さくや?誰だそりゃ」
「え?」
輝は魔理沙の返事に驚いた。風や零の話を聞いた限りでは魔理沙と咲夜たちとは面識があるはずなのに、魔理沙の反応を見ると聞いた事ないと言わんばかりの反応だ。
(ちょっと待てよ。異変が起きると東方のキャラクターが増えていっているんだよな。魔理沙さんの様子をみると紅魔館変だったかな?がまだ起きていないのか?)
確信を得るために魔理沙に聞くことにした。直接紅魔館変の事を聞くのではなくそれに近いことを聞く。もし輝の仮説が正しければ、今輝たちは幻想郷の過去的な時代にいることになる。謝ってこれから起きることを言ってしまえば東方の正しい物語が変わってしまう恐れがある。
「魔理沙さん、聞きたいことがあるんですが」
「ん?なんだ」
「ここ最近、変なこと起きていませんか?」
「変なこと?あ、魔法の森で変な茸を見つけたぜ」
「茸はどうでもいいですよ。(少し気になるが)」
「茸以外で変なこと・・・・・・。輝たちが来たこと」
「(変な事に含まれているのか)他には無いですか?例えば幻想郷全体にとか」
「幻想郷全体?今まで起きたこともないぜ」
確信を得た。今輝たちがいる時代は一番初めの異変が起きる前の幻想郷だ。だから魔理沙は咲夜と美鈴の名前を知らない訳だ。
「こんな事を聞いてどうしたんだ」
「いえ、妖怪とかいる世界だから変なことが一つや二つ起きていないかな~と思っただけです」
「そっか。外の世界には妖怪はいないからな」
「羨ましい限りです」
「羨ましい?」
「俺、妖怪好きなんですよ。だから初めて妖怪を見たとき興奮しました」
「妖怪が好きって、輝は変わっているな」
「よく言われます」
取り敢えずあの二人に元気づける情報を手に入れた。早く教えないと霊夢がなんか言ってきそうだ。
「輝!なに魔理沙と話してんの。早くあの二人を何とかしなさいよ」
噂をすればなんとやら。痺れを切らした霊夢が輝に文句をしに来た。
「あ、霊夢さん」
「よっ」
「魔理沙なに輝の邪魔をしてのよ」
「邪魔はしていないぜ。話しているだけだ」
「まったく・・・。輝もなにのんきに話してんのよ」
「大丈夫ですよ。いい情報が入ったんで今から今からあの落ち込んでいるバカどもに教えに行くところです」
「ならいいけど」
霊夢は若干疑うような顔をしていたが納得してくれたようだ。どれだけあの二人に嫌気を刺していたのだろう。
「輝」
「なんですか」
「敬語やめてくれないか?敬語で話されるとなんか変な気分だぜ」
「そうそう。私も敬語やめてって言おうとしてたのよ」
「え、あ、でも・・・」
「私なら構わないぜ」
「私もよ。これからも敬語で話されるのは勘弁だわ」
「いや~、癖みたいなもので早々には出来ませんよ」
「なら仕方が無いわね。ま、初対面の人にいきなりタメ口の方よりマシね」
「ははは」
一旦霊夢たちと離れ、未だに落ち込んでいる風の元に来た。
「おい。いいニュースだ」
「「・・・・」」
またしても反応が無い。呆れるほどの落ち込みっぷりだ。コレだけ落ち込んでいると物凄く会いたかったのかがよく分かる。
周りに聞こえないように、二人の耳元で囁いた。
「まだ幻想郷で異変は起こっていない」
「者共武器を持てぇ――ッ!!」
「オォォ――ッ!!」
「ちょ、お前ら人のはな――」
「敵は紅魔館にありぃぃ!!」
「オォォ――ッ!!」
「人の話を聞けぇい!!」
ドォスッ!×2
「ぐはっ!」
「ぐげぇっ!」
輝の鉄鎚が綺麗に入りうずくまる二人。
「落ち着いた?」
「な、なに・・・しやがる・・・」
「そ、うだぞ・・・輝・・・。お、俺たち・・・・わな」
「お・ち・つ・い・た・か・?」
「「はい。落ち着きました」」
「ならよろしい」
輝は風と零に魔理沙から聞いた情報とそこから導かれる過程、そして輝が自分なりに推理をした結果を話した。
「タイムスリッパって奴か」
「零、古典的なボケをすんな」
「俺たち的にすればそうなる。つまり俺たちはタイムスリッパをして過去的な位置に来ている」
「おいっ!輝もノッかんなよ!」
「だから咲夜が来ないのか」
「そういうことだ」
「無視すんな!!」
「ていうことは、俺らが下手に動けば物語が変わる恐れがある・・・と」
「その通り。だから紅魔館とかいう場所には絶対に行くな」
「残念・・・けどしゃぁないか」
「諦めるしかない」
飲み込みが速くて助かる。
いつもふざけたことを言う二人だけど、真剣な話をするとちゃんと聞いてくれる。そこら辺の区別はしっかりしている。
「しかし、SFみたいだな。タイムスリッパって」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「ん、どうした?」
「風・・・今のボケはさすがにねぇよ」
「頼むからボケをしないでくれ」
「おいおいおいおいおい!今さっきまでお前らだって使っていたろっ!」
「記憶にございません」
「いつ?何処で?何時何分何秒?地球が何回周った日?」
「お~ま~え~ら~」
「んん?どうしたのかな?」
「なんか言いたまえ。風殿」
「いい加減にしろ―――――ッ!!」
風の壮大なツッコミが星々輝く夜空に響き渡った。
後書き
紅魔館編等々をやりたかったので、異変がまだ起きてない幻想郷にしました。
文や萃香が最初から入るのは、私自身の設定なので深くツッコまないでください(汗)
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