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戦国異伝

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第二百話 青と黒その二

「迅速にな」
「迅速に、ですな」
「兵を動かし、ですな」
「そして攻めて退き」
「それを繰り返し」
「徐々に、ですね」
「それがこの度の戦じゃ」
 上杉とのそれだというのだ。
「押さば引く」
「引きつつですな」
「戦う戦ですな」
「そういうことじゃ、では夜が開ければ上杉が来る」
 まさにその時にというのだ。
「そしてその時にじゃ」
「戦がはじまりますな」
「また大きな戦が」
「さて、この戦も時間は長くかかるわ」 
 長篠の時の様にというのだ。
「丸一日やもな」
「再びですか」
「一昼夜の戦になりますか」
「そしてそれだけの戦になり理由もある」
 こうも言う信長だった。
「天下を決める戦だからのう」
「それだけにですな」
「激しいものになり」
「そして長い戦になる」
「一昼夜かけた」
「そうじゃ、覚悟はよいな」
 信長は長篠の時の様になろうともとだ、森と池田に言うのだった。そうした話をしてそのうえでなのだった。
 信長は東に光を見た、それを見て言った。
「ではこれよりじゃ」
「はい、では」
「これより」
「法螺貝を鳴らせ」
 こう命じるのだった。
「よいな」
「畏まりました」
「今から」
 護衛役の毛利と服部が応えてだ、そのうえで。
 法螺貝が鳴らされた、それは上杉の方でもだった。
 両軍はほぼ同時に法螺貝を鳴らした、これが戦の合図となった。
 謙信はこの法螺貝が響く中でだ、馬に乗ってだった。
 兵達にだ、高らかに告げた。
「それではです」
「はい、今より」
「戦ですな」
「車懸かりの用意は既にしています」
 それでというのだ。
「攻めるぞ」
「それでは殿、それがしも」 
 兼続が謙信に応えて言う。
「戦に加わります」
「はい、そして武勲を挙げるのです」
 謙信は兼続に顔を向けて言葉を返した。
「これより」
「ではこれより敵の中に入ります」
「わたくしについてくるのです」
 謙信に、というのだ。
「そして共に敵と戦うのです、ではいいですね」
「畏まりました」
 兼続は謙信と共に馬を飛ばした、そのうえで。
 戦の場に身を現した、今まさにだった。
 戦がはじまろうとしていた、車懸かりの陣がだった。
 織田の軍に次々と攻める、その中で。
 謙信は自ら刀を手に戦の場に出る、その彼を見てだった。
 先陣を率いる家康にだ、徳川の兵達が言った。
「殿、来ました!」
「上杉謙信です!」
 こう主に言うのだった。
「敵の総大将自ら来ました!」
「ここで!」
「うむ、見えておる」
 家康もだ、こう彼等に応える。
「しかとな」
「凄まじい速さですな」 
 家康の横にいる本多正信も謙信を見つつ言う。
「しかも勢いが」
「並のものではないな」
「恐れぬのでしょうか」
 こうも言う本多だった。 
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