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ドリトル先生と学園の動物達

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第十幕その六

「緊張したよ」
「先生こうしたことははじめてだから」
「女の人に自分から誘いをかけることは」
「だからだね」
「それで余計にだね」
「こんな緊張したことはないよ」
 今まで生きてきた中で、というのです。
「怖い位だったよ」
「そこは人によるみたいだね」
「本当にイタリア人だと平気な人多いからね」
「だから先生はね」
「このことは本当に苦手なんだね」
「苦手も苦手」 
 それこそ、というのです。
「大の苦手だよ」
「だよね、けれどね」
「頑張ったね、先生も」
「それもかなり」
「頑張ったかな」
 先生は自覚のない感じで皆に応えました。
「だといいけれど」
「まあね、ただ」
 ここでジップが先生に言います。
「一つね」
「ただって?」
「先生はこれで安心しかねないから」
 ジップが言うのでした。
「気をつけてね」
「もっと動けっていうんだ」
「無理をしたらね」
 それならというのです。
「誰でもそこから動きにくいから」
「そこで余計に気力と体力を使って」
「先生は相当頑張ったから、だからね」
「ううん、僕が動かなくなるっていうんだね」
「そこは気をつけてね」
 くれぐれもという口調の言葉でした。
「先生もね」
「ここはあえてもっと頑張って」
「そう、日笠さんにも声をかけてね」
「そうしないと駄目か」
「絶対にね、あえてね」
「あえてね」
「僕達も出来ることならフォローするから」
 皆にとって先生は掛け替えのない人です、これは当然のことです。
「頑張るんだよ」
「助けてくれるんだ、僕を」
「当たり前じゃない、先生は僕達の家族だよ」
「それならね」
「助け合うのが当然じゃない」
「先生にはいつも助けてもらってるし」
「それならね」
 絶対にというのです、そうしてでした。
 先生はまた日笠さんにお声をかけようと思うのでした、そうしたお話をしてそのうえでなのでした。
 戻って来た日笠さんにです、こう言われました。
「防犯カメラに映っていた人のことがわかりました」
「どなただったのでしょうか」
「サリー=ジャイプルさんという方です」
「この学園の関係者の方でしょうか」
「はい、インドから来られた方でした」
「予想していた通りですね」
「はい、インドからです」
 この国からというのです、日笠さんも。
「留学生として来られました」
「そうでしたか」
「そしてです」
 日笠さんは先生にさらにお話します。
「八条大学で宗教を学んでおられます」
「宗教学の方ですか」
「何でもインドでは代々ヒンズー教の司祭のお家の方とのことです」
「バラモンにあたりますか」
「カースト制度ではそうなりますね」
 インドの社会にある階級制度です、この制度はそのまま職業分化にもなっていて一口では言い表せないものがあります。
「確かに」
「そうですね、それでなのですか」
「仏教を主に学んでおられるとのことです」
「日本の仏教をですね」
「インドの大学で優秀な成績を収めて日本でも学ばれているそうです」
「そうした方なのですね」
「はい、非常に真面目な方で」
 日笠さんは先生にさらにお話します。
「趣味はお菓子作りとのことです」
「何か今回のお話の要因が揃っていますね」
「そうですね、本当に」
「全くですね、それでこのサリー=ジャイプルさんがですね」
「はい、そうです」
 まさにというのです。 
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