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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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前書き
もし、エテモン戦後、過去に戻ったら…。 

 
これはもしもの話。
もし大輔がエテモンを撃破し、ブラックホールに吸い込まれた後、02序盤の過去に戻ったら…。






























ヒカリ「おはよう、大輔君」

大輔「ああ、おはようヒカリちゃん」

偽りの笑みを浮かべながら、ヒカリの挨拶に応える大輔。
最初はかなり動揺したが、旧式のデジヴァイスとブイモンの姿を見て、日にちを確かめると、もしかしたら自分達は過去に来てしまったのだと気付いた。
最悪だと大輔は思ったが、取り敢えず、何としてでもキメラモンを倒すとこまで行かなければと奮闘しようと決めた。

大輔「(身体能力も魔力も殆ど変わらない。それになっちゃんの存在を近くに感じる。あれは夢じゃない。それにしても俺と同じようにブラックホールに飲まれた賢達はどうなったんだろうか?)」

大輔は知らない。
賢もフェイトもはやても自分達の物語が始まる前の時間に飛ばされたことを。
そしてしばらくして、転校生の紹介があり、どうでもよさそうに聞き流すのだった。






























大輔「そろそろ来ると思うんだけどな。」

授業が終わり、パソコン室に向かった大輔。
京を伊織を利用して体よく追い出し、デジヴァイスを出す。
自分が彼らと同じ旧式を持っているなんて違和感がバリバリだが。
深い溜め息を吐くのと同時にヒカリ達がなだれこんで来た。

大輔「あ…」

光子郎「大輔君…あ、それはデジヴァイス…何で君がそれを」

大輔「…さあ、そんなことより何かあったんですか?」

ヒカリ「あ、実はお兄ちゃんが…」

事情を聞き、確かに光子郎のことを忘れていたと溜め息を吐いた。

大輔「ふう…太一先輩は無茶をするな」

ブイモン『そう言うなよ大輔。』

全員【え?】

不意に聞こえた声に全員が辺りを見回すが誰もいない。
しかし大輔がデジヴァイスのボタンを押すとブイモンが出て来る。

全員【!!?】

ブイモン[誰だってパートナーが危ないと分かればジッとなんかしていられない。それくらい分かるだろ?]

大輔「まあな」

いきなり出て来たデジモンに全員が驚くが光子郎が尋ねる。

光子郎「君は一体…?」

ブイモン[俺はブイモン。大輔のパートナーだ]

光子郎「大輔君の?一体いつ大輔君は選ばれ…」

ブイモン[…それはお前が生きるのに必要なことか?]

光子郎「え?」

ブイモン[知識の紋章の持ち主だから気になるんだろうけど、誰にだって聞かれたくないことの一つ二つはあるだろうが。お前にいいこと教えてやるよ。“好奇心は猫をも殺す”これがどういう意味かは知識の紋章の持ち主様なら分かるだろ?…過剰な好奇心はお前の身を滅ぼすことになるぞ?]

冷たい笑みを浮かべて言う。
光子郎は冷や汗をかきながら黙り込むことになる。

大輔「…っ!!」

ヒカリ「大輔君?」

大輔「来る…」

タケル「来るって…?」

大輔「デジタルワールドからの招待状だ」

デジヴァイスをパソコンの画面の前に翳すと光がデジヴァイスに吸い込まれ、形を変えた。
見慣れた自分のデジヴァイスに。

光子郎「形が変わった」

大輔「さて行くか、デジタルワールドに。鍵も手に入れたことだしな…行くぞブイモン」

ブイモン[OK]

大輔「一人ここに残れ、誰かが来たら面倒だ」

それだけ言うとデジヴァイスを掲げてデジタルワールドに。
タケルとヒカリも急いで追いかけ、光子郎はいきなり入って来た京達に対応することになる。































大輔「行くぞ」

タケル「行くって何処に?」

大輔「馬鹿が、太一先輩のとこだろうが。デジヴァイスの反応を探せば見つかるし、太一先輩のデジヴァイスの反応を見つけたからお前達のデジヴァイスにも座標を送る」

ヒカリ「座標?」

大輔「…選ばれし子供なのに、こんなことも知らないでいたのか?」

引き攣り笑いを浮かべる大輔にヒカリはムッとなる。

ブイモン[よく生きていられたなお前ら…余程強運だったんだな…]

ブイモンも信じられない物を見るかのような目でタケルとヒカリを見る。

大輔「…デジヴァイスにはな」

深い溜め息を吐きながらヒカリとタケルにデジヴァイスの機能を教えていくことになる。

タケル「デジヴァイスに通信機能まであるなんて…」

大輔「不安だ…」

これからの戦いは一人で戦った方がいいのではと心底思った。
デジヴァイスを見ながら歩くタケルを見遣りながら近くの自動販売機を殴るとタケルの目の前にヌメモンが出て来る。

タケル「うわ!!?」

大輔「高石、前方不注意は事故の元だ」

ブイモン[カメラ持ってくればよかったな。タケルのビビり顔は面白かった]

ケラケラと笑いながら足を動かすブイモン。
そして太一達を発見した大輔達。
当然太一は大輔の姿に驚くことになる。

太一「何でお前がここに!!?」

大輔「まあ、それは置いといて。何やら大変なことになってるようですね。テイルモンのホーリーリングも無いし」

ヒカリ「本当…テイルモン、何があったの?」

テイルモンの話によると、突如現れたデジモンカイザーと名乗る人間がデジモン狩りを始めたらしい。
狙われたデジモンは黒いリングを嵌められ、カイザーの意のままに動かされる。
テイルモンは森の中で操られたユニモンに襲われ、その際にホーリーリングを無くしてしまった。

タケル「人間だって!!?僕らの他にも、こっちに来ている人間がいるの?」

とりあえず太一達に近くにある洞窟へと案内された大輔達。
タケルの問いに、テイルモンは頷いた。

テイルモン[ああ。ヒカリの持つものと違うデジヴァイスを持っている]

大輔「これと同型の奴だろ?」

大輔がテイルモンにデジヴァイスを見せる。
テイルモンは大輔の言葉に目を見開くのと同時に頷いた。

テイルモン[それによく似た物だ]

大輔「そりゃそうだろうな。こいつはデジモンカイザーとやらのオリジナルを元にして造られたコピーだからな。」

太一「何だって?」

大輔「大方、旧式じゃあ新型には勝てないから敵のデジヴァイスを使えってことでしょうよ。デジタルワールドの上層部共が考えそうなことだ」

嘲笑うようにデジヴァイスを見つめる大輔が次の瞬間、表情を引き締める。

大輔「さて、今回の敵はデジモンカイザーらしいな」

ブイモン[ああ、テイルモン。デジモンカイザーに支配されたデジモンの規模はどれくらいだ?]

テイルモン[すまない、そこまでは…しかしかなりの数がデジモンカイザーに支配されたはず]

ブイモン[成る程ねえ、面白くなってきたな]

ニヤリと笑うブイモン。

大輔「お前らしい言葉だな。戦闘種族」

ブイモン[当たり前、周りが敵だらけなんてそうあるもんじゃないからな…いい加減生温い平和には飽き飽きしてたんでね]

互いにニヤリと笑う。
太一は大輔とブイモンに恐ろしさと頼もしさを感じていた。

ヒカリ「それにしても、人間がデジモン狩りだなんて……デジモンの王なんて……馬鹿みたい!!」

大輔「そうかな?」

ヒカリ「え?」

大輔「俺にはデジモンカイザーの気持ちが分かるぜ」

ヒカリ「ど、どうして?」

敵を擁護するような発言にヒカリは目を丸くする。

大輔「デジタルワールドは俺達からすればとても魅力的な世界だ。現実世界には様々な楔はあるけどここにはない。現実世界に失望している奴からすれば、さぞかしここは理想卿だろうよ」

太一「だからってデジタルワールドを支配しようなんて間違っているだろ!!?」

大輔「ええ、太一さんの言っていることも正しい。でもこの世界は単純な勧善懲悪じゃないってことですよ…誰だって様々な想いを抱いてこの世界に来ている…。この世界はデジモンカイザーの物ではないけど太一さん達の自分勝手な正義の物じゃない。」

ヒカリ「大輔君…」

大輔「まあ、俺としてはデジモンカイザーは個人的に気に入っている。ああいう遊び心のある奴は寧ろ大好きだ………なあ?デジモンカイザー?」

ヒカリ達に聞かれないように声を潜め、自分達を監視しているデジモンカイザーに笑みを浮かべながら言う。






























「ふふふ…嬉しいことを言ってくれるね。僕も君みたいな遊び心の分かる奴は嫌いじゃない。」

そう呟きながら手元のボタンを操作する。
一つのボタンを押すしながらカイザーはまた笑う。
本当にゲームを楽しんでいる声で。

「さあ、ゲームを始めようか。」

モニターの一つに一体のデジモンが映し出される、それはモノクロモンと呼ばれているデジモン。
モニターを見つめカイザーはまた肩を揺らして笑う。

「ふふふ……ゆけ!モノクロモン!!」

牢屋に捕らえられているデジモン達の一体の瞳が輝く、モノクロモンである。
咆吼を上げてモノクロモンは歩みだした。






























タケル「あっ……これ……勇気の紋章だ」

気がついたタケルが勇気の紋章の入ったデジメンタルに気が付く。

太一「あぁ、それ……凄く重いんだ」

何度か試した太一は両手をプラプラさせながら言う。
大輔はそれを無視して球体の元まで行く。

太一「(あんなに重い物、大輔は小柄だから無理だろうな)」

しかし試したい気持ちは理解出来る為、黙っていた。

大輔「………………」

片手をデジメンタルに触れる大輔、手に力を込める……。
ヒョイ。
そんな効果音が似合う状態だった。片手で軽々持ち上げられた球体。

ブイモン[大輔、デジメンタルゲットだな]

大輔「ああ…」

太一「デジメンタル?デジメンタルって何だ?」

ブイモン[デジメンタルってのは昔俺みたいなデジモンが沢山いた時に使われた進化するためのアイテムだ。ところでお前ら今すぐ気を引き締めろ。お客さんだ]

全員【え?】

現在いる洞窟が地響きを立てながら揺れた。

太一「なっ!?じっ……地震か!?」

タケル「違う!!」

天井に開いている穴から覗き込もうとしているかの様な体勢のデジモンがいる。
カイザーの基地にいたモノクロモンである。
モノクロモンは穴を広げながら入ってくる、というよりも落ちてくる。

大輔「モノクロモン、データ種、成熟期。鼻先にサイのような巨大な角が生えた成熟期の鎧竜型デジモン。この角は成長すると、体長の半分を占めるほどの大きさになるといわれ、この角と身体を覆う物質はダイヤモンド並に硬く、貫けない物はないといわれている。草食性で大人しいが、一度怒らせると恐ろしい反撃を繰り出してくる。必殺技は口から強力な火炎弾を吐き出す“ヴォルケーノストライク”」

大輔はD-3のデジモンアナライザー機能でモノクロモンのデータを読み上げる。

大輔「モノクロモンとはいきなり大歓迎だな。デジモンカイザー様は随分と過激な挨拶を好むようで」

ブイモン[やれやれ人気者は辛いぜ。そおら!!]

ブイモンは一気にモノクロモンに肉薄すると顎を殴り飛ばし、ひっくり返す。

ブイモン[よっと]

尻尾を掴むとジャイアントスイングの要領で洞窟の外に投げ飛ばす。

太一「すげえ…成長期なのに成熟期と互角以上だ…」

アグモン[凄いや…]

ブイモン[一気に勝負を決めてやる!!頼むぜ大輔え!!]

大輔「デジメンタルアップ!!」

ブイモン[ブイモンアーマー進化!燃え上がる勇気!フレイドラモン!!]

タケル「アーマー進化…?」

初めて見る進化にタケルは呆然とした声を出す。

フレイドラモン[だりゃあああ!!]

モノクロモンの顔面にフレイドラモンの拳が突き刺さる。
凄まじい威力にモノクロモンが吹っ飛ぶ。
































暗闇の部屋で彼は微笑を浮かべている。

「アーマー進化だって?この僕の暗黒デジヴァイスの力で進化は出来ない筈なのに……ふふふふ……面白い」

そう、笑っていた。
手の中にある大輔と同じ形態のデジヴァイスを見つめこれからの事について思案し始める。
































モノクロモンが火球を放ち、フレイドラモンに直撃させる。

ヒカリ「ああっ!!?」

太一「どうして避けないんだ!!?」

疑問を抱く太一だが、直ぐに解決する。
モノクロモンの火球をフレイドラモンが吸収し、自身の力に変換しているのだ。

フレイドラモン[こいつはいい。歓迎で御馳走してくれるのか?]

挑発的な笑みを浮かべるフレイドラモン。

フレイドラモン[さあて、そろそろ晩飯の時間になるし、終わらせるか…オーバードライブ!!]

赤いオーラを身に纏い、モノクロモンに一瞬で肉薄し、輪を粉砕した。
戦いは呆気なく終了し、戦いを終えフレイドラモンはブイモンへと退化する。
デジメンタルは大輔のD-3を介してポータブル機器に保存された。

































「ふふふ……君とは中々楽しく遊べそうだ……」

暗闇の中でカイザーは笑う。
その後ろには不安そうな表情を浮かべている昆虫型デジモンがいる。

ワームモン[賢ちゃん…大輔…]

過去に戻っていたワームモンの不安そうな呟きはカイザーの耳には入らなかった。































ヒカリ「もう大丈夫だよ」

ヒカリが優しく自我を取り戻したモノクロモンの頭を撫でてやっている。本当は大人しいデジモンなのだ。

大輔「すまなかったな。ブイモンは手加減が苦手でな」

ブイモン[やあ~悪い悪い。戦いとなるとハイテンションなるらしくてさ]

ジャパニーズスマイルを浮かべながら謝るブイモン。
その横に太一とアグモンが立って、二人の功績を褒め称えた。

太一「凄かったぜ、アーマー進化!!」

アグモン[僕達は進化出来ないけど……君達ならデジモンカイザーを倒す力になれるね!!]

ブイモン[ん?まあ適当に頑張るさ]

アグモン[あらら…]

この先輩か後輩か分からないデジモンはとてもマイペースだとアグモンは思った。

太一「大輔。お前はきっと、新しい選ばれし子供なんだ。これからは、お前がデジタルワールドを守ってくれ」

大輔「勿論守りますよ」

太一「それで餞別に…と言いたいとこだけど。俺、今何も持ってないんだよな…」

大輔「……(ああ、ゴーグル壊れてないからな)別にいいですよそんなの。デジタルワールドを守りたいから戦う。ご褒美が欲しくて戦ってるわけじゃないんで」

太一「そ、そうか…」

大輔「それから太一さん。一つ勘違いしてません?」

太一「え?」

大輔「選ばれし子供は選ばれた後はずっと選ばれし子供なんですよ。今でも太一さんの心に“勇気”が宿り、デジヴァイスとアグモンがあるようにね。デジタルワールドを守るのは“俺”じゃない。“俺達”」

大輔の言葉に目を丸くした太一は、すぐその意味を理解したのかいつもの彼らしい笑顔に戻ってきた。

大輔「太一さん達は先輩として、これから現れる新しい選ばれし子供を鍛えてやって下さい。正直言うと、俺は教えるのは苦手なんで」

太一「押し付ける気かよ」

大輔「当たり前です。自分だけ楽しようたってそうはいきませんからね。まだまだやれることは沢山あります。14歳で隠居するのはまだ早いですよ。働いて下さい、若いんだから」

太一「俺は年寄り扱いかよ」

ブイモン[実際大輔より老けてるじゃん]

太一「てめ、人を爺みたいに言うなよな」

ブイモン[HAHAHAHAHAHAHA☆]

わざとらしい笑い方に全員が苦笑する。
どうやら新しい仲間は相当腹の中が黒いようだ。
これはもし、大輔が過去に送られた際の話。 
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