ガンダムビルドファイターズボーイ
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第四話 盾の武者
プラモ狂四郎にて
「おっりゃああああああああああ!!」
「せいやあああああああああああ!!」
翼と香澄がバトルフィールドで模擬戦をやっていたのだ。翼が菊一文字を抜刀すると香澄も両肩に装備されていた2本の刀を抜刀し二刀流の構えをとった。
翼の攻撃を武術の経験で培った勘で回避すると一気にたたみ掛ける香澄。
「まだまだ!行くぜ烈斗!!」
『おう!』
「こっちも負けるか!行くよ!天津!」
『ええ!!』
意志を持つ相棒と共に訓練する翼と香澄だった。
第四話 盾の武者
模擬戦が終わり一息入れる翼と香澄。
「流石・・・腕っぷしだけは凄いね」
「ガンプラバトルって私の思い描いた動きを再現できるからね~・・・それに四郎さんやユアさんのコーチのおかげだよ」
翼に称賛されるが香澄は狂四郎やユアのコーチのおかげだと謙遜する。
だが翼だけは・・・
「お前・・・本気出してないだろ?」
「へ?」
前回は操縦に慣れていないだけで動きが良くなかった。だが慣れてきた今ならその動きの若干の鈍さを見破ることができる。
すると香澄はバツが悪そうに眼をそらすと・・・
「いや・・・本気出して・・・良いの?」
「え?」
バツの悪そうな香澄の視線の先では・・・
『ぎ・・・う・・・ああ・・・』
物凄く唸っている天津の姿が・・・どうやら人間でいう筋肉痛に陥っているらしい。
香澄の動きが凄まじすぎて天津自身が耐え切れていないようだった。
『お前・・・修行が足りてないんじゃないのか?』
『く・・・こんなのいつもだったら・・・』
烈斗の言葉に反論する天津。
こうして狂四郎とユアにメンテナンスを受けることになった。
「それにしても・・・基礎を教えただけでここまで動きが良くなるとはな~」
烈斗と天津のメンテナンスをしながら狂四郎が呟いているとユアは・・・
「ねぇ狂四郎さん」
「ん?」
「どうしてユアの武者フェアリーは動かないの?おんなじように作っているのに」
一見するとレッドウォーリアをBB戦士の武者頑駄無にしたような感じである武者スカーレッドフェアリーにどこか懐かしさを感じる狂四郎だが・・・
「そう言われてもな・・・」
何で意志を持ったガンプラになったかは魂込めて作った本人ですらわからないようである。
するとユアの持っていた端末が光ると中から人格が現れた。
「あ・・・姫子」
『二人とも・・・口より先に手を動かして下さい』
「うわ・・・経理ソフトの割にはおしゃべりだな」
ユアの端末に居るのは姫子と言うのはいわゆるAIであるらしく自称『経理ソフト』であるらしい。閉店後の売り上げの管理などを一手にやってくれるみたいなのだが・・・
(どうせ本当の事を言っても信じてもらえなさそうなので・・・)
「ん?どうしたんだ?」
『なんでもありません!』
そう言って誤魔化す姫子。すると香澄が大会の日にちを確認していた。
「大会開催は来月か・・・私たちは模型店所属チームって事で良いんだよね?3人目の当てってあるの?」
「無い事も無いけど・・・」
3人目の当てに一人心当たりはあるようなのだが、複雑な表情の翼。
すると
「よっし!じゃあ探しに行こうか!」
「「ユアさん!?」」
突如背後からメンテを終えたユアが二人の両肩にがしっと組みつくといつの間にか最後の武者が入っているプラモボックスを手にしていた。
「香澄ちゃんが天津に呼ばれたのなら・・・最後の武者も誰かを呼ぶかもしれない!だったらそれが必然的な3人目よ!」
やや強引なユアの提案に翼は・・・
「ユアさん・・・本心は?」
「3人目の意志が目覚める瞬間のデータをとればユアの武者フェアリーも意志が宿るはず!!」
「野望ありありじゃん」
ユアの提案に少々汗を流す翼。
すると
『諦めろ翼』
『こうなったユアはテコでも動かないよ』
メンテの終わった烈斗と天津が翼と香澄の肩に乗ると腕を組んでウンウンと頷き始める。
そんなこんなで翼たちは再び遠征に行くのであった。
「気をつけて行けよ~」
それを見送った狂四郎は腰を上げ・・・
「さぁってと・・・商品倉庫兼ユアの研究室の片付けに行くか?・・・あとユアが材料に使ったプラモと材料の請求書をミツキさん経由で両親に・・・」
ユアが勝手に改造した商品倉庫の整理に行くと同時にサエグサ模型店宛てに請求書を書くのであった。
尚、先の材料については狂四郎から了承を得てからやっている事であり、代金はミツキ経由で両親に請求しておいてほしいとの事である。
そんなこんなで遠征に向かった翼たちは電車である場所へと向かっていた。
「どの辺に行けばいいと思う?」
『うう~んここは強そうな奴が集まりそうなところじゃねえか?』
翼の疑問に烈斗が答えると隣から天津が・・・
『あのね・・・そんな漠然とした目的じゃダメでしょって・・・』
「まぁ・・・こういう時は有名な模型店に行ってみるっていうのが無難じゃない?」
天津の一言に香澄も頷くとユアが・・・
「それじゃ!」
やってきたのはサエグサ模型店だった。
有名どころで知り合いの模型店という事でサエグサ模型店がチョイスされたらしい。おまけにサエグサ模型店では頻繁に大会を開くので人も集まる。
「今日もやってるな~」
大会スペースを訪れる翼たちの前では白熱したバトルの真っ最中だった。
『おい・・・あれ・・・』
「ん?」
烈斗がバトルフィールドを見つめるとSDガンダムにして特注の騎士ガンダムとフラッグのバトルだった。
「あれは・・・ストライクガンダムを騎士ガンダムにした感じね」
「さしずめ騎士ストライクガンダムってところか」
騎士ストライクガンダムを操っているのは翼と同じくらいの少年だった。騎士ストライクガンダムとフラッグのバトルが決着を見ようとしたその時だった。
『!?』
騎士ストライクガンダムが烈斗の方を見たのだ。
烈斗が感じたその視線はただのガンプラの視線ではなかった。
まるで生きたガンプラの様に・・・
すると騎士ストライクガンダムはまるで烈斗に見せつけるかのように己の必殺技を放ったのだ。
『ホーリードラゴン!!』
龍のようなオーラを纏った魔法剣の一閃がフラッグを倒すとバトルの終了が宣言された。
「すげぇ・・・」
『・・・翼』
翼が少年に声をかけようとすると烈斗が止めた。
「烈斗?どうしたんだ?」
『あいつ・・・あいつもしかしたら』
「どうした?」
『あいつは・・・おそらく・・・』
烈斗の言葉を理解できない翼。すると騎士ストライクガンダムの少年はそれを持ってさっさと帰ってしまうのであった。
それと入れ替わりに・・・
「翼?」
「新之助?」
たまたま居た新之助。
今日もサエグサ模型店の大会に参加しようと思ったらしいのだが負けてガンプラをバラバラにされてしまい帰ろうとしている所だった。
翼は
「おい新之助~チームに入れよ~」
すると近所の友達も新之助をスカウトしようと思い話しかけてみるのだが中々返事をしない新之助。
それを見た香澄はユアの持っていたプラモボックスを手に新之助に近づいてみるが・・・
「香澄?どうしたの?」
「え?・・・あ・・・うん・・・何でもないよ」
新之助の雰囲気が変哲もないので勘違いかもと感じる香澄。
「・・・宿命・・・は・・・無かったのかな?」
『・・・香澄』
少々残念そうな表情の香澄を気にかける天津。近所の少年たちは新之助をスカウトしようとするが中々返事をしない新之助。
「・・・ごめんなさい・・・少し考えさせて」
やんわりと断る新之助だが翼はその本心を感じ取っていた。
(まぁ・・・気にしてるんだろうな・・・あの事・・・)
去年の大会だった。ファイターとして優秀な新之助は地元の知り合いに誘われ地方大会で高成績を収めていたのだが、その知り合いたちは新之助の実力だけを利用し決勝戦の出場権を獲得させ試合は自分の仲良しだけで出るべく新之助を除名するという暴挙に出たのだった。
表向きは成績不振と言う理由で・・・
新之助の応援に来ていた翼と香澄はその事を聞き激怒し・・・特に香澄は決勝戦直前にそのチームの前に現れその場で全員をボコボコにしてしまったほどだった。
それ以来、悔しい思いをした新之助はチームメイトを信用できなくなりチーム戦には参加しないと心に決めたのだ。
(・・・俺達の事も信用してないんだよな・・・チームを信用できないんだな)
小さい頃からの付き合いの翼や香澄の事すらチームメイトとしては信用しない事に少し苦い思いをする翼。
すると
「よぉ~新之助~」
「・・・!?・・・神崎!!」
新之助に声をかける神崎と言う少年。その少年こそ新之助を利用して決勝戦に出たが直前に香澄にボコボコにされた少年だった。
「新之助~またチーム組もうぜ~どうせ・・・誰とも組んでもらえないんだしよ~」
「お前!」
そう・・・去年の地方大会・・・実は新之助は誰ともチームを組んでもらえずに孤立し仕方なく神崎のチームに拾われたのだが・・・神崎は他のチームに入れないように妨害をしていた・・・後で知った新之助はまた前回と同じようになる。
「どうせ・・・あとで誰にも入れてもらえねえんだからよ?俺のチームに・・・「ちょっと待て!!」・・・え?」
新之助と神崎の会話の間に割って入る翼。その瞳は怒りの炎が宿っていた。
「何だ?チビ!?」
目つき悪く翼を睨む神崎。だが負けじと翼は言い返した。
「新之助は今年俺達のチームに入ってもらうんだ!!俺やっぱり決めた!新之助!俺のチームに入ってくれ!!」
「・・・翼?」
翼の突然の発言に驚く新之助。すると奥から香澄も現れた。
「私もやるよ!」
「香澄も?」
驚く新之助だが香澄の登場に突如、神崎の表情が変わった。
「てめ!あの時の!」
「おお~威勢だけは相変わらずね~・・・この下衆野郎」
「てめえら・・・良いぜ!相手になってやるよ!お前ら!」
「「おっす!」」
取り巻きを二人呼び出しバトルフィールドに並び立つと翼と香澄は新之助にプラモボックスを押し付け対面側のフィールドに立った。
端末をセットし烈斗と天津をフィールドにセットするとプラフスキー粒子で満たされていく。
「天地翼!武者烈斗頑駄無!!」
『おっしゃあ!!試合だ試合!!』
力強く操縦桿を握る翼と己の顔面引っ叩いてやる気満々の烈斗頑駄無と・・・
「獅童香澄!武者天津頑駄無!!」
『ニン!!』
操縦桿を握る香澄と忍術の印を組んで精神を集中する天津頑駄無が・・・
「「出陣!!」」
カタパルトから発射されバトルフィールドに降り立った。
その横では・・・
「さぁって・・・観察観察・・・新之助君?どうするかな~」
データを取るべく端末を構えたユアが新之助の動向も見ながらバトルフィールドに端末を向けた。
フィールドは町中であり辺りにはビルが密集している。相手を確認すると神崎の機体は高火力のガンダムヘビーアームズ・・・取り巻き二人はビルゴだった。
「行くぜ!!」
「私も!!」
烈斗は菊一文字を天津は両肩に1本ずつ装備されている忍刀を抜刀し神崎のヘビーアームズに斬りかかるがビルゴの両肩に装備されたユニットが展開されバリアが張られ烈斗と天津の一閃が弾き飛ばされてしまった。
「この!」
「他の2機は防御専門の人ってとこね」
一旦距離を置く烈斗と天津。
すると
「邪魔なんだよおめえら!!」
神崎がガトリングを放つと烈斗と天津が距離を置き始めた。あまりの弾幕に烈斗と天津は距離を置くしかなくなくなった。ビルの陰に隠れる烈斗と天津。
すると烈斗はバックパックを召喚し合体すると再びヘビーアームズの前に立った。
「くそ!これでも食らえ!」
烈斗が両肩に装着されたショルダーキャノンを放つが再びビルゴがフィールドを張り、烈斗が放ったビームを弾き飛ばしてしまった。
だが
「はぁあああああああああ!!」
『うおりゃあああああああああ!!』
烈斗が牽制している隙に神崎たちの背後に回り込んだ天津が再び二刀流で斬りかかるが一斉射撃を浴びてしまい体勢を崩される。
「く!」
咄嗟に手裏剣を投げて回避する天津だが再び距離を離されるしかなくなってしまう。
それを見ていた新之助は・・・
「近づけばフィールドで防いで一斉射撃・・・遠距離では完全防御・・・どうすればあれを・・・」
翼と香澄のバトルを見ながら突破口を考えてしまう。
すると
「おうおうおう?んな武者頑駄無なんかで俺達のチームが崩れるわけねえだろ!?あ?新之助にはまた頑張ってもらわなきゃいけねえんだからよ!!」
再び新之助を利用しようとする神崎。
それを聞いた翼は怒りを爆発させた。
「・・・俺の友達に・・・ゆるさねぇええええええええええええええ!!」
『俺も許さねえ・・・この外道!うおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
翼と烈斗の瞳の中の魂が燃え上がり・・・
「『天来変幻!!』」
バックパックが展開し烈斗の姿が変わった。
「『武者烈斗頑駄無!金剛形態!!』」
リアル形態になりヘビーアームズに斬りかかるがミサイルを放って烈斗の進行を阻止した。
『ぐああああああああああ!!』
「へ!ばあか!見え見えなんだよ!!」
「くそ!!」
口先だけではなくかなりの実力の持ち主である神崎。烈斗頑駄無・金剛形態の動きを完全に見極めていた。
おまけに指揮能力まであり香澄の天津の奇襲も難なくかわしてしまう。
このままでは翼と香澄は負けてしまう。
その時
「翼!香澄!!」
新之助がプラモボックスを持ちバトルフィールドに走った。
プラモボックスを空け・・・瞳の描かれていない青き武者頑駄無を手にし・・・
「くたばれ!!」
神崎が烈斗に向かって一斉射撃をしたその時だった。
「!!」
突如烈斗の前に降り立ちその手に装備されていた巨大な盾を構えその攻撃を防ぐ武者頑駄無の姿が・・・それに驚愕する烈斗と翼。
「・・・チームメイトは・・・大切にしないとな・・・翼」
「新之助?」
打算も・・・駆け引きも無く・・・ただ一直線に突き進むバトルを繰り広げる翼に加勢に現れた新之助。
そして
「武者武瑠頑駄無・・・参上」
「新之助・・・てめえ!!」
神崎が再びチーム全員で一斉射撃を繰り出そうした瞬間だった。
「もらい!!」
「!?」
新之助の登場に気を取られていた神崎は香澄が懐に入っていたことに気付かず、天津に忍刀でビルゴの一体を撃破され数を減らされると一瞬で目の前から消えてしまい見失った。
「アマ!!」
「あんたの相手はあっち!!」
香澄に指差されると既に懐まで迫っていた翼と新之助。
それに気づいた神崎は残ったビルゴと一斉射撃を放つが武瑠の盾は傷一つつかずすべて防ぎ切っていた。
「な!何だよ!何だよその盾!?」
「そういえば・・・四郎さんその盾金属で作ったって言ってたな」
異常なまでの防御力に驚く神崎はパニックに陥るとブースターを起動させ飛び立ってしまうと烈斗が残ったビルゴを撃破した。
「あの野郎・・・自分だけ逃げやがった!」
「逃がさない!!」
新之助がスロットを回すと武瑠の背中に折りたたまれていた龍のような翼が開き飛行したのだ。
気づいた神崎が弾幕を張るが凄まじい飛行能力で潜り抜ける武瑠。
その飛行能力に新之助は・・・
(凄まじい飛行能力だ・・・この動き・・・まるで裂空・・・)
「新之助えええええ!!」
神崎のあまりにもみじめな振る舞いに新之助は・・・
「お前は・・・もう過去にする・・・!!」
「な!」
神崎に対する意を決した瞬間。
「何・・・これ?」
ユアの持っていた端末が未知の超エネルギーを感知した。この世界から発生されたような物ではなく・・・何処からともなく現れたエネルギーが感知された瞬間。
『!!』
武瑠の目に瞳が描かれた。
武瑠の翼が外れ巨大な剣に変形すると自身の盾を組み込んだ。その剣を構え神崎に向かって突撃した。
「擢呈駆嗚呼無樹!!龍神鋼鉄突!!!」
龍のオーラを纏った突きが放たれると神崎のヘビーアームズが貫かれた。
その瞬間
BATTLE END
新之助たちの勝利が確定した。舐めて見下していた新之助に負けた事に神崎は抜け殻のようになりその場を去ってしまった。
新之助に駆け寄る翼と香澄。だが新之助はフリーズしていた。その理由は・・・
「新之助?」
「・・・これ・・・どういう事?」
新之助の指差した先には・・・
『・・・やっと前に進んだようだな』
意志を持った武瑠頑駄無に認められているのであった。
「ガンプラが・・・喋った」
二度ある事は三度あったので特に気にしていない翼と香澄。だが新之助だけは・・・
「何がどういう事か説明してえええ!!」
「「知らん!!」」
一人パニックに陥るのであった。
・・・だがこうして新之助もチームに加わるのであった。
その夜、プラモ狂四郎の地下室のユアの研究スペース兼商品倉庫にて・・・
「う~ん」
意志を持った3体の武者頑駄無のデータを見るユアは細かい部分を見ていた。
「粒子量は変わらないな・・・ていうか粒子以外の何か別のエネルギーを検知したし・・・ホントに生きてるのかな?」
頭を捻っているユアを他所に狂四郎にメンテを受けて万全になった烈斗たちは・・・
『何はともあれ・・・そろったな?』
『だね♪』
『・・・ああ』
烈斗の言葉に天津と武瑠が頷いていると武瑠の目にユアの作った武者スカーレッドフェアリーが映った。
すると
『ん?・・・あれは』
『『今は言わないで!』』
『わかった』
烈斗の天津の言葉を武瑠は納得するのだった。
後書き
翼
「いよいよ!大会に向けて参加表明だ!」
香澄
「あれ?注意書きが・・・」
翼
「なになに?小学生の部には・・・保護者兼監督必須って!誰に頼めばいいんだよ!」
次回!監督就任!
翼
「四郎さん!お願い!!」
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