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嵐神の炎

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4部分:第四章


第四章

 そしてだ。そのうえで言ってだった。
 彼はローゲを見送った。その後姿は次第に小さくなりそのうえで炎となった。こうして彼はヴァルハラから去ったのであった。
 それから暫く経ってだった。
 森の中でだ。小鳥がさえずっていた。
 その下には一人の少年がいる。若々しく精悍で覇気に満ちた。その彼に聞こえるようにしてだ。
「この森の奥に」
「森の奥に?」
 少年もその言葉に顔を向けた。見れば服も荒々しい。まるで人の世にいなかったようにだ。
「この森の奥に何が」
「岩山がある」
 こうさえずる小鳥だった。
「そしてその岩山は炎に囲まれ」
「炎に」
「そしてそれを乗り越えた時」
 小鳥の言葉は続く。
「そこに女がいる」
「女?」
「その女を手に入れれば」
 小鳥はさらにさえずる。
「その者は全てを得られる」
「女とは何だ?」
 少年はそこからいぶかしむのだった。
「何だ、それは」
「行けばわかる」
 小鳥はその少年に対して今度はこう言うのだった。
「岩山に行けば」
「そうなんだ」
 少年はとりあえずは小鳥の言葉を聞いて頷いた。そうしてだった。
 そのうえでだ。彼はその岩山に向かうのだった。小鳥は木の枝のところに止まっているだけだった。
 しかしここにだ。旅人の姿の彼が来た。そしてだった。
「そこにいたのか」
「はい」
「どういうつもりだ」
 彼はだ。小鳥を見上げながら言った。
「何故ジークフリートに教えた」
「貴方の望みを適えただけです」
「私のか」
「はい、貴方のです」
 小鳥はローゲの声を出していた。そのうえでの言葉だった。
「貴方の望みを適えただけなのです」
「やはり知っているか」
「勿論。だからこそ」
 声は笑っていた。小鳥はヴォータンを見下ろしながら話す。
「こうしてです」
「ジークフリートを行かせたのか」
「あの者がですね」
 また言う小鳥だった。
「あの者こそがブリュンヒルテを手に入れ。そして」
「言うつもりはない」
「言わないというのですか」
「言う必要があるのか」
「いえ」
 笑顔の声でそれは否定する小鳥だった。
「それはありませんがね」
「そういうことだな」
「では貴方はこれからどうされますか?」
「どうするか、か」
「はい。行かれますね」
 こう小鳥に対して述べた。
「そしてそのうえで」
「そこまでわかっているのだな」
「長い付き合いでしたから」
 小鳥の声はここでも笑っていた。
「ですから」
「それでか」
「はい、貴方も私のことをよく御存知なのと同じです」
「それとか」
「そういうことです。それなら」
「うむ」
「また会いましょう」
 小鳥の言葉は今度は恭しいものになった。敬意は確かにある。
 
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