剣聖龍使いの神皇帝
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第2巻
漆原家の闇×理事長と校長の会談
「そんで、まーやはそこまで俺にご執心何だ?」
俺が女難の相だと言う事は、自分でも理解しているから言われなくても分かる。普通なら近付きたくないと思うが、まーやは退屈な安穏よりも刺激に満ち溢れた冒険を求めているそうだ。なのでこれからも仲良くして欲しいとの事なので、こちらこそと言った。
「もしかして校長先生は時間かかりそうなのか?」
「そうなのです。マリお姉ちゃんはしばらく時間がかかるのです」
「どこに行ったのか分かるか?」
「今、理事長との話し合いでお出かけ中なのです。だからここで待ってた方が確実なのです」
まーやが言っている事は事実のようで、今頃は理事長と校長が話し合っている事だろう。企みがあるそうだが、俺的には最後まで泳がせておく。それにこの子からは悪意を一切感じないので、お喋り相手が欲しいという感じではあった。ホームルームや実戦部隊をサボっても怒られはしないから、しばらく話しているかと沙紀との念話会議でも良いとの事。
「じゃあまーやは理事長の事を知っているか?」
「理事長の事でしたら、知っているのです。伊達にまーやは校長先生と毎日一緒にいる訳じゃないのですが、彼女さんの片方の方ですよね?『ああ。漆原静乃の方だ』それだったら、静乃お姉さんと理事長は兄妹なのです」
「やはりそうか。・・・・こちらには蒼い翼諜報部とかあるけど、漆原家の事を詳細に教えてくれるかな?」
マヤが知っている事を話してもらったが、やはり情報通りだなと思った。漆原家はこの学園の出資者であるが、そもそもこの学園創設者は蒼い翼日本本社社長兼CEOをしている零達也と対立をしていた。だけど過去に漆原家の祖父辺りと仲良くしていたので、一部出資者として理事長にさせた。白騎士機関・日本支部とも太いパイプを持っていて、理事長は教育者ではなく政治屋であり野心家だ。例えば日本支部から《救世主》を派遣させて静乃を入学前から鍛えさせていたらしいし、校長を通じて実戦部隊の予備隊員に推薦したのも理事長。静乃を黒魔として大成させて、ゆくゆくは白騎士機関の幹部にさせようとしているらしいから、しっかり育てるようにと学園関係者は厳に命じられている。それについては、俺もそう強く命じたので覚えている。実の妹をまるで駒扱いするかのような野心を持っているから、いずれは潰す予定。
「理事長が政治屋だから、理解してないのです。マリお姉ちゃん達は教師である前に、《救世主》なのです。自分の信条で動いているのです。組織のしがらみとか宮仕えの悲しさとか、知った事じゃないのですから、誰も静乃お姉さんを特別扱いする事はないのです」
「静乃は俺と出会う前まではやる気がないが、前世を覚えているし授業をちゃんと受けているから、俺も神皇帝とか言われているが特別扱いされると困るな」
「アレな兄弟がいたら静乃お姉さんも気苦労が絶えないと思うのですが、この学校にいる間はマリお姉ちゃん達が、早々理事長の思い通りにさせないのです。先生は皆、静乃お姉さん自身の意志を尊重してくれるのです」
「確かにそうだな、その方が静乃的にはここにいる間だけは感情を出してきているしな」
それに校長や担任達の顔を思い浮かびながらであるが、そう言う風な指示については創設者零達也の時の俺がそうさせたからだ。静乃の事や理事長が野心家についてを知ってからは、教師や校長に密かに指示を飛ばしている。まあこの学校の事は校長に委ねているし、根っこもそうだ。理事長として置いているのは、漆原家だからだという事だけではなく祖父の代からの親密さがあったからだ。
「そんな感じで満足してもらえたです?」
「ああ。お陰様で情報と照らし合わせたら一致したよ。ありがとな、まーや」
そんで頭を撫でてから、教室に戻ろうとしたがまーやはもっとお話をしたいと言ってきた。まあ沙紀もたまにはいっぱい話したいと思っていたので、ホームルームをサボってこのまま喋って校長先生が来るまでいるとしようと思った。俺の予想だと、今頃校長先生が理事長である屑と話し合っているんだと、そんで俺を駒扱いでもするつもりかと感じた。
「じゃあ今日は校長先生が戻ってくるまでここにいようか、一日ぐらい俺が放課後の特別訓練にいなくても平気だろう。沙紀はどう思う?」
「私も同意します。実戦部隊の特別訓練は白鉄と黒魔の連携としたもんですから、それか零社長から呼ばれたと言えば平気かと」
そう言う事で、俺と沙紀は校長先生が戻ってくるまでここにいる事にした。新たな友達となったまーやと一緒に話しながら待つ事にしたけど、もしかしたらまーやと一緒に住むのかもしれない。理事長の企みを壊すためにしようとしてくるが、俺の家は零家だから校長先生や理事長すら知らない事となっている。今頃はどうなっているのかな?と思いながら、理事長と校長がいるところに小型無人偵察機から盗聴するために俺は通信機を付けながら、まーやとの会話を楽しんでいたけどね。
『何を考えているんですか、あなたは!』
落ち着いた雰囲気の小さなレストランに、冷や水を浴びせるような非難の声が通信機から響いたので音量を小さくした。亜鐘学園校長の四門万里は、久方ぶりのミーティングという事で理事長に誘われ、遅い昼食を摂っていた校長は今、腰を浮かして会食の相手をなじっていた。何の話かと思って付いて来てみれば、いきなり恐ろしい企みを持ちかけられた。そんな事が思いつくと逆に感心するが、人を人とも思わぬ企みでありいつか蒼い翼から抹殺されるであろうか。あと俺らが聞いている事を知らずにしてた。
「それが灰村君を死地へ送り込むに等しいと、分からないあなたではないでしょう!?彼はあなたの政治の道具ではありません!」
眦を吊り上げ、呪殺するような視線で睨みつける。それを真っ向から浴びている理事長は、ここがレストランで密談できる場所ではなく一般人がいるような場所なので落ち着くよう指摘する。理事長は平然とナイフで鯛のソテーを切り分けながら、逆に窘めた。貫録と冷静沈着さは、老獪な政治家たちに勝るとは劣らない。校長はますます睨みつけながらも、落ち着けという言葉に従うしかない。
校長も優秀な《救世主》であり、学園第一期生であり、初代実戦部隊隊長。《固有秘法(ジ・オリジン)》を持つ黒魔であり、日本で十人もいないランクAである。年齢は二十歳だが、校長くらい優れていると前世の記憶の多くを有し「若いから見識がない」という一般常識は当てはまらない。校長職への就任も大抜擢というよりは、白騎士機関内では往々に起こり得る人事で、組織トップである「六頭領」達ですらほぼ全員三十歳未満。まあ四門万里を学園校長職を置いたのは、蒼い翼零達也が指名した事は一部の人間しか知らない。
万里は思う。そういう観点からすると、《救世主》でもない常人が「弱冠」二十五歳で理事長を務めているのは異例の事かもしれない、と。この男は「若さに似合わぬ見識」を磨き上げた、恐ろしい傑物という事。無論その見識の中身は綺麗なもんではなく、澄まし顔で食事を続ける理事長は警戒の籠った視線をぶつけ続ける。腰を落とし、声のトーンも落として忠告を続ける。
「灰村君は我が国の至宝となりうる人材ですが、彼がソレスタルビーイング所属だと言う事なので、あなたが何かしら企みをしたとしても自滅するだけかと思うのでお考え直し下さい」
「だからと言って奥にしまって活用しないのも、愚者の行為だと思うが、彼がCB所属だとしても亜鐘学園所属でもある。活用しなくてどうするのかね?」
「他の生徒同様、彼には時間を与えなくとも、成長はします。が、見守るべきだと思います」
「私はそれが時間の無駄だと言っているのだよ。彼は亜鐘学園で置いておく人材ではない、早めに白騎士機関に取り込めば怖くは無い」
「仮にも理事長のお言葉とは思えません。学校制度の軽視がどれだけ恐ろしい結果を招くか、ロシア支部を見れば明らかでしょう?強さだけを求めて・・・・」
「・・・・心を鍛える事を放置すれば、歪な《救世主》が出来上がる、と。うん、素晴らしい一般論だ。一般論だ!君の報告書によれば、灰村君は非常にバランスのとれた人格であり、同時に対ドウター戦においての戦力も既にあるとあったが?それは間違いとでも言うのかね?」
校長は「ああ言えばこう言う」と頭を抱えながら歯噛みをしていた。とりあえず校長先生は反対のようだが、修羅の道というより茨の道すら攻略済みの俺に対しての評価として、理事長は実力者を相応しい活躍の場を与えたいそうだ。だけど、俺も校長も思った。
「「(漆原家に憑りつかれた、分からず屋の大馬鹿者目・・・・)」」
真摯に言葉を尽くす意味はない相手ならば、俺も校長も戦うしかないと思う。それが《救世主》の流儀だと言うが、俺的には企みを壊す方が面白いと思う。
「話は以上ですか、理事長」
「ああ、それに関連してもう一点だけ。今後、灰村君はしばしば我が家に招待する事になる。ウチの静乃と友人なのでね。帰りが遅くなる事もあろうし、泊める事もあるだろう。なので、灰村君が一々外泊許可申請で煩わせないよう特例措置を取っておいてくれ」
校長と俺は静かに怒りを露わにしたが、ここにまーやがいるので俺は静観してそのまま聞いていたが、理事長でも知らない事もあるのだな。校長も不思議な顔をしていたので、一瞬知らないのか?と感じたそうだ。その上で静乃をダシに使うという最低野郎には、後々鉄槌が下ると思う。自分の妹も政治の道具としか見ていない理事長に、嫌悪感しか覚えない。本人は自覚あるか分からないが、的確な懐柔法だ。諸葉が校長にだけ伝えた零達也と織斑一真は同一人物だと言う事で、理事長が罠を仕掛けたとしても乗らないだろう。
「・・・・一つだけ言っておく事がありますが、灰村君は寮には住んでおりません。なので、そういう事になったとしても家関連の者達が心配をされます。特例措置と仰られても、それだけは出来ない事を言っておきます」
「寮には住んでない!ではどこに住んでいると言うのかね?」
「私にも分かりかねます。一つだけ分かるとすれば、灰村君には護衛者がいる事と送迎車で自宅に帰っている事ぐらいです。では私はこれにて失礼します」
俺が寮に住んでない事を言ってから、理事長を一睨みし、校長は立ち上がる。
「まだメインディッシュが残っているが?」
「結構です。それと車での送迎も結構」
床を踏み鳴らしながら店を出て、肩を怒らせるように学校まで歩いていく。俺はというと、通信機を外したらもうすぐ帰ってくるから俺の隣に座ってくれと指示した。こういう時はまた今度なと言いながらだったけど。校長もそうだけど、生徒を好きにはさせないという思いは俺も同じ。生徒を道具のように使う者は最低だとな、かなりの距離を歩いたが、その間は憤懣やる方で、ウンザリしながら学校に戻ってきたら・・・・。
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