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ヴォルデモート卿の相棒

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飛行訓練

 
前書き
段々区切りが中途半端になってきたな…… 

 
3時5分前に城を出て、三人は校庭を横切った。ハグリッドは「禁じられた森」の端にある木の小屋に住んでいる。ハリーが扉をノックすると、中からメチャメチャに戸を引っ掻く音と、ブーンとうなるような吠え声が数回聞こえてきた。

「退がれ、ファング、退がれ」

大声とともに戸が少し開いて、すき間からハグリッドの大きなひげモジャの顔が現れた。
ハグリッドは大型の黒いボアーハウンド犬の首輪を押さえるのに苦労しながら、ハリー達を招き入れた。

「くつろいでくれや」

ハグリッドがファングを離すと、ファングはロンに飛びかかり耳をなめ始めた。見た目とは裏腹に人懐っこい性格らしい。

「友達のロンとクレスだよ」

お茶の準備をしているハグリッドにハリーは二人を紹介した。

「そっちはウィーズリー家の子かい? え?」

ロックケーキと飲み物を差し出しながらハグリッドが確認する。ハリーとロンはロックケーキにかぶりつくが、あまりの固さに涙目になる。

「おまえさんの双子の兄貴たちを森から追っ払うのに、俺は人生の大半を費やしているようなもんだ。それから……」

その傍らでロックケーキをバリボリと咀嚼しているクレスに視線を移す。

「おまえさんがクレスか。ルーチェが言っとったぞ、お前さんもかなりのヤンチャ坊主らしいな」
「! あの人のこと知ってんのか?」

自分の保護者の名前が出たことにクレスは反応する。

「そりゃホグワーツ関係者は皆知っちょる。なにせ理事会の1人だからな」
「そういやそうだったな。それにしても余所者だったあの人がよくそんなポストに就けたもんだな」
「ダンブルドアが推薦なさったんだ。そりゃ着任後しばらくは他の理事達に、イタリア魔法界のスパイなんじゃないかとつっかかられとったが、みーんな物理的に黙らせたからな」
「よく俺のことヤンチャ云々言えるなあの人!? シスターなら人徳とかで解決しろよ!」

恩人のあまりに破天荒な過去を聞き、本当に神に仕えてる人かと疑わしくなるクレスだった。

三人は今までの授業について話した。
スネイプの授業の話になると、スネイプは生徒という生徒は皆嫌っていると励ました。

「でも僕のこと本当に憎んでいるみたい」
「ばかな。なんで憎まなきゃならん」

露骨にハリーから目を反らして否定するハグリッド。その後急にロンの兄貴の話に移行した不自然さといい、どうやら隠し事が苦手のようだ。
クレスがロックケーキにかぶりついていたりハグリッドとロンがドラゴンの話で盛り上がっている間、テーブルの上に置いてあった「日刊預言者新聞」の切り抜きを見つけた。
書かれていた記事はは、魔法使いの銀行・グリンゴッツが何者か侵入されたという内容だった。補足説明しておくと、この銀行はホグワーツを覗けばイギリス魔法界一ののセキュリティを誇る銀行である。

「ハグリッド! グリンゴッツ侵入があったのは僕の誕生日だ! 僕達があそこにいる間に起きたのかもしれない」

今度ははっきりとハリーから目をそらしたが、その件についてハグリッドが語ることはとうとう無かった。









ー飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業ですー

「そらきた。お望みどおりだ。マルフォイの目の前で箒に乗って、物笑いの種になるのさ」

何よりも空を飛ぶ授業を楽しみにしていたハリーは大いに落胆した。

「そうなるとは限らないよ。マルフォイのことだし、どうせ口先だけだよ」

魔法使いの家の子はみんなひっきりなしにクィディッチの話をした。特にロンとクレスとディーンはラグビーとサッカーとクィディッチについて大論争をやらかした(クレスはトレーニングの一環で地元のマグルに混じって取り組んだところ、かなりお気に召したらしい)。

「どうかしてるよ! 飛べない上にボールが1つしかないゲームの何が楽しいんだい!?」
「ドリブルとパスワークを組み合わせる戦略性に富んだあのゲームの良さがわからないなんて、君達人生損してるよ!」
「バカかお前ら! 男なら圧倒的パワーで敵をねじ伏せてこそだろうがぁっ!」

ハリーは思う。もう勝手にやってくれ……

ネビルはおばあさんに決して近づかせてもらえなかったらしい。まあおばあさんが正しいだろう。地に足がついた状態でも結構な頻度でやらかすネビルだ、空中にいればどうなるかは予想に難くない。
ハーマイオニーはいつものように箒に関する本を図書館から大量に借りてきていた。クレスにしてみれば「説明書丸暗記すれば自転車に乗れるようになるか?」と思ったが、どちらかと言えば関わりたくない相手なので放置した。
ハーマイオニーが『クィディッチ今昔』で得た知識をうっとうしいほど熱弁している(真剣に聞いていたのはネビルだけ)最中にふくろう便が届いた。めんふくろうがネビルに小さな包みを持ってきた。
ネビルがその包みを開けると、白い煙のようなものが詰まっているように見える大きなビー玉ぐらいのガラス玉が入っていた。

「『思いだし玉』だ! ばあちゃんは僕が忘れっぽいこと知ってるから……何か忘れてると、この玉が教えてくれるんだ。見てごらん。こんなふうに握って赤くなったら-あれっ?」
「言ったそばから何か忘れてるみたいだな……」

真っ赤に光りだした『思い出し玉』を見て呆れるように呟くクレス。
ネビルが何を忘れたのか思い出そうとしてるとき、マルフォイがグリフィンドールのテーブルのそばを通りかかり、玉をひったくった。
その瞬間ハリーとロンははじけるように立ち上がった。二人ともマルフォイと喧嘩する口実を虎視眈々と探していたようだ。ちなみにマルフォイと仲が良くも悪くもないクレスは面白そうにそれを見物していた。
しかしマクゴナガル先生がいざこざを目ざとく見つけサッと現れた。

「どうしたんですか?」
「先生、マルフォイが僕の『思いだし玉』を取ったんです」
「見てただけですよ」

マルフォイはしかめっ面ですばやく玉をテーブルに戻し、クラッブとゴイルを従えてスルリと逃げた。












その日の午後三時半、グリフィンドール生達は初めての飛行訓練を受けるため、正面階段から校庭へと急いだ。
スリザリン寮生は既に到着していて、20本の箒が地面に整然と並べられていた。足元にある箒は「シューティングスター」。速そうなのは名前だけであることで有名な箒だ。それだけならまだしも事故率も半端無く高い。その名の通り撃ち落された流れ星のように墜落する者が続出しクレームが殺到、生産メーカーが倒産してしまっていたほどである。
しばらくすると担当教官であるマダム・フーチが現れて生徒達の前に立った。短く切りそろえた白髪に鷹のような黄色い目が特徴的だ(鷹のような、と言ってもクレスほど鋭くはないが)。
彼女は到着早々生徒達に対して怒鳴り散らす。

「何をボヤボヤしているんですか! 皆箒の側に立って。さあ早く」

慌てて生徒達は箒の側にスタンバイした。

「右手を箒の上に突き出して、そして『上がれ』と言う!」

マダム・フーチの言葉に合わせて全員が「上がれ!」と叫ぶ。ハリーやマルフォイやクレスはすぐ飛び上がり手に収まったが、飛び上がった箒は少なかった。
全員が何とか箒を手にした後、マダム・フーチは箒の正しい乗り方をレクチャーし、生徒達の列を回って握り方を直していく(実は野球のピッチングフォームと同じで、これが絶対正しい!と言う握りかたはないのだが)。
それが終わればいよいよ飛行訓練開始だ。

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルくらい浮上して、それから少し前屈みになってすぐに降りて来て下さい。
ではいきますよ。1、2の……」

ところが、マダム・フーチが笛を吹くよりも早くネビルが奇声をあげて飛び上がった。おそらくは緊張感やら皆に置いて行かれたくないのやら恐怖やらでパニックを起こしてしまったのだろう。

「こら、戻ってきなさい!」

それで戻ってこれるのなら苦労はしない。ネビルはそのままペットボトルロケットのようにどんどん上昇していき、そのまま急降下して地面にダイブした。
マダム・フーチは真っ青な顔になってネビルに駆け寄った。どうやら手首が折れているらしい。災難と言うべきか、よくその程度で済んだなと言うべきか。

「さあさあ、大丈夫。立って。みなさん、この子を医務室へ連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますよ」

涙でグショグショの顔をしたネビルを連れてフーチ先生
は医務室に向かった。

「…よしっ、寝るか!」

好機と見るや即座に両腕を枕にして睡眠モードに移行するクレス。それをハーマイオニーは見咎めた。

「真面目に待ってなさいよ……」
「俺は睡眠のチャンスは逃がさん。………zzz」

グリフィンドール生とスリザリン生の言い争いをBGMにクレスは眠りについた。
しかし3分もしないうちにロンに無理矢理起こされることになる。

「ぐむ……なんだよロン、人が気持ちよく寝てんのによぉ……」
「何呑気に寝てるんだよ! それどころじゃないんだよ! マルフォイが思い出し玉でハリーがネビルを放り投げ退学に-」
「わかったから落ち着いて説明しろ、ごちゃごちゃになってるぞ多分」
「その説明は僕がしてあげるよ、エシャロット」

クレスがロンを宥めていると、やけに勝ち誇ったマルフォイが近づいてきた。マルフォイは睨んでいるロンを愉快そうに見ながら説明した。

「-なるほど。話をまとめると、お前がネビルの思いだし玉をパクって箒で飛び上がって、ハリーが同じく箒に乗ってそれを取り返すも、その現場をマクゴナガルに見られた、と」
「そうさ! はははははっ! 君達もお友達ならお別れの挨拶ぐらいはしてあげなよ! せめてもの情けにさ!」

至極愉快そうにバカ笑いするマルフォイに、ロンが今にも殴りかかろうとしたとき、

「「さて、それはどうだろうな」」

クレスと近寄ってきたジークが同時に異を唱えた。

「!? ……ジーク、エシャロット、それはどういう意味だい?」

先程より笑顔をひきつらせたマルフォイが二人に問いただす。

「貴様が考えている以上に、ハリー・ポッターのネームバリューは大きいのだよ、ドラコ」
「教師達も、ホグワーツを『吼えメール』で消し炭にされたくないだろうしな」




 
 

 
後書き
名前が出てくるたびにアグレッシブな武勇伝もついてくる、それがシスター・ルーチェ! 
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