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生み出すもの

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2部分:第二章


第二章

 その彼が青い法被を着てだ。子供達に言っていたのだ。
「さて、これは」
「何それカップ?」
「持つところがないじゃない」
「これぞジャパニーズカップ、御湯飲み」
 デンマークだが英語も入れていた。
「我が国の誇る文化の一つだよ」
「日本って何?」
 こんなことを言う子供もいた。
「何か学校の授業で習ったけれど」
「ほら、あの国だよ。東の方にある」
「あの島国じゃない」
「お金持ちの」
 他の子供達がその子供にこう教える。
「あの国だよ」
「何か着物着てるっていう」
「お魚を生で食べる国だよ」
「そう、その通り」
 ここで元気よく言うその日本人だった。
「それがお兄さんの国なんだよ」
「ふうん、お兄さんそこから来たんだ」
「日本から」
「そう、はるばる来ましたデンマーク」
 日本人はさらに話す。
「いやあ、ここは寒いねえ。雪は降ってるし」
「デンマークって寒いよ」
「ねえ」
「ヨーロッパの北の方にあるし」
「それは仕方ないじゃない」
「いや、それでも商売に来て」
 日本人は子供達の話を半分以上受け流しながら自分の話を続ける。
「このカップを君達にプレゼント」
「ああ、売ってくれるんだ」
「そうしてくれるんだね」
「他にも日本のものが色々とあるよ」
「どんなの?」
「どんなのがあるの?」
 子供達はその言葉を聞いてさらに話すのだった。
「それでだけれど」
「他には」
「何があるの?」
「これとか」
 今度はだ。扇だった。そして他には。
「これもね」
「ああ、それって確か」
「下駄?」
「それだよね」
「そう、日本の履くものだよ」
 こう子供達に宣伝するのだった。
「これもどうかな。とにかく日本のものなら何でもあるよ」
「ふうん、面白そうだね」
「じゃあ買ってみる?」
「そうする?」
「今買えば安くつくよ」
 日本人はここぞとばかりにこうも言った。
「さあ買った買った。遠慮はいらないよ」
「遠慮なんてしないけれどね」
「じゃあ僕この御湯飲みっていうのをね」
「私は扇」
「僕は下駄にするよ」
 子供達はそれぞれ小銭を出して買っていく。そうしてそのうえで買っていってだった。後にはホクホクとした顔の日本人が残った。
 その彼の前にだ。スコフコスはふらりと出た。それから彼に問うのだった。
「見ていたが」
「はい、何でしょうか」
「日本のものを売っているのだな」
「ええ、そうですよ」
 日本人は気さくに笑って彼に応えた。
「この通り。あらかた売れちゃいましたが」
「君は日本人なのか」
「そうです。欧州を行商しながら旅してはるばるここに流れ着いて」
「それでどうして日本のものを持って来た」
「あっ、実家が骨董品屋でして」
 彼はスコフコスにこのことも話して。
 
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