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ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~

作者:C.D./hack
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アシムレイトロイド編 愛、覚えていますか 番外
  暁の夜、白い過去

 
前書き
神崎さんの感想板で繰り広げられた誰も知らぬ戦い。その後の話です。
少し時がさかのぼり、GGO終了少し後です。 

 
 
 いつからだろう?こんなことになったのは。長い長い時を過ごしてきた。チャンスもようやく巡ってきて、うまいこと歩兵第2号を手に入れることができた。

 邪魔者はまだたくさんいる。ユキ、ルーク、二人のライトにダーク、リン、ジン、ミヤビ、リオン、ルスティグ・・・・・・殺すべき障害はまだ多くいる。

 激痛が腕に走った。骨は飛びてて肉に突き刺さり、白色と視認するのが難しいほどの血液が傷口から漏れ出し、周囲に飛び散っている。右足はまるで途中まで噛んだステーキのようにぐちゃぐちゃになっていた。

 再生能力は少しだが作用して傷口を塞ごうとしていた。弾丸を撃つ。怪我の原因であり、先ほど倒して傀儡と化した翡翠の黒の剣士キリトを呼ぶ。そしてワイヤーを使用させ、自身の手足の無事な部分より少し上を巻く。

「やれ」

 そう呟くと巻かれていたワイヤーが締まり、いとも簡単に僕の手足を切断した。少しだが痛みが和らいだ気がした。治るのを待つより、壊して最初から作り直したほうが早い。

 周囲は自分の血で真っ赤に染まっていた。周囲には白い白い雪が積もっていて、今も降り続けている。仮想世界での偽物であるはずなのに、綺麗と思ってしまう。何故か突然寒気がした。

 あぁ、寒い、なぁ・・・・・・

 そんなこと言っても、近くにいるのはキリトさんのみ。彼女はいない。だけどあと少し。別世界で手に入れておいたホープとソロ、ハートの能力を使えば全ては叶う。彼女が帰ってきてくれる。気を緩めると唐突に意識が遠のき始めた。

 暖かい光。周りに広がるのは自分を救ってくれるはずの光。寒くは無い。孤独でもないし、哀しくもない。何も考えられずにいることが出来ると思えるそんな場所だった。

 気づけば僕はソファで寝転んでいた。暖かい陽気に包まれ、居心地がとてもいい。ここには、闇など存在しない。大事なものを全て持って行ってしまう闇など。

「雪」

 捨ててしまって取り戻せないはずの名。そして失ってしまったはずの彼女の声。思わず背後を振り向いた。そこには、あの時と姿が変わらぬ彼女が立っていた。

「香、さん」

 愛すべき人。体のどこにも傷などない。僕は真っ先に香さんの服をひっぺ剥がした。襲うためでも何もない。ただ僕は重要なことを確認したかった。腹部を確認する。傷はどこにもなかった。

 この腹部の傷が重要なのだ。ないことを確認すると、いきなり涙が止まらなくなった。凄まじい安堵感。それに襲われているとビンタが頬にぶつかって熱を生み出した。

「なぁにすんだいきなり・・・・・・?」

 まずい、いつものに戻った。ユキたちは今高校生だが、僕は今23、彼女は24だ。その間に香さんは物凄く丸くなった。あくまで僕の世界でのことだが。

「そもそもなんで泣いてるの?なに?なんか辛いことでもあった?」

 逆だ。嬉しいから泣いている。もう涙が止まらなかった。良かった、これで繰り返さずに済む、傷つけずに済む。だけど。それは外からの声で一気に外へと追い出された。

「香さん!!まずい、逃げ・・・・・・」

 後頭部に衝撃。振り向けば人、人、人。中には笑う者、泣いている者、怒りに満ちた顔の者。一斉に武器を振りかざして痛みを全身に浴びせられる。

「死ね!!化け物!!」

 ガンッッという衝突音に似た何かの音と共に家のドアが蹴破られた。さらに外に溜まっていた人々がなだれ込んでくる。その間にも痛みは続く。男の一人が香さんに触れた。変身などしなかった。人を守る力だというのが彼女の心情だった。

 男たちが周囲に集まり、香さんの服をひん剥いた。全員、殺そうと思った。けれど、力が出ない。髪を掴まれて顔を無理やり上げさせられる。目を向けられなかった。今まで彼女が守ってきた意味はなんだったのか。男たちの玩具にされても香さんは何も言わなかった。

 不意に考えがよぎった。もしここが、過去の世界だとしたら?使わなくなったあの力が使えるのではないか?あの名前と共に捨てたあの能力が。全力で叫んだ。

「spirits!!」

 久しく感じた体に籠もる熱。腕の筋肉を増大させて周囲をなぐ。雑草を根から引き抜くかのような音が響き、周囲の人々の体がただの肉塊に成り下がる。香さんは、こちらを見て泣いていた。ギロリと視線を他の人間共に向けた。

 一斉に人々が逃げ始める。それを見計らって香さんを抱き上げ、家から出る。とにかく走った。見つからぬように。全速力で。
暖かさが失われていく。彼女の体が冷たくなっていく。

やめて ザザザザ、ザ
         ザザザザ、ザやめザザてザッ


                       ザザザザザ連れてザザザザザザザザッ

ザザザザイカナイデザザザザザザザッ!!!

ノイズが走った。

 偽物の世界での物語を傍観する者がいた。名をブックメイカー。物語創り。そして、それを笑いながら見るものたちが数人。

「ブックメイカー、この物語は相変わらず素晴らしいな」

「あの必死で犯された女を助けるところとかすごい笑えるよな。女は所詮、初めてじゃなきゃ楽しくもないただの玩具なのに」

 そう思っているのは貴様らだけだクズどもめ。彼はそう思いながら本を開いた。中に書いてあるのはsrrowの運命。これから後、哀しみは243回これを繰り返す。神様に逆らった不穏分子として、最期は楽しませてもらおうとこんなクソったれなストーリを彼は創らされた。

 できれば救ってやりたいと思う。けれど、ブックメイカーの命は神に握られている。だから、救ってやれない。そう思っているうちにも繰り返す回数は10を切った。驚異的な速度で繰り返している。その間にも神は笑いまくる。

 が、その笑い声が突然止まった。彼も画面の方に向き直った。そこに見えたのは。哀しみが愛する人を抱き上げている。そして。その愛する人に刺されていた。

「どういうことだ!ブックメイカー!!」

 神の一人が声を荒げたが、そんなものはブックメイカーの耳に入ってこなかった。バカな、予定では後3回繰り返すはずなのに。それが崩れた。彼の愛する人は泣いていた。そしてsrrowに向けて呪詛の言葉を放った。

「お前のせいだ。全部、お前の。」

 セリフだけはあっていた。けれどライダー能力で召喚されたナイフで刺されるなんて物語を紡いでいないし、泣くなんてこともしないはず。そして。画面の中で泣きながらsrrowは糸の切れた人形、否、屍体となった愛する人を地面にそっと置き、ゆっくりと顔を上げた。

「クソッタレな神様ども。彼女の命を奪ってくれたことは許さないが感謝する。これで彼女の死という事実まで奪われていたら僕は完璧にキれていただろう。彼女は僕が殺した。貴様らに取り戻されたら、今までの犠牲が全てパァだ」

「だけど。こんなことは・・・・・・ッ!!もう二度と味わうものか!!ご丁寧に闇の中から彼女の意識まで救ってきて仮初の肉体の中に入れたんだな!!さすが神だな、俺が何回も繰り返してやろうとしてることを、いとも簡単にやってのける。あれは僕が取り戻さないといけない、謝らなきゃいけない。それをこんな形で会わせやがって!!」

 バリンと。不可解な音と共に画面が割れて手が出てくる。バキメキバキゴキバキンゴキミシミシ!!という不可解な音を引き連れて。

 それはやってきた。人間の形は保っている。だが、あれはなんだ?猫背になった背からは右左に骨のようなものが4本ずつ、計8本飛び出ている。真っ黒なボディ、だらんと下がった両腕、装甲のようなもので覆われた全身に、ぎょろりと光る黒黄の瞳。

「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッッ!!!!!!!!!!!!!」

 咆哮がほとばしり、10人いた神の体をそれだけで木っ端微塵にした。周囲に広がる臓物、血の匂い。肉塊がそこらじゅうに散らばっている。これが怪人態であり能力。その名も《Sunday of Forgiveness》。意味は赦罪の日。そしてこの怪人態だけに許された能力。それが天中殺。またの名を空亡。

 ブックメイカーを哀しみは見た。その恐ろしく冷たい目と血濡れた全身をあらわにして。哀しみは驚いた。ブックメイカーは泣いていた。ホープの能力で哀しみは理解した。ブックメイカーは泣いていたのは、恐怖からではない。自分が彼をこんなことにしてしまったという罪の意識からだった。怪人の姿のまま、哀しみはブックメイカーへと近づいた。

 感情が変化して、殺されてもいいとなった。哀しみにそんな気はなかった。そして、口を開いた。

「ありがとう」

「え?」

 ブックメイカーは俺を言われる理由がわからなかった。ブックメイカーには、哀しみが笑っているように見えた。


「そう思ってくれる人がいるだけで僕は幸せだ。ありがとう。君のせいで僕がこうなったとしても、僕は君に感謝する。彼女に会わせてくれてありがとう。そして、さようなら」

 そして哀しみはサムズアップをした。彼もユキである。行動は同じだ。

 哀しみは去り、ブックメイカーは一人取り残された。すでに哀しみは物語というものから逸脱している。自分の手には、どうしようもない存在に。手伝ったら別の物語が壊れる。それはいけない。あの優しさを失わないようにするにはどうしたらいいか。

 止めるしかない。止めて、なんとか新しい物語を歩ませるしか手がない。神の事など聞かずに、ただ幸せな未来を。ブックメイカーは役職の仕事を放り出して、初めて自分の能力を自分のために使うと決めた。 
 

 
後書き
いかがでしょうか?天中殺とホープの能力はこのまま行けばチートですドチートです。
神崎さんにはここで宣言します。どうぞ、感想の戦いをお書き下さい!!データはのちに送るので。

感想・コメント・アドバイス・誤字・脱字・評価ありましたら下さい!! 
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