元虐められっ子の学園生活
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暗躍する葉山グループ
キャンプファイヤーとは、キャンプで焚き火を囲んで行われる行事である。
集い・儀式的な要素を持つものを総称としてそう呼び、単にキャンプで焚かれるというだけの火は、キャンプファイヤーとは呼ばれない。
キャンプ以外の祭事などで火を焚く行事は、ボーンファイヤー、ファイヤーラリー、ファイヤーストームなどと呼ばれる。
尚、ボーイスカウトでは「営火」とも呼ばれる。
キャンプファイヤーには「親睦の火」や「儀式の火」とも呼ばれる親睦の儀式である。
儀式の細かい内容は様々であるが、儀式的な要素を用いて徐々に火の世界を作り上げる。
盛り下がりは神聖さを重視し、雰囲気に重点を置き、キャンプファイヤーの最後は火の神の言葉を拝聴し、友情の火の誓いを立て、終了とすることが一定の流れである。
この呪術的かつ宗教的な儀式は火の神への崇拝が起源であるが、発祥地および宗派や呪術の流派といった起源は不明である。
火を囲んで、『オクラホマミキサー』などでフォークダンスをするキャンプファイヤーはアメリカ合衆国が発祥である。
日本には戦後、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) により持ち込まれ、学校教育の中に取り込まれた。1970年代ごろまでは多くの高等学校で学園祭の後などに実施されていたが、騒音や風紀、防火などの理由から徐々に行われなくなり、現在では学校の敷地内で火を焚く例はほとんどみられなくなった。
この事から、キャンプファイヤーとは学校行事に置ける親睦を深める儀式なのである。
「…………」
現在、夕食として作ったカレーを食す場で葉山だけが下を向いて沈んでいた。
理由は明確。
カレー作りの最中に雪ノ下から論破講習を受けた瑠美ちゃんに爽やかスマイルで近寄ったのが運のつき。
「変態」と言うレッテルをやけに響く声で発言されてしまい、近くにいた小学生に『葉山隼人は変態である』という認識になってしまったのだ。
「隼人…気にしない方が良いって。ほら、小学生が言ったことなんだしさ」
「……ああ」
金髪女子が葉山を慰めるのだが意味をなさない。
「どうかしたのかね?」
「ああ、葉山がとある女の子に手を出そうとしたところ、フラレて沈んでいるところです」
「テキトー言うなし!
隼人がそんなことするわけないじゃん!」
「……………」
庇いだてする金髪女子。
俺の言葉に反応するその目は絶対的な信頼を示している。
こんなやつの何がいいのか…理解に苦しむ。
「落ち着きたまえ。
それで?何がしたいのかね?」
「…俺が話しかけた女の子は同じ班の子からハブられているんです」
「だよねー…かわいそー」
可哀想……ね。
そういった外面しか見ることの出来ない奴がいじめられっ子を寄せ付けなくしていると気づかないんだよな。
「ふむ。君達はどうしたいのかね?」
「俺は…可能な範囲で何とかしてあげたいです」
「可能な範囲で…ね」
「お前にゃ無理だろ」
「っ………」
元々俺に絡んできたお前がこの件を解決に持っていけるとでも思ってんのか?
「雪ノ下、君ならどうする?」
「そもそもこの件はもう解決に向かっています。
今更私たちが手を出す必要もないかと」
確かになぁ…夕食後にちらっと見たけど、瑠美ちゃんの班の子達全員泣かされてたし。
こうなってくると雪ノ下に任せたのは早計だったかな?
「そうか。まぁ解決しようがしまいが、この件は君達に任せる。私は眠いから寝る」
そう言って去っていく平塚先生。
このパターンは離れたところで盗み聞きするやつだな。
「つーかさぁ、あの子結構可愛いし、他の可愛い子とつるめばよくない?
話しかけるじゃん?仲良くなるじゃん?余裕じゃん」
「それだわー!由美子冴えてるわー!」
「だしょー?」
頭の悪い二人は置いておこうかね。
取り合えず瑠美ちゃんはもう話すことはすべて話したし、これから先に他の子が間違っていたと気づけば問題は無くなっていく。
しかし、今ここで誰かが余計な手を出してしまえば状況は悪化の道をたどるだろう。
「あなた達、さっき私が言ったことを聞いていなかったのかしら。
この件はもう解決に向かっているの。下手に手を出さないでちょうだい」
雪ノ下もわかっているみたいだな。
「はぁ?あの子今でも虐められてんじゃん。
雪ノ下サン目ぇ腐ってんじゃないの?」
「言われているわよ比企谷君」
「ちょ!今の話の何処に俺が関与している文脈があった!」
「まぁまぁヒッキー…」
奉仕部は何時でも平常運転か。
この光景にもなれてきたなぁ…。
「あーし雪ノ下サンに言ってんだけど。シカトしないでくんない?」
「なら反応してあげる。
貴女が言う虐めってどんなものなの?どういう理由で起こるの?
どうやって解決に持ち込むの?その解決方法に後腐れはないの?」
雪ノ下の攻撃。論破トーク。
「は、はぁ?何言ってんのか分かんないんですけど!」
三浦は逃げ出した。
「この程度の行程も建てられない貴女がこの件を解決しようなんて、底脳にも程があるわね?」
「くっ……だったらアンタがやってみなよ!
そんなに言うなら解決出来るんでしょ?!」
「何度言えば分かるの?この件はもう解決に向かっているの。
もう私たちが手を出す必要はないわ。分かったかしら?」
もう三浦の敗けが目に見えてんだけど。
つーか回りのやつらも皆唖然としてるぞ。
「お兄さま…」
「ん?どした?」
「雪ノ下さんは…あの方がお嫌いなのでしょうか?」
「んー、まぁそうなんじゃねえか?
昔陰湿ないじめをしてきたやつらに似てるって言ってたしな」
「そうですか…なるほど」
陽菜はそれっきり黙ってしまう。
顎に手を当てて考える仕草をとってはいるが、何を考えているのかはわからない。
雪ノ下になにか思うことでもあるのだろうか?
「だったらこうしよう。
僕らと君達でふたてに別れて解決法を探る。
それならお互いに切磋琢磨できるし、解決にも導ける」
「貴方ねぇ…「やってみろよ」鳴滝君!?」
「おい鳴滝…」
「そのかわり、もしもお前らが瑠美ちゃんに何か害することをしたのなら…
俺は全力で潰しにかかる。よく考えて行動するんだな…」
「…ああ。君には負けない」
一体何と戦っているのやら?
「ツクモン…」
「問題ない。アイツらがどうしようが、保護者側として全力で瑠美ちゃんを守る」
「それとなく犯罪宣言に聞こえるのは俺だけか?」
「奇遇ね。私もそう聞こえたわ」
「お前らね……」
こうして夜は更けていった。
アイツらが行動を起こすとしたら、恐らく明日の肝試しだろう。
「せいぜい頑張るんだな……」
俺は去っていく葉山達を見ながらそう呟くのだった。
「なぁ雪ノ下…」
「何かしら比企谷君」
「今更ながら鳴滝が怖いと思っている俺がいるんだが…」
「あら、頼もしいじゃない?」
「ですよね!お兄さまは素晴らしい方なのです!」
「陽菜ちゃんはツクモンが大好きなんだね!」
「えっへへへ…」
「小町もお兄ちゃんが大好きだよ!あ、今の小町的にポイント高い!」
「最後のがなけりゃ良かったのによ…」
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