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元虐められっ子の学園生活

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弟子入り志願

苛めとは、人間社会における陰湿な行為だと言えるだろう。
判断材料としては「立場の互換性がない」、あるいは「力関係の差」が存在する。
つまり、「いじめる」側と「いじめられる」側がしばしば互いに入れ替わったり、「強い」立場の者が「弱い」立場の者をいじめるという構図にあてはまらない場合には、じゃれあいやケンカなどとみなされる場合もある。
なお、ここで言う「強い」、「弱い」という言葉は、腕力や発言力などを指すものではなく、あくまでも集団内での「立場」を指し、たとえば発言力の強い者がまさにそれゆえにいじめの対象となることもありうるのである。
しかしながら、例外は存在するだろう。
やはりそれらもまた、悪質な苛めに過ぎないのだ。
被害者を助けようものなら対象がその者へと移り変わり、被害を被ることは過去の事件等で立証されている。
ならいじめを無くすことは出来ないのか?と聞かれれば間違いなくできる。
だが、それをしようとしないのが人間なのである。
仲裁に入ったものがいるのならば決まってこう言うのだろう。
『苛める方も悪いが、苛められる方にも原因はあるのだよ』と。
そう言った発言が苛めを助長していると考えずに発せられ、その影でまだまだ続くと理解しないその者こそが、苛めの主犯なのではないかと私は思う。
そうした偽以連鎖が、苛められる側を作り出しているのである。












「いぃや小学生マジ若いわ~!
俺ら高校生とかもうおっさんじゃね?」

「ちょっとやめてくんなぃ?あーしがババァみたいじゃん」

何とも頭の悪い会話をするのは糞葉山の取り巻きである『煩い奴』と『低脳女子』である。
もっとも名前は違うだろうが、俺からすればそれで十分だ。

「でも、僕が小学生位の時は高校生って凄く大人に見えたなぁ」

「小町から見ても高校生って大人~って感じしますよ…兄を除いて」

「おい!俺めちゃくちゃ大人っぽいだろうが。
愚痴を溢したり、汚い嘘ついたり、卑怯なことしたり!」

「ヒッキーの大人のイメージってそんな悲しいものなんだ…」

「成る程な。確かに大人の典型だ。
比企谷は大人の鏡のようだ」

「そうだろう、そうだろう」

「何でそんなに嬉しそうなの?それ絶対誉められてないよ」

まあ、誉めたつもりはないんだがな。

「ねえ、あの子達は何してるのかしら?」

雪ノ下が見ていた方を反射的に見てみる。
そこには女子グループであろう小学生が何やら騒いでいるようだった。

「ちょっと見てこよう」

葉山は無駄にリーダーシップを発揮して駆け寄っていく。
しかし……

「あれは…瑠美ちゃん?」

「何故知っているのかはこの際聞かないでおくわ」

「おい、汚物を見るような目で見るな。
あの子は鶴見先生の娘で、たまにだが家で飯を食うときがあるんだよ」

最近だと頻度が減ったが。

「お兄さんすごーい!」

「気持ち悪くてさわれないよー!」

……どうやら省きにされているようだな。
家に来たときは結構明るい性格だったと記憶しているが…。

「ほっといて良いの?知り合いなのでしょう?」

「ここは様子を見るのが正解だ。
あの馬鹿のように何も考えずに躍り出ていくのは省きの助長にしかならない」

「確かにな…」

瑠美ちゃんは暗い表情で首から下げられたピンクのカメラを弄っている。

「お兄ちゃん!大変大変!」

「どした小町」

「あの人イケメン過ぎるよ!お兄ちゃんに勝ち目がない!」

「ほっとけ…」

「お兄さま…あの方に何か嫌な思い入れが?」

「いや、気にする必要はない。
あれが何をしようと、そのまま自滅することを心から祈ってるくらい気にしてないからな」

「(それ気にしてるよね…)」

そんなこんなでチェックポイントを探す手伝いをすることになった俺達は、とぼとぼと歩くこと数分に件の周辺に来ていた。

「久しぶり、瑠美ちゃん」

一人、グループから外れて歩いてきた瑠美ちゃんに片手をあげてそう言った。

「あ、お兄さん!」

俺を見た瞬間、前までのように飛び付いてくる瑠美ちゃんは笑顔になっていた。

「瑠美ちゃん。何かあったのか?
余り馴染めて無いよ「ここにいたんだ」…葉山」

瑠美ちゃんに事情を聞こうとしたところで制止を喰らってしまった。
振り替えれば葉山かいて、満面の笑みで瑠美ちゃんに手を差し伸べている。

「さ、皆まってるよ?一緒にいこう」

また、皆か……。

「悪いがこの子は足を捻ってしまっている。
慣れていない山道だ。そう言うこともあるだろう。
お前はさっきまでのようにあの子達に自慢の笑顔を振り撒いてろ」

俺の裾を掴む瑠美ちゃんを後ろに隠して葉山を睨み付ける。

「なら、尚更ほっとけないな。
救護テントに運ぶから代わりにあの子達の面倒を見ていてくれないかな?」

「断る。俺はこの子に着いていなくてはならない事情がある。
お前のような腐った布教を振り撒く輩に任せるわけにはいかない」

「僕は今回のまとめ役として平塚先生から委任されているんだ。
それに一人を贔屓目に扱うのは周りからの反感を買うことになるけどね?」

「確かにお前の使用としていることはそう言うことなんだろうな。
何故この子に執着するかは知らんが、お前には指一本触れさせんし、近づかせもしない」

「…俺よりも君の方が贔屓目にしていると思うんだけど」

チッ……このままじゃ埒があかんな。
こうなったら…!

「比企谷!雪ノ下!」

「どうした?」

「何かしら?」

俺は近くにいた二人に声を掛けて呼び出す。
直ぐ様駆けつけてくれる二人には少しながら感動を覚えたのは仲間意識があったからだろうか?

「悪いがこの子は足を捻っている。
二人が付き添って救護テントに案内してやってくれ」

「……わかった」

「了解よ」

一瞬だが、二人は俺の目を見たあとに事情を察してくれたのか直ぐに頷いて連れていってくれた。
瑠美ちゃんは心配そうにしながらも足を引きずる演技をして二人に着いていった。

「これなら問題ないよな?
お前はさっきまでの行動がとれるし、俺も行動に移れる」

「鳴滝…」

「お前が何を思ってこのオリエンテーリングに参加したのかは知らん。
だがな、俺はお前と行動内容が被っても仲良くなんて絶対にしない」

「なら、今の子を庇っていたのは俺へと対抗心ってやつかな?」

「お前が上であると言う認識からその解釈になったことは解った。
そう思いたいのであればそう思え」

「ふっ…ならそう思うことにするよ」

そう言って葉山は子供達の方へと戻っていく。
茂みの向こうからは「お兄さんおそーい」等の声が聞こえてくる。

「その思考も、直ぐに覆してやるからな」

俺は比企谷達の歩いていった方へと走り始めた。















「鳴滝君、こっちよ」

救護テントの前。
比企谷と雪ノ下、そして瑠美ちゃんが3人で固まり、俺を見つけると雪ノ下が手をあげて場所を知らしてくれる。

「ありがとな。事情を察してくれて」

「まぁ、由比ヶ浜だと逆な思想に回りそうだしな」

「そうかしら…由比ヶ浜さんも空気の読める子だと思うのだけど」

「まぁ何にせよ助かった。
あのまま行けばやがては連れ去られていただろうしな」

まず子供達にばれて、騒がれて、先生が来て、人柄からアイツが選ばれて―って具合に。

「その言葉を聞いた限りでは、葉山君はロリコンの疑いがあるのね」

「否定は出来んな。
瑠美ちゃんは可愛いし、将来美人になるのは約束されているようなものだ。
それを執着に連れていくことを主張するってのは疑いを掛けられることも同義だろ」

「何なのアイツ。お前に対抗心でも燃やしてるの?」

「そんなもんだろうな」

しかしこの後は夕飯作る作業があるし、俺自身付きっきりでは居られない。
幸いなことにテントには平塚先生しか見当たらないし本人は眠ってる。

「瑠美ちゃん。何があったか聞いて良いか?
勿論無理にとは言わないが、先生に言われると困ることなら、黙っていると約束しよう」

「………ん。
誰かをハブるのは何回かあって……そのうち終わるだろうって、気にしてなかった…。
何時も誰かが言い出して…皆もなんとなくそう言う雰囲気になるの。
そんなことしてたら…いつのまにか私がそう言うことされるようになってた…」

因果応報…か。
正直瑠美ちゃんが悪いとは一概に言い切れないが……間が悪かったのだろう。

「別に…何かした訳じゃないのに……中学でもこんな風になっちゃうのかな……」

「「……」」

「ふむ、確かにこのまま行けばこの省きは苛めに変化し、悪質なものに変わっていくだろうな」

「っ……やっぱり、そうなんだね…」

「でもな、今を変えれば多少は変わっていくんだぜ?」

まぁ変えるにしてもちょっと難しいだろうが。

「…ホント?」

「ああ。
何せここには饒舌毒舌論破女王のユキペディアさんがいるからな」

「鳴滝君、後でお話があるから。逃げないでね」

「……………………………………とまぁこんな感じに威圧感も半端ない」

「(すっげぇ長い間があったな)」

「だから瑠美ちゃん。
雪ノ下に論破のやり方とノウハウを教えてもらって、あの子達を口撃してやればいい」

「説明に怒りを覚えるのだけど、いい考えではあるわね」

「確かにな…毎日のように言われ続ける身としてはこれ程の適任者はいないと思うぞ」

「比企谷君。貴方も後でお話があるから。」

「……鳴滝」

「逝くときは一緒だ……!」

俺と比企谷はお互いに怯えながら握手をした。
瑠美ちゃんは雪ノ下に向き直り、真っ直ぐ目を見て頭を下げた。

「お願いします!私に論破を教えてください!」

「そのお願い、承ったわ」

「(なぁ比企谷、俺達は事の顛末を見ることが出来るかな?」

「(………できるといいな……」

「二人とも」

「「はい!」」

「覚悟しておいてね?」

ニッコリ笑っていい笑顔♪
俺らからすれば閻魔の怒顔♪
ユキペディアさんは去っていく~♪
瑠美ちゃんを従えて~……♪





そのあとのカレー作りの最中。
俺と比企谷は雪ノ下に散々論破されまくった。
口答えしようにも全面的に俺が悪い分、言い訳も効果を発揮しなかったのだ。

そして瑠美ちゃんに「カレー、好き?」と聞いてきた葉山は、「近づかないでもらえるかしら?変態」と言われ、それを聞いた俺達は密かに笑っていたことを記す。 
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