ジョジョは奇妙な英雄
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DECIDE
DECIDEの拳が風を切り、千城と共に距離を詰めるとカラワーナはたじろいだ。自らのスタンドはカラワーナには見えていない。アーシアを護る為、という強い意志はスタンドのパワーを上昇させるのに十分な活力となったようだ。
「馬鹿な!?これほどの力をいつの間に!?」
「教えてはやらねー。俺はお前みたいな奴が嫌いなんでな、此処で終わらせてやる」
「くッ……!これが“カトブレパス”か!」
カラワーナの額には芽が見える。DECIDEの視力によって確認できるが、明らかにそれは堕天使の特徴には見えない。何か第三者によって『植え付けられた』という表現が正しいだろう。カトブレパスという単語を知っているのは父親の上司であった魔王少女と家族と生徒会長くらいだ。
あとはレイナーレだろうか。
「てめぇ、何を知ってやがる!?」
「何を、だと?一通りは知っているさ、レイナーレ様が我々を裏切って悪魔の犬のほうに走ったとな!その顔つき、傲慢な態度。なるほど、あのお方が仰っていた男と似ている。つくづく憎たらしいものだ。アーシアを取り戻した後はお前の家族を殺し、レイナーレ様を連れ帰るとしようかッ!」
カラワーナが武器として使用している光の槍はリーチが長い。手中から現れたとき、引き抜く動作をするのと同時に千城は距離を取る為に後退するが光の槍をカラワーナが突き出したのと同時に腕を交差させた。その動作と同時にDECIDEの腕も交差して光の槍を弾く。
光の槍で転生悪魔となった者の血を引く、半人間の千城に負傷させたと思ったが効果がなかったようだ。なにかを確かに千城は『行っている』ようだが、それがわからないことt姿が見えないのがカラワーナの恐怖を煽る。
「苦戦してるようッスねぇ?俺っちが来てよかったよかった」
『全く、絶っっっっ対勝機なさそうだったからな。俺とフリードがきてよかったぜ。ニンゲン?カトブレパス?どちらか分からないが、その娘を貰おうか?』
「……誰が渡すかよ。珍しいな、剣が喋っているのか?」
DECIDEのパワーで光の槍を折ろうと試みる千城だったが、カラワーナとの間に白髪のカソック服姿の少年が立つ。凶悪かつ凄惨な笑みを浮かべ、魔剣らしきものを持っている。
有名な某小説は言葉を話す武器、インテリジェンスウェポンの典型のものをフリード戸呼ばれた少年は持っている。確か夢美は剣の使い手と聞いたが、魔剣の使い手である神父とどちらが強いだろうか。
「優しい優しいセンジョーちゃんは知らないでしょうねぇ?テメェと関わってたことも教会から追放された理由の一つなんだよ!」
「……!」
「センジョー……!」
今、こいつは何と言った?
フリードは嬉々として事実を告げる、少しずつ進む秒針。懐に収めている懐中時計は時を進めることを止めず、心臓の鼓動も早くなる。フリードは千城は全く知らないのを知らず、口を滑らせた。アーシアが千城の裾を掴む。自分を想ってくれる彼だからこそ、危険な目に遭わせたくなかった。
この事実を教えたくなかったのだ、きっと昔と変わらぬ正義感とお人よしで渦中に飛び込んでくるから。
「だから、どうした?俺は俺のやりてェことをやるだけだ。追放されちまったなら、俺が護ればいい。ただそれだけだ、変わりやしないさ。違うか?エセ神父」
「へぇ、アツアツッスねぇ~~?どうするんスか?カラワーナ様」
音を消し、迅速的に、そして力強く拳を振るうと魔剣はその身を刃から現して拳を受け止めた。二ィ、とDECIDEの拳を受け止めて笑っている。まるで、カラワーナとの近接戦を窺っていたのだと主張するように。
―――今のも、覚えたぜ?
そう言っているように見えた。
「……つい熱くなってしまったが、目晦ましでもして取り戻せ」
「了解っと。行くぜ、『アヌビス神』!」
「誰が渡すかよッ!」
フリードがカラワーナの指示を仰いだ後、フリードがアヌビス神と呼んだ魔剣の名。何故か刃が伸びて見え、それが的確にDECIDEの拳を貫くと千城の中指が裂けて鮮血が噴出す。まるで果実の皮から撫でるようにナイフで切れ、果汁が溢れるように柔らかで滑らかな動作で。
『スタンドの攻撃が本体にフィードバックするタイプのようだなァ~~ッ?ざ~んねんながら!』
「別にいいじゃねーか。別に厄だなんて思っちゃいねえ」
帽子が傷ついていないならば問題はないのだ。
帽子を血がドッと噴出したことで赤く染まった、その右手で帽子のエンブレムを擦りながら不適に笑ってみせる。半獣半人のスタンドヴィジョンを見せたアヌビス神はすぐに刀身に戻っていき、千城をせせら笑うものの千城はきっぱりと否定した。
「センジョー!手から血が……」
「あとで治してくれ。大丈夫だ、頑丈さには自信がある」
「アツアツッスねぇ!?」
DECIDEの拳をアヌビス神の側面で受け止めると、フリードは吐き捨てたように言う。
アーシアと千城のやり取りを見て気に入らないものがあったのだろう、突きがより一層激しくなる。拳で迎え撃っていたDECIDEと千城だったが、流石にそろそろ限界だったので腕を交差させて受け止めるが拳撃による攻撃さえも覚えてしまったようで攻撃をほとんど同威力で跳ね返された。
これでは本気のラッシュを繰り出してしまった後、吸収されてしまったら終わりだろう。
そのままの力を覚え、そして返してくるのだから。フリード自身の剣技もあり、ガードを崩す方法も心得ているようでパワーに頼りがちな戦法では身を滅ぼすのが先だ。どこまでスタミナが続くのか分からないし、底知れない相手なので観察が必要だが時間すらも与えてくれない。
「しつこいなぁ。そんなにアーシアたんが欲しいなら、こっち来れば?俺っちは歓迎するッスよ?」
「誰がカトブレパスの子を迎え入れるものか」
「おやおや、これは苦しい。雇い主に言われちゃあ、仕方ないッスねぇ。そういうことなので倒れてくれませんかね?」
フリードの様子が先ほどとは違い、一歩一歩近寄ってくるものの殺気が段違いだ。おそらく、これから放とうとしているものは言葉とは裏腹に殺す気でかかってきていると見える。
「や、やめてください!フリードさんっ」
「うん?アーシアたん、どうしたの?」
「これ以上、センジョーを傷つけないで。私が行けばいいんですよね?そうしたら攻撃はしないでもらえますか?」
指先から溢れる優しげな光は千城の手を包み、千城の自分より大きな手に触れてアーシアは治療を行いながらカラワーナに、フリードに、そしてアヌビス神に語りかけているようだ。大人しく、優しい性格だと思っていたアーシアの豪胆な行動。彼女を思うゆえ、戦いに入ってきた際は大声を出すのが普段の千城だったが強い意志を秘めた目を見ていると言葉が喉に詰まって言うのをあきらめた。
張り詰めていた感情の糸が切れたことでDECIDEは霧消して千城の中へと戻り、膝をついてしまった。
「えーっ……どうします、カラワーナ様」
「本人がそういうならば連れて行け。カトブレパスの忘れ形見は動けないようだからな」
「待て!まだ終わってねェよ!」
アーシアが彼らのほうに治療を終えてから向かっていくと、アーシアは千城の方に振り向いた。その表情は悲しそうで最後に見たときとは違い、少なくとも天気は晴れやかでなかったし千城はある意味の衝撃を受けた。
さきほど、自分の手で護ると誓ったのに。
「大丈夫です、センジョー。黙っていたのは悪かったんですけど、また会えますから。……そんな顔しないでください、笑顔の貴方は素敵なんですから。―――大好きですよ、センジョー」
「アーシア!」
手を伸ばすも、カラワーナに言われてアーシアはフリードらと共に足を進める。最後に見たのは可愛らしい、はにかんだ笑顔ではなく悲しげな表情だった。手を伸ばそうとするも、引っ込めざるをえなかったアーシアを見て千城は無力感を感じた。
後書き
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