英雄は誰がために立つ
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Life9 聖書の子らの新たなる道 -三竦みの会談-
英霊を召喚できるようになった伏羲――――レヴェルは、呼び出し放題とは言うがまず触媒を用意しなければランダムに召喚される上、一度死んだ英霊は英霊の座に還った後10年は再召喚不可能なのだ。この召喚法に限ればだが。
更に、英霊とは最高級のゴーストライナーだ。そのままでは到底制御不可能な為、聖杯戦争ではないが7つのクラスのどれかに当てはめなければならない。
そして最後に、英霊側は基本的に召喚に応じるか否かを選択することが出来る上、召喚者との契約での報酬を要求する事が出来るのだ。勿論、英霊の願いをだ。
前払いか後払いかは別としてだが。
閑話休題。
人間界、某所―――――――。
聖書の三竦みの会談開始から30分後。
「――――術式解除・・・・・・お目覚めですか?バーサーカー」
とある屋敷内にて、レヴェルと言う老人がバーサーカーを留まらせる術式を解除した。
「・・・・・・ここは、何所だ?」
「そんな事どうでもいいではありませんか?貴方にはこれから禍の団を率いてもらい、駒王学園を根城にしている6人の圧政者及び走狗達を蹴散らしてほしいのです」
レヴェルの告げた『圧政者及び走狗』と言う言葉を耳に入れた瞬間に、バーサーカーの瞳の中に感情面が喜色と狂気に変貌した。
「ふははははは!圧政者及び走狗とな?良かろう、このバーサーカーにすべて任せておけ!!」
「走狗は勿論、圧政者も油断ならぬほど強大ですが、支援及び援護の程は如何しましょうか?」
「いらぬ、要らぬ!このバーサーカーがすべて薙ぎ払ってくれるわ!――――立ちはだかる壁が強大であれば強大であるほど―――勝利した時の凱歌はさぞ叫び甲斐が有るだろう!」
叫ぶ度に、この堅牢に作られている屋敷の一室の壁から悲鳴が上がる。
つまり、このバーサーカーと呼ばれている巨漢がそれほどまでの存在密度と強大さを露わにしていた。
「周りの家屋を破壊して、無辜の民を巻き込んではなりませんよ?それでは、圧政者達の思う壺ですから」
「ヌハハハハ!分かっておる判っておる!虐げられし無辜の民を救済のための聖戦において、我が力で全て守り通すわ!!」
「既に彼方には、禍の団の同胞の構成員である魔法使い達が攻勢をかけていますが、味方ですので攻撃しない様に」
「このバーサーカーを舐めるでない!敵と味方の判別もつかぬほど―――狂ってはいない!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな大言を吐いた後、丁度タイミングが来たようで足元の魔法陣によって転送されていくバーサーカー。
「よく会話が成立したね?アレはバーサーカーなんだろう?」
この部屋の薄暗い部分から、青と黒を基調とした魔術師然とした服装に金色の仮面を付けた人物が現れた。
それに対し、彼の魔術師に視線も合わせずに口を開くレヴェル。
「アレの好みそうなキーワードを散りばめれば一応、通じるのですよ。ですがそれ以外では無理ですね。あれも立派に狂っていますので・・・・・・事細かな指示や作戦方針など聞きもしないでしょう。ですがそれでも構いません。捨て駒兼陽動には十分ですから」
言い切った後に漸く振り返るレヴェル。
「あちらは如何ですか『キャスター』?」
「既にゴーレムは投入しているよ。弱い奴や中堅までなら、即急で出来るからね」
『キャスター』と呼ばれた人物は淡々と述べる。
「結構。それでは手筈通り、バーサーカーのマスター役はお任せします。キリの良さそうなところで爆弾にでもしてください」
「了解した・・・・・・ところで例のモノは如何かな?」
「申し訳ありませんが、もう少し時間がかかります。この世界では魔法と魔術の真実も違う上、一流でも悪魔の魔力器官を研究した上での魔法使いでは駄目でしたからね。原初の魔術器官――――魔術回路を持った者の中でも一流の魔術師となりますとね」
この2人はある契約上で繋がった関係だ。キャスターが求めるのは魔術回路を具えている一流の魔術師。故にこの世界の多くの魔法使いでは論外だった。
「そうか・・・。いや、すまない。事を焦り過ぎた様だな」
「ご理解感謝します。しかし、契約は契約。遅くとも3ヶ月以内には見繕いますので、如何かご辛抱を」
「3ヶ月・・・。解ったよ。どちらにしても僕ではこの世界で探す当てもないし、任せるしかない様だね。――――取りあえず、契約は契約。仕事をして来よう」
その言葉と共に、自分の足元に魔法陣を出現させて転移するキャスター。
それを見送るとレヴェルは、誰かに呟くように口を開く。
「『アサシン』」
「此処に」
言葉と共に、瞬時に出現する黒子の様な人物。片膝を折り、頭を垂れる。傅く様な姿勢だ。
『アサシン』と呼ばれた人物は、漆黒のローブに身を包み白い髑髏を模した仮面で貌を覆い隠している。
「彼方では今、カテレア・レヴィアタン殿と例の・・・・・・・・・と共に強襲中で御座います。そして、脆弱な魔術師の群れに、『キャスター』のゴーレムも投入されていますので今こそ好機かと」
「そうですか。では――――――拘束中のバルパー・ガリレイのみを奪取しなさい」
――――と。レヴェルはアサシンに告げた。
-Interlude-
深夜。駒王町内、駒王学園。
時間は遡る。現在会談開始1分前――――。
場所は、新校舎内の職員会議室。
出席しているメンバーは、堕天使陣営、神の子を見張る者総督アザゼルに現白龍皇ヴァ―リ、天使陣営は現天界トップの大天使ミカエルと控えの上位の女性天使、悪魔陣営は現魔王の4人中2人のサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンに控えでグレイフィアだ。
それにゲストとして、この会談の立役者たるルオリア・C・クロムエルも出席している。
因みに、壁際の座席にはソーナ・シトリーが座っている。
そんなそうそうたる人物が集まる中に、ノック音と「失礼します」の声と共にリアス・グレモリー及び眷属らが入室して来た。
そこで、既にこの部屋の中に居たアザゼルと目を合わせてしまった一誠。
そんな一誠の反応を楽しむように、口元を吊り上げるアザゼル。
そんなやり取りなど気にせず、サーゼクスが各陣営に紹介してからソーナ・シトリーが座っている壁際の座席に座るよう指示をする。
これで全員集まって漸く会談を始められるかと思いきや、アザゼルが疑問を口にする。
「幻想殺しは?」
「ああ、彼なら――――」
-Interlude-
同時刻。
駒王町、駒王学園敷地外。
そこに、固まりつつ近づかない様に聖書の三勢力――――つまり、天使、堕天使、悪魔の群れが駒王学園を囲むように少々離れた場所で陣を取っていた。
そして、他の陣からも距離を取りつつ鉄製で出来た黒い物体のチェックをしていた一人の人物が居た。
その人物こそ『幻想殺し』こと、藤村士郎だった。
服装は何時も通り幻想殺しの格好、鉄製の黒い物体とは士郎と彼自身の知り合い、5人の内の2人との合作の大型のスナイパーライフル。
「――――ふーーーっ」
士郎は、スナイパーライフルを手にしてスコープを覗きながら、不備が無いかのチェックをしている(と言っても、解析魔術を使ったが念のため)。
ここで話が変わるが〇〇士郎と言う人間は平和主義者だ。
――――とは言っても、一切武器を取らない人種では無い。
必要であれば武器も取る上、引き金を引くことも躊躇いはしないだろう。
常に自分は強いとは思わず、故に他よりも努力を繰り返し鍛錬を怠る事は無い。そして、そこに慢心も無い。
しかし、規格外な魔術特性一つとっても強力である士郎は、平穏を望みながらも戦闘向きなのだ。
閑話休題。
そんな士郎は、今回の会談出席者の中での―――に目を付けていた。
その人物の主義趣向は、とてもこの和平を結ぼうとしている会談には似つかわしく無いからだ。
「仕込みは済んでいる。あっちから来てくれたおかげで手間が省けた」
――――そして―――――時には仕留めるだけだ。
そんな風に思いながらも、取り越し苦労であってくれれば・・・・・・とも思っていたが、それは無いだろうと言う想い――――いや、予感の方が強い様だ。
-Interlude-
「――――と言う事で、彼はある義理から幾つかの頼み事も引き受けてくれていたが、求めた事は無いが彼は私に忠誠を誓っている訳では無いのでね、今回はあっさり断られてしまったんだよ。今回は駒王学園敷地外で待機していると言っていたよ」
――――と、アザゼルの問いに笑顔で答えるサーゼクス。
「ハーン、いねぇのか」
「一度会って直接お礼を申し上げたかったのですが、残念です」
サーゼクスの説明に、それぞれの受け答えを見せるアザゼルとミカエル。
そんな中、壁際に座っていたメンバーは小声で何かを話していた。
「部長、あの眼鏡をかけた人は誰ですか?」
「ごめんなさい、私も知らな「お前ら、先生を知らねぇのか?」え・・・」
一誠とリアスの話を聞かれていたのか、アザゼルが呼びかける様に話に横入りする。
「リアス達を責めないでやってくれ。これについては私の方で教えていなかったのでね」
「成程、でしたらこの場を借りて、自己紹介しておきましょう」
言い切ってから静かに立つルオリア・C・クロムエル。
「私の名はルオリア・C・クロムエルと言います。これからは好きにお呼び下さい、ソーナ姫、リアス姫、そして眷族の方々。私自身の経歴については、会談が有りますので割合させてもらえると助かります」
「「「「「「「「こ、此方こそよろしくお願いします(わ)」」」」」」」」
導師ルオリアの雰囲気に飲まれてか、少々緊張度が上がった声で返答するソーナとリアス及びリアス・グレモリー眷族。
取りあえず、簡単な紹介を終えたので双方とも座り直す。
「それでは始めましょうか?」
「ちょっと待て・・・・・・魔術協会の代表は如何したんだよ?」
ミカエルが仕切り直して話を進めようとした処で、アザゼルが待ったをかける。
「それについては・・・・・・・・・まぁ、何といっていいか。まず、トップは来れない。魔術協会でも今の時期は色々と来れなさそうでね」
「じゃあ、君主の称号を持っている4人は?」
君主。
魔術協会に所属している者達の中で、偉大な研究成果や大きな功績を遺した者達の中のトップに君臨する4人に与えられる称号であり、様々な事で教会内でも幅を利かせるようなる権利も与えられるものだ。役職的なモノでもあるが。
「4人中3人はちょうど手が離せない様で無理なようでね。それで残りの一人がよりにもよって、『異形嫌い』特に悪魔、堕天使類が嫌いなザウス・デミトレなのだよ」
サーゼクスが挙げた名を聞いた途端に、ヴァ―リとソーナ、それにリアスたち以外は腑に落ちたような表情になった。
「あーー、成程。聞くまでも無かったな」
「ザウス君ですか・・・。彼とは何度か話した事が有りますが、フェレス君ともあまり仲がよろしく無いとか・・・」
「ええ、今回の件でこの会談に出席するよう要請をしようとしたフェレス殿の言葉を即時却下して、ひと悶着になったそうですよ。噂通りお2人は犬猿の仲の様です」
サーゼクスの言葉に、何とも言えない空気が広まった。
この時に、また知らない名前が出たので質問したかった一誠達だが、何度も聞いてはなかなか会談が始まらなくなるだろうと、今回は自重する事にしたようだ。
「ふむ、自己紹介なども終えた事だし、そろそろ本題に移るとしましょうか」
「そうしよう。だがその前に、前提条件の一つ。此処に居る者達は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知していると言う事で、話を進める」
こうして、サーゼクスの言葉により会談は始まりを見せていった。
-Interlude-
――――会談は順調に進んでいた。
「――――以上が私、リアス・グレモリーと眷族悪魔が関与した事件の報告です」
「ご苦労、座ってくれたまえ」
「ありがとう、リアスちゃん☆」
サーゼクスの促しとセラフォルーの労いの言葉で、着席するリアス。
「さて、アザゼル。この報告を受けた上での意見を聞きたいのだが・・・」
サーゼクスの問いに、自然とその部屋に居る者全員の視線がアザゼルに集まるも、当のアザゼルは不適の笑みを浮かべたまま口を開いた。
「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者』の幹部コカビエルが、総督である俺を含むその他の幹部にも黙った上での単独犯だ。あの日から今日までの此方の軍法会議において、『地獄の最下層』での永久冷凍の刑と決定されている。この会談終了後、身柄を引き渡して貰い次第直通で執行される予定だ。後、もう一人は処刑が決まっているからな。銃殺刑でも縛り首でもどれでも構わねぇぜ。こんな事、事前に送った報告書に記載されてあったろ?それが全部だ」
そんな、あっけらかんと報告するアザゼルの態度に、ミカエルは嘆息しながらも話を続ける。
それにサーゼクスも加わり話を進めていく。
それから、話の流れは和平締結へと向かって行く。
そして――――。
「――――こんな処だろうか」
サーゼクスのこの一言により、この場の空気が少し緩んだ。
それなら次はと言わんばかりに、ミカエルは現赤龍帝に話を伺いたいと言う流れになった。
それに対し一誠は、アーシア追放についての件で聞き出す。
その事に、心からの謝罪と説明をするミカエル。
そして、話の流れに沿う様にゼノヴィアの事が挙げられた。
ゼノヴィアの件については、全てにおいて此方の非だと謝罪するゼノヴィア。
「いいのです、ミカエル様。・・・・・・多少、後悔も致しましたが、教会に仕えていた頃には出来なかった事又は封じていた事で、現在の私の生活を色鮮やかにしてくれています。そして、今お世話になっている処では家族同然の様に思ってくれていますので、以前とは別の形でとても充実しています」
その流れにアーシアも乗る。
その事に、寛大な心に感謝と言う言葉で表現するミカエル。
そんなアーシアに、アザゼルが言う言葉に一誠が食い付く。
リアスの制止にも拘らず、思いのたけをアザゼルにぶつけるも、当の本人に言い様に纏まられてしまった。
そこから、今後の世界に影響を齎しそうな意見を聞かねぇかと言うアザゼル。
それに対して現白龍皇と現赤龍帝がそれぞれの表現で言葉を出し合う。
そして――――。
「外で待機してるっていう、奴さんの意見も聞いて見ねぇか?」
アザゼルからそんな言葉が飛び出した。
「別に反対する訳じゃ無いが、如何してその様な提案をするんだい、アザゼル君?」
この会談中、両手で数える位しか口を出していなかった導師ルオリアが、口を挟んできた。
「奴は、今回の事件での一番の功労者ですよ。それに、メインは人間のままコカビエルを圧倒できる規格外級の魔術師だ。だが、魔王であるサーゼクス・ルシファーに忠誠を誓ってないんですよ?それほどの実力を有しているのに、ふらふらされても今後に差し障るだけですからね」
アザゼルの言葉には確かに理に適っているモノだった。
「成程、一理ありますね。ミカエル君は如何ですか?」
「反対する理由はありません。それに、今回の件での事でお礼を申し上げたかったので、私個人としてもいい提案だと思いますよ。アザゼルから出る言葉としてはですが」
「一言余計だぜミカエル。てか、どうしてそれ言って堕ちねぇんだ?」
「ミカエル君も賛成の事ですので、サーゼクス君。お願いしてもよろしいでしょうか?」
ミカエルとアザゼルの会話によるジャレ合いをスルーして、サーゼクスに頼み入れる導師ルオリア。
「判りました、少々お待ちを・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!私だ。今、ちょっといいかな?ぅん・・・ぅん・・・解った。じゃあ、繋ぐからよろしく頼むよ」
ピッ。
耳に当てていた通信を切ると同時に、空中に何も書かれていない黒い映像が出て来た。
「もうすぐ繋がりますので、今しばらくお願いします。皆様」
あくまでも一従者として対応しながら振る舞うグレイフィア。
そして、映像に傅く格好の幻想殺しが現れた。
『まずは画面越しの無礼並びに素顔を曝せぬ無礼、お詫び申し上げます。そして、お初にお目にかかりますミカエル様、導師ルオリア』
「その様な事はありませんよ。それよりも頭を上げてはもらえないでしょうか?」
『ハッ、それが導師のお言葉とあらば――――』
ルオリアの頼みにより、面を上げて直立立ちをする士郎。
「それでは改めまして、先日の事件ではご苦労様でした」
「こちらも無事、エクスカリバー・ディストラクションと破片を回収できました。本当にありがとうございました」
幻想殺しである士郎にお礼を言うミカエルとルオリア。
『いえ、サーゼクス・ルシファー閣下からの要請でしたので、当然の事をしたまでです』
「当然の事って言う割には、サーゼクスに忠を誓っていないって聞いてるが如何なんだ?幻想殺し」
士郎の言葉に一部に皮肉気な言葉を使い、問いただすアザゼル。
『これはこれは、アザゼル総督閣下!先日は通信機越しで失礼をしたこの雑輩程度を記憶の片隅に入れて下さるとは、光栄の至りに存じます』
まるで忠実な執事の様に体を折り曲げる幻想殺しの姿を見て、苦笑するアザゼル。
「ま、貴重な体験だったからな・・・!それより、質問に答えてくれよ?」
『単に、私の様な粗忽者を懐に入れるべきでは無いと、進言したにすぎません』
「コカビエルを圧倒した奴が粗忽者ってか?」
『自身で言うのも何ですが、素顔を曝せぬ度胸も無いではありませんか。それに過ぎたる欲は身を亡ぼします。私は自分の分相応を弁えているに過ぎないのですよ』
「・・・・・・・・・」
嘘ではないであろうが、全てを話していない事は直に理解できた。
だが、これ以上追及しても話す気がなさそうな上、しつこく聞くべきことでは無いとも判断するアザゼル。
「そうかい。んじゃ本題を聞くが、お前さんは今後、この世界に対して如何干渉していくきだ?お前さんほどの力量がありゃ、どの勢力も“力”として欲しがるだろ?お前さんはこれから何がしたい?何が欲しいんだ?」
士郎は面倒だなと内心で呟いた。
これでは、はぐらかす事も出来ないだろうと考えたからだ。
『・・・・・・・・・そうですね。直截に言えば平穏でしょうか』
「ほぉー?別に煽る気はねぇが、何所かの勢力に加担して、それ相応の地位に就く気もねぇってか?」
『有りませんね。この力は必要だからこそつけたものですが、平穏を約束してもらえると言うのであれば即座に捨てますよ魔術及び今日までに身につけた戦闘術』
コカビエルを圧倒出来る程の強者が、自身で培ってきた“力”を『こんなモノ』扱いするのもあるが、それを簡単に放棄すると言う言葉にソーナとリアス及び眷族全員は驚きを隠せずにいた。
そして、ヴァ―リは苛つきを覚えていた。当然だろう。メインは人間のままの魔術師風情が自分よりも格上でありながら、それほどの“力”を雑に扱ったのだから。
そんなヴァ―リの内心を感じ取ったかのように、士郎は彼と瞳を合わせる。
『ですから、私はアザゼル総督閣下の付き添いで在らせられる、現白龍皇の様な強者との戦いは勿論、最強の座などにも何の興味もありませんね』
「っ!」
この事に、周りに気取られないようにしながらも、内心ではさらに苛ついていた。
「地位や名誉何かは?」
『別に必要以上に入りませんね。無事平穏に過ごせる上で、役立つのでしたら話は別ですが・・・・まぁそんな現実など、在る筈はないと理解していますから無意味な幻想ですがね』
「自己顕示欲の少ねぇ奴だな・・・」
『性分ですn
その時、映像が止まった。いや、機械が停止したと言うべきか。
それ以前に、この学園を中心に半径2、3kmほど世界が停止したのだった。
-Interlude-
「あら?」
「おっ、赤龍帝の復活か?」
一誠が意識を取り戻したのをリアスがいち早く気づき、それにアザゼルが反応した。
「な、何かあったんですか?」
困惑の中、一誠が周囲を見渡すと、今も直停止しているのは朱乃にアーシア、小猫にソーナ、そしてミカエルの付添いで随行してきていた女性の天使だ。
リアスは、一誠を含む今動けている自分の眷属らの行動理由の確認を説明していく。
そんなリアスをよそに、先程までグレイフィアと真剣な顔つきで相談していたサーゼクスが、機械を弄るアザゼルに近づく。
「如何かな?アザゼル」
「もうちょいだ。つっても多分、1分ほどしか持たねぇぞ?」
「それだけあれば、十分さ「それで、何があったんすか?」ん?」
リアスの方での確認の説明を終えたようで、一誠が再度リアスに聞くがその答えはアザゼルから齎せれた。
「テロだよ」
簡潔に。
その言葉に驚愕を隠せない一誠。
「外、見てみろ」
アザゼルが言葉と共に、顎で窓の方へ行くことを一誠に促す。
その言葉に従い窓の方へ言った瞬間、光が差したのにビビる一誠。
「攻撃を受けてんのさ。何時の時代も何事においても、反対意見は存在しちまうのさ。で、それに拍車をかけて、過激に行動する奴らをひっくるめてテロリストって呼ぶんだよ」
吐き捨てるように説明するアザゼルは、窓際からまた機会に近づきつつ説明を続けていく。
そして説明が終わった所に、リアスはオーラを発しながら自分の眷属がテロリストに利用されていることに憤激に駆られていた。
「因みに、敷地外を取り囲んでいた堕天使勢力を含む三勢力は此処から見る限り全員停止させられている様だ。お前さんが気づく前に、サーゼクスの奴がこっち側の強大な魔術師に直切れちまった一瞬の念話だったが、恐らく察してくれてんじゃねぇかと思うぜ?確認に奔走してもらっている」
「強大な魔術師って・・・・・・・・・幻想殺しさんすか?」
「ああ、奴さんは無事だったようでな・・・・・・・・・よし、出来た!点けるぞ」
ブゥゥン。
そんな音と共に幻想殺しが映像に出て来た。
如何やら先程アザゼルが弄っていたのは、映像通話の機械だったようだ。
『サーゼクス閣下』
「如何かな?先程の件は・・・」
『確認でしたらもう済みました。全員停止していましたよ』
「そうか」
解っていたとはいえ、嘆息するサーゼクス。
「他は何か解った事はありますか?」
『これはk「挨拶は構いません」では手短に、街角に潜伏していたテロリストと思われる魔法使いの下っ端を捕えておきました』
『ひぃぃぃいいいいい!!?』
士郎はサーゼクス達も見える様に、画面越しまでに首根っこを掴み、ローブ姿の魔法使いを引っ張りだして来た。当の下っ端は激しく怯えていた。
『あまり多くの事は知らない様でしたが、ギャスパー・ヴラディの方には10人以上の魔術師どもがいるようです。これ以上は使えなさそうですが、形として参考に程度であれば丁度いいかと』
「手際が良いですが、その者は如何するんです?」
『放っておいても大丈夫かと・・・・・・おいっ』
『ひぃ?はっひっ!?』
ドスの聞いた声で、地べたに這いつくばっている下っ端に言う、幻想殺し。
『逃げてもいいぞ』
『・・・・・・・・・・・・へ?』
『ただし、次出くわしたら、生まれてきたことを後悔するような残忍な拷問をすると断言しておく。それでいいのであれば、好きなだけ何所へとも逃げるがいい。それが嫌なら、迎えが来るまで大人しくして置く事。いいな』
あまりの恐怖に下っ端は、目と鼻から多くの水分を垂れ流しながら首を縦に素早く何回も振る。
『だ、そうです』
「噂に違わず、容赦ありませんね」
『テロリストに容赦など、本来必要ないかと思いますが?敵であれば、無慈悲な殲滅が基本です』
その事実に対して嘆息で答えるミカエルや、導師ルオリア。
『それで、ギャスパー・ヴラディの処に行くのはリアス嬢と兵藤一誠で決まりですか?』
士郎は、説明しながらもアザゼルやサーゼクス、グレイフィアやリアスそれに一誠の話にも耳を傾けていた。
因みに、先程アザゼルの指示で現白龍皇であるヴァ―リ・ルシファーは、結界で包まれている校舎へ攻撃を繰り返している魔法集団の掃討中だ。
「ん?そうだが・・・」
『では、兵藤一誠。以前、私がギャスパー・ヴラディ訪問時に彼に渡したものを覚えているか?』
「え!?あっ、そういや、あったな。そんなもんも・・・って、確かあれで1回キリだけギャスパーの時間停止を強制的に止められるんじゃ・・・」
『な!?』
一誠の言葉に、その時共に居た祐斗以外が驚く。
「お前さん、そんなもんも持っていたのか?一体如何いう効力のもんなんだ?」
アザゼルは神器マニアだとも言われているが、研究者の色が近い。
それ故、興味心を掻き立てられた。
『この通信機あまり持たないのでは?話は後でもできます』
「むぅ・・・」
『話を戻すが以前説明したとおりだ。だが、今も直停止状態が続いていると言う事は、利用されている為テンパって忘れているか、手元に無いかのどちらかだ。そしてあれの有効射程距離は半径5メートル以内だ。別に彼自身では無くても構わないから行って来て、有効射程内に入ったら私が渡したアレに向かって念じてくれ。こちらで力を開放する。総督殿の腕輪もあるんだろうが、それは彼が直接嵌めなければならなのでしょう?』
「まぁ・・・・・・な」
何とも言えない表情をしながら、肯定するアザゼル。
『と言う事だ。頼んだぞ?兵藤一誠』
「う、うっす!」
『では、閣下。わたしh
言い切る間に映像が切れた。如何やら時間切れの様だ。
一誠達はその後も、少しアザゼルやサーゼクスそれにミカエルの話も聞いていたが、何所からともなく聞こえた声に反応すると、即座に一誠とリアスを転送した。
和平締結と言う綱渡りの状況すらも破壊したい禍の団と、そんな大きなうねりに呑み込まれそうになり乍らも抗う者達との戦いが始まろうとしていた。
後書き
基本的には士郎の投影した宝具は、自分の手元か。或いは、士郎とパスをつなげている英霊に許可をしなければ使えない+適正(血縁者など)が無ければ使えないが、アレだけは特別に最大5キロまで離れていても真名解放出来ると言う事にしておきました。
今や士郎の半身であり、士郎の起源を“剣”に改変させた大本ですからね。
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