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君は僕に似ている

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3部分:第三章


第三章

「御互いにやってきたんだ」
「クロアチアもですか?」
「信じるか?この話は」
 彼の顔を見た。黒い目が赤く光っている様に見えた。憎しみの光だった。
「どうだ、それは」
「信じたくありません」
 これが彼の返答だった。まだ敵がいないか周囲を見回しながら言った。
「クロアチアがそんなことをしていたなんて」
「今もかもな」
 俺はふと言った。
「俺達はセルビアと同じことをしているのかもな」
「同じこと?」
「ああ、ひょっとしたらな」
 ある程度確信していた。けれど俺はあえてこう言った。
「そうじゃないか」
「そんな筈ないですよ」
 この返答もだ。来ると思っていた。
「クロアチアはそんなことはしませんよ」
「そうか」
「そうですよ。絶対に」
 俺もそう思っていた。前は。だからわかった。
 それでだ。今の彼の言葉を聞いてだ。俺は妙に納得した。けれど納得してもだ。全く嬉しくなかった。悲しさを感じていてもだ。
「それは有り得ませんよ」
「そうだな」
「そうですよ」
 微笑んでだ。俺に答えてくれた。
「それよりもここで勝って」
「ああ」
「クロアチアに優勢になってきたでしょうか」
「俺達の戦いは終わるかもな」
 俺達の。あくまで俺達の戦いはだ。
「それはな」
「じゃあクロアチアはこのまま」
「独立は勝ち取れるな」
「はい、絶対に」
 彼の声がうわずっていた。喜んでいるのがわかる。
「独立できて平和な国になるんですよ」
「平和か」
「これ以上に無い幸せな世界になるんですね」
「そうだな」
 俺は目を伏せさせた。そうして答えた。
「きっとな」
「なりますよ、これから」
 彼はそれを夢見ていた。その憎悪に燃える赤い目で。その目も俺の目だった。昔の俺の目がそこにあった。はっきりと。
 戦いは終わった。クロアチアは独立できた。
 けれどユーゴだった国はあちこちで戦乱が止まなかった。どうしようもない混沌としていて陰惨な状況が続いてだ。セルビアも遂に全てを捨てた。
 モンテネグロとも分かれユーゴは完全に消滅した。セルビアの独裁者は去り戦争は終わった。とりあえずは終わった。
 彼はそのことを心から喜んでいた。テレビ、もう今にも壊れそうになっているそれでニュースを見ながらだ。小躍りをしていた。
 そしてだ。こう言うのだった。
「セルビアの奴等、塞ぎこんでますよね」
「そうだろうな」
 俺も同じニュースを見ていた。そのうえでの言葉だった。
「それはな」
「ええ。けれど」
「けれどか」
「俺は絶対に許さないですから」
 こう言うのだった。ここで。
「セルビアの奴等は」
「じゃあこれからもか」
「この国にもセルビアの奴等はまだ残ってますよね」
「ああ」
 その通りだった。ユーゴだったこの辺りはただ多くの民族がいるだけじゃない。それぞれが入り組んで住んでいる。だからクロアチアにもセルビア人が住んでいる。ユーゴの時代に結婚した人達もいる。
「そうだな。かなりな」
「その連中も全員追い出して」
「追い出すか」
「歯向かうんなら殺してやりますよ」
 右手を拳にしての言葉だった。
「セルビア人なら」
「そうするんだな」
「はい、そうします」
 こう俺に答えてきた。
 
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