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武士と騎士

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5部分:第五章


第五章

「わかっているな」
「それでは今から」
「敵軍に対して」
「突撃だ」
 やはり同じ命令だった。
「わかったな」
「了解です」
「それでは」
 スピットファイア達の翼が煌く。そのうえでだった。
 彼等は日本軍の編隊に突撃する。両軍は互いに突撃していた。
 米田率いる飛燕の編隊はだ。一直線に進む。
 その中でだ。米田は部下達に告げた。
「いいな!」
「はい!」
「退くな、ですね!」
「そうだ、退くな!」
 命令はここでも簡潔だった。
「そして臆するな」
「怯むことなく」
「このまま敵に攻撃を仕掛ける」
「命を惜しむな」
 こうも言ってみせるのだった。
「わかっているな」
「無論です」
「それは」
「ならいい」
 米田は飛燕のコクピットの中で満足した声を出してみせた。
「それならばだ」
「はい、それでは」
「今から」
 こうしてイギリス軍に突撃した。両軍の機体と機体が交差する。
 まさに翼と翼が触れ合わんばかりだった。だがそれで衝突した機体はなかった。
 そのかわりに交差した両軍の中でだ。数機ずつ火を噴き。そのうえで墜ちていく。撃墜された者は確かに存在していた。
「くっ、三機か!」
「二機か!」
 日本軍とイギリス軍でそれぞれ歯噛みする声がした。
「脱出しろ!」
「すぐにだ!」
「は、はい!」
「今すぐに!」
 撃墜された者達はすぐに脱出にかかる。幸いに全員脱出できた。
 その五つのパラシュートを見てだ。米田もクエスターも言った。
「撃墜された者は攻撃するな」
「攻撃した場合は私が許さん」
 こうそれぞれ言うのだった。
「それはいいな」
「絶対にだ」
「武士としてですね」
「騎士として」
 二人の部下達は彼等の話を聞いて述べた。
「それに恥ずべき行動はするな」
「だからこそ」
「わかっています」
「それは」
 それぞれの部下達もすぐに言葉を返してみせた。
「武士だからですね」
「騎士だからこそ」
「そうだ、その通りだ」
 日本語と英語の違いはある。しかし二人は全く同じ言葉を言った。
「それはするな」
「いいな」
「戦うのは戦闘機に乗る敵のみ」
「それなら」
「反転する」
 今度も二人同時の言葉だ。
「いいな、そしてそれでだ」
「今度は格闘戦に入るぞ」
 所謂ドッグファイトだ。日本軍の戦闘機は伝統的に格闘戦に強い。それにスピットファイアはバトルオブブリテンでも格闘戦の強さで定評がある戦闘機だ。
 そのことを考えてだ。米田もクエスターも言ったのである。
「それで敵に決定的な打撃を与える」
「わかったな」
「了解です」
「それなら」
「全機反転!」
 また米田とクエスターの言葉は一緒だった。
 
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