大統領の日常
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本編
第十二話 異世界からの介入?(1)
西暦2115年 10月 14日
「さて、第・・えーと・・・第ほにゃらら回評議会会議を始める」
「・・・・(パチパチ」
こうして第ほにゃらら回評議会会議はささやかな拍手とともに開始される。
「では!今回の議題を発表してくれ!頼むぞマスティス副議長!」
ペルシャールのテンションに若干引きつつ、マスティス副議長が口を開く。
「は、今回の議題は10月3日にスリランカ島近海での戦闘において発生した”奇妙な現象”についてです」
その言葉に委員長らは首をかしげ、となりの委員長と”怪奇現象かなにかか””ただの戦場伝説ではないのか”など、しゃべりだした。それをペルシャールが咳をしてやめさせた。
「奇妙な現象というと具体的にどのようなことなのか説明していただきたい」
一瞬静かになった会議室を人的資源委員長のタレクが最もな質問をしてといた。
「このことに関してはゲストを呼んでおります。そちらの方に説明していただきたいと思います」
”ゲスト?””誰だ?”等と委員長らが話しているとひとりの男が会議室に入ってきた。
「海軍第二艦隊司令ミューヘル中将であります」
多少緊張気味でその男は挨拶した。おそらく彼がその奇妙な現象に遭遇したのだろうと全員が察した。
「うむ、早速だが中将期間が遭遇した奇妙な現象とやらを説明してもらいたい」
挨拶も早々にタレルが急かした。
「は、何分私もその時は頭が動転しておりましたので、詳しく説明することはできませんが、できる限りご説明させていただきます」
彼の言うところによると次のようなことだった。
第二艦隊の打撃部隊6隻は当初、スリランカ島付近で敵の輸送部隊を攻撃していたのだが、突如駆逐艦島風が敵艦隊に突入し、それを追うように駆逐艦吹雪も突入した。司令部は至急島風と吹雪に後退するように通信したのだが、通信ができず、止む終えず高速戦艦金剛・比叡・榛名・霧島も突入した。しかしその後、その4艦も何者かにコントロールを奪われ、自分の乗る旗艦金剛が砲火にさらされている駆逐艦吹雪の目の前に立ちふさがるように移動したり、それでもなんとかあと一隻というところまできてそのまま攻撃すればいいものを止めは旗艦がとでも言うかのように金剛に道を開けたり不可解な現象が多数発生したということであった。これは余談だが、第二艦隊は開発部が復元した旧大日本海軍の艦艇のみで構成された艦隊である。ただし戦艦大和だけは別の打撃艦隊所属になっている。
これを聞いた委員長らはしばらくの間無言であった。なにせ見た目は旧日本海軍の軍艦とは言え、ロンディバルト軍の技術を惜しみなく搭載した新鋭艦であったからである。しかし、数分後財務委員長のホルスが口を開いた。
「コントロールを奪われたということだったが、敵が行ったものなのかな。だとすれば今後の作戦行動に支障が出ると思うのだが・・・」
「それはないだろう」
きっぱりとした口調で断言したのは国務委員長のクロスムであった。その言葉にホルスが顔をしかめたが、気にする表情もなく、言葉を続けた。
「もしこれが敵によるものであるとしたら、なぜ我々は勝てたのかね。敵がコントロールを奪っていたのであれば行動不能にして殲滅するか、艦艇自体を奪うかのどちらかだろう。そうではないかね」
ホルスはクロスムの言うことに多少不満を持ったが正論であったため、”チッ”と舌打ちして目をそらした。その様子を見ていたマスティスが口を開いた。
「我々にあえてみせたということはないかな。いつでも我々はキサマらのコントロールを奪えるぞ、と。そうすれば我が軍が勝利できたのも納得できるのではないかな」
「なるほど、あえてこちらの手を見せたということか」
マスティスの言葉に委員長らがふむふむと傾く。
「ではどうするのだ。敵がいつでもコントロールを奪えるとしたら、軍港で停泊中にいきなり攻撃をすることもあり得るのではないかな」
「そんなことになったら海旧大日本帝国の艦艇すべてを隔離しなければならなくなる。それに、それだけの艦艇を隔離するための場所と、それを維持管理する費用も必要だ。しかし、今我々がこうしている間にも何かしら起こる可能性もある。早急に手を撃つ必要があるだろう」
ペルシャールの言葉に再び委員長らが傾く。特にペルシャールの言った”維持管理の費用”という言葉に反応したホルスは、頭の中で必死に他の代案を考えていた。
「しかし手を打つといっても具体的にどのような手を打つのか」
天然資源委員長のタールが最もな質問を返す。
「システム自体を全て変えるしかないだろうな。変えるといっても新しいシステムの開発にどれだけの時間と資金を使うのか・・・」
何とか代案を考えたホルスが資金というところを強調して言った。
委員長らが考え込んでいるとティレーナが入ってきた。
「議論の途中に失礼いたします。海軍所属の第二艦隊全艦がここシャンテルトン(旧中華人民共和国シャントン州)に向かいつつあるとのことです・・・」
「ばかな、なぜ我が艦隊の艦艇が・・・第2艦隊には出撃命令は出ていないはずだ・・・」
ミューヘル中将が弱々しい声で呟く。そして席に座り込んでまた口を開いた。
「どういうことだ・・・まさか、またその現象が発生したのかっ」
委員長らに緊張が走る。これが敵によるものであったとしたら首都がどうなるか直ぐにわかったのである。
「すぐに迎撃部隊を出撃させなければ」
「だめだ、正視艦隊とまともにやりあえるだけの戦力は首都にはない。第一数が多すぎる。とてもじゃないが迎撃は無理だ」
「だとしてもこのまま何もしないつもりか」
「すぐに首都全域に緊急避難命令を出す。あと演習に出ている飛空艦隊を呼び戻す」
「しかし、敵が来るまでに市民全員を避難させることは不可能だ。首都だけでも7000万人、首都近辺も合わせたらおよそ1億2000万人だぞ!」
「対核シェルターもすべて開けよう」
「首都の防衛設備は全て使う。できるだけ時間を稼ぐんだ」
会議室は大騒ぎになり、声やモノが飛び交いまさに戦場であった
西暦2115年 10月 14日
ペルシャール・ミースト
なんか会議してたらいきなりティレーナが”敵がくるよ”と伝えてきた。現在会議室にはヴォルドール・ケーニッツなどの軍高官や職員ががやがやと騒いでいる。
てか大丈夫なの?首都には最低限の防衛部隊しかいないんだけど・・・
とりま俺は大統領館の方に引きこもってよう。ここにいても何もできないしね。軍の方はケーニッツにお任せしようそうしよう。
西暦2115年 10月 14日
第二艦隊はささやかな防衛設備を赤子の手をひねるかのごとく簡単に突破し、首都まであと5時間のところまで近づいていた。
既に防衛艦隊もほとんど轟沈し、防衛設備も稼働率30%というところまで落ちていた。
市民の避難もまだ半分ほどしか終わっておらず、この状態で攻撃されたらまさに地獄絵図となるであろうことは明白であった。
既に大統領は46センチ砲も数発は耐えうる装甲に囲まれた大統領館に引きこもっていたのだが、大騒ぎになっている外の状況は秘書が気付いていた。が、めんどくさかったので伝えなかった。
下手に外に出るよりも、対46㎝装甲で囲まれた大統領館にいる方が安全だと考えた結果でもある。
「閣下、既に防衛艦隊は壊滅、防衛設備も稼働率30%にまで落ちており、このままでは・・・」
ケーニッツ元帥もこの状況を打開するため策を巡らしたのたが、ことごとく失敗に終わっており、まさにオワタ状態であった。
「市民の避難は」
「現在のところ60%です」
「敵が到着するまでに避難できる割合は」
「行っても7割弱かと・・・」
「7割弱、か・・・。ということは3600万人は敵の砲火にさらされるということか」
「計算上は・・・」
「出来る限り避難を急がせろ。多少手荒くしても構わん」
「了解しました。あと、4時間半ですか・・・」
「うむ・・・そういえば、大統領はどこにいらっしゃるのか」
ここに来てようやく大統領がいないことに気づくケーニッツであった。
「さあ、おそらく大統領館に行っているのではないでしょうか」
「確かあそこは46センチ砲でも耐えることが出来る装甲がついているんだったな」
「ええ、全く46センチ砲でも耐える装甲って何で出来てるんでしょうかね」
「全くだ、技術の結晶だな」
少しばかり空気が和んだ。しかしその空気は一瞬にして消え去ることとなる。
「閣下!大変です!レーダーに新たな反応アリ!」
「なんだと、数は!」
「・・・1隻だけです・・・」
「1隻だと?防衛部隊の生き残りではないか?」
「違います、戦艦クラスです!」
「戦艦クラスだと!??」
「現在艦影照合中・・・これは!」
「大和です!!新たに現れた艦艇は戦艦大和です!!」
「なん・・・だと・・・」
【大和型一番艦大和】
開発部が旧大日本海軍艦艇復元計画を実施した際に建造された大和型戦艦一番艦大和。主砲に50センチ砲を3基装備し、1個艦隊を簡単に殲滅することが可能な大火力有している。外見は旧日本海軍の大和であるが、内装はロンディバルト軍の技術力を惜しみなく使用した作りとなっており、速力33ノットという戦艦とは思えない速力を有している。他にも46センチ砲でも耐えうる装甲など、まさに海の城と言って過言ではない戦艦である。
「馬鹿な、大和は打撃艦隊の所属として沖縄にいたはずだ。なぜここに・・・」
「閣下いかがいたしますか」
「通信を送れ、もし応答がなかった場合は・・・敵と認識せよ・・・」
「・・・了解しました」
その後大和は通信の応じず、会議室は大和が敵に回ったことで戦意喪失状態になっていた。
翌15日午前4時35分、とうとう第二艦隊が首都に姿を現した。
「閣下・・・」
「もはやここまで・・か・・・」
既に彼らに対抗する戦力は存在しない。ささやかな湾岸防衛用の設備が存在しているが、戦艦相手ではまともに戦えるはずもなく、誰もが落胆し、祈るばかりであった。
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