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美しき異形達

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第三十九話 古都での死闘その二

「何度かな」
「ふうん、そうなんだ」
「汚い奴ってのはいるんだよ」
 何時でも何処でもともだ、薊は自分の言葉の中に入れた。
「それで喧嘩の時にもな」
「色々としてくるんだね」
「そうした奴等とな」
 それこそ、というのだ。
「何度かやり合って」
「勝ったのかな」
「真剣にやったあたしに勝ったのは一人だけだよ」
 これが薊の返答だった。
「お師匠さんだけさ」
「そういうことなんだね」
「ああ、だからな」
 それで、とだ。また言った薊だった。
「あんたにもな」
「勝つっていうんだね」
「そうさ、勝つさ」
 絶対にという口調での言葉だった。
「あんたが卑怯なことをするかどうかはわからないけれどな」
「そういうことだね」
「まああたしの相手はな」
 ここで薊は自分の正面にいる百足の怪人を見てその目を鋭くさせて言った。
「あんただけれどな」
「そうですね、それでは」
「やるか」
「はい」 
 百足の怪人も応えてだ、そのうえで。
 両手を熊がそうする様に、指を爪の様に立ててそれから薊と対峙した。薊も両手に持った七節棍を身体を斜め前にさせて構えた。
 菖蒲もだ、自分の前にいるドラゴンの怪人にだった。フェシングのサーベルを持つ構えになってそのうえで言った。
「それではね」
「はじめようか」
「場所は丁渡いいわ」
「ここがいいっていうんだね」
「ええ、誰もいないし。それに」
「それに?」
「こうした爽やかな緑の場所で戦うのもね」
 そうしたことも、というのだ。
「いいものだから」
「戦いに景色を選ぶんだ」
「少なくとも何もない殺風景な場所で戦うよりは」
 具体的な場所は挙げなかったがそうした場所で戦うよりはというのだ。
「こうした場所で戦う方がいいわ」
「景色を楽しむのかな」
「そうよ、それにね」
「それに?」
「戦い方もあるから」
 何もない場所で戦うよりは、というのだ。
「一対一の闘いでもね」
「今から僕達がするみたいな」
「そうした闘いでもね」
 こうした何かがある場所で戦うなら、というのだ。
「あるから」
「そう言うんだね」
「ではね」
「うん、今からはじめようか」
「この若草山が貴方の墓場よ」
 菖蒲は怪人にこうも言った。
「そうなるわ」
「それはどうかな」
「私だというのね」
「その通りだよ、ではいいね」
 怪人は自信に満ちた声で菖蒲に告げた、そのうえでだった。
 二人は闘いに入った、それは薊達も同じだった。 
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