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美しき異形達

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第三十九話 古都での死闘その一

                        美しき異形達
                     第三十九話  古都での死闘
 薊と菖蒲はそれぞれの相手と対峙していた、その中で。
 薊は両手に棒を持ちつつだ、菖蒲の前にいるドラゴンの怪人に問うた。まだ戦っていないのでそれで問うことが出来たのだ。
「あんた、裕香ちゃんに興味はないって言ったな」
「言ったよ」
 その通りだとだ、怪人も薊に答えた。
「そして嘘も言ってないよ」
「そうだよな」
「僕達が興味があるのはね
「あたし達だけか」
「君達八人には興味があるよ」
 薊達には、というのだ。
「そして戦ってね」
「倒すんだな」
「そのことを目指しているよ」
「それが生きている目的かよ」
「そうだよ」
「じゃあ何であたし達を狙ってるんだ?」
 薊が次に問うたのはこのことだった。
「その命を」
「最初からそうしなければならないってね」
「言われてるのよ」
「頭の中に入っているんだ」
「みたいだな、あんた達は」
「うん、君達に恨みはないけれどね」
 それでもだとだ、怪人は言うのだ。
「そうしなければならないってね」
「頭の中に入っているだな」
「本能というのかな」
 怪人は自分から分析する様にして言った。
「僕達はね。ものを食べたりすることはないけれど」
「あたし達がものを食ったりするみたいにか」
「うん、自然にね」
「あたし達と戦ってか」
「倒すことが本能としてあるんだ」
「生まれた時からか」
「気付いたらここにいたよ」
 奈良にというのだ。
「そして君達の前に出ようとしたら」
「あたし達に気配を察せられて声をかけられてか」
「出て来たんだよ」
 このこともだ、怪人は薊に素直に話した。
「そういうことだよ」
「生まれた場所もどうして生まれたきたのもかよ」
「全く知らないよ」
「そういうことはなんだな」
「知ろうとも思わないよ」 
 全く興味がないといった口調だった、実際に。
「興味が湧かないんだ」
「本当にあたし達だけが相手なんだな」
「うん、君達以外には本当に興味がなくてね」
「戦って倒す」
「あくまでそれだけだよ」
「そうか、別に周りを巻き込んだりはか」
「邪魔をして来て攻撃に当たって来たのなら別だけれど」
 不可抗力でそうなってしまった時以外はというのだ。
「僕達から他の人を狙うことはないよ」
「一切だな」
「うん、全くね」
 そうしたことをする気も、というのだ。
「ないからね」
「それならいいさ」
「僕達があの娘を相手にしないのなら」
「正直人質を取られるとか周りを巻き込まれるとか嫌なんだよ」
 薊は自分の率直な考えも怪人に述べた。
「下衆な悪役みたいなことされるのはさ」
「そうしたことをされたことはあるのかな」
「卑怯な奴とはやり合ったことがあるさ」
 薊は百足の怪人を見つつドラゴンの怪人に言葉を返した。 
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