ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
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インベーティング:闇が求める光
???Said
辺りが闇に覆われていた。
深い深い、底無しの闇。
俺はその中に、ぽつんと浮遊していた。
存在すらも、今の俺には無い。
と言うか、俺は誰だったのか。何で剣を持って戦っていたのか。
……闇が俺をしつこく覆い隠そうとする。まるで、『俺を何処からか消し去ろう』とするように。
『……俺は、何なんだ?』
俺は闇に問い、そして闇はそれに答えるかの様に、俺を包んで、消えた。
ロードSaid
人界の南端から、東域の果てへ。
僕たちは四帝国の中で最も謎の多い地であるイスタバリエス東帝国へと訪れていた。
「いやー、まさか遠出することになるとはねー」
至極真面目に、ライトの体内で身を潜めていたウィンガーウィザードラゴンの上で僕は言う。
「イスタバリエスは南の私達でさえ、その全容を知りません。唯、唯一知りうる物が、あの谷と『東の大門』です』
ユリアが僕に説明してくれる。
銃撃眼の遠距離モードで見ると、垂直に断ち割ったが如き峡谷と垂直にそびえたつ灰色の門が佇んでいた。
「ひゅう……アレが例の東の大門?継ぎ目が一つも無いのに良く立ってられるね?」
「それは私も同感よ」
ユイリが溜め息を漏らしそうに言う。……あんだけ馬鹿でかいんじゃ、壊される心配無いだろうに。
「……まぁ、良いや。もう少し近くで見たいから行くよ。ドラゴン、よろしく」
『……俺は貴様の手足では無いぞ』
「ドラグレイダー、お願いします!」
『解っている』
「……勘弁だわ」
ユイリだけ乗り気がしてなかった様だが、僕たちは野営地を飛び越え、東の大門に近付いて行く。
「うっひゃあ~……」
ドラゴンとドラグレイダーを止めると、東の大門を見上げる。
すると、高さ二百メル辺りに、左右の扉を成す灰色の岩盤を繋ぐようにして、神聖文字で何か記されていた。
「……ええっと、何々?デストラクト……アットザ、ラストステージ?何これ?」
ラストステージは最終舞台、デストラクトは破壊……意味がまるで解らない。
一斉に首をかしげた、その時。突然、びききっ!と凄まじい破砕音が空気を震わせ、僕たちは驚く。
良く見ると、先程まで何も無かった扉にヒビが入っている。
「……うわぉ、そう言うこと?ライトもオーシャンタートルの連中も中々にエグイ事するよね……」
ヒビが入った意味、先程の文、そのすべての意味を、僕は知ってしまった。
「ユリアちゃん、少しこの大門の天命見てくれる?」
「解りました」
ユリアは言うと、素早く印を描いて、門の表面を叩く。
そして、窓を見ると、蒼白した顔に変化した。
「……そんな。後、5日で門が壊れる……!?」
(……やはり、か)
僕は心の中でそう言うと、拳を作る。
(ダークテリトリーの奴等がこの大門を越えて来るのは後、5日。……それまでに、ライトが復活しなかったらーーーー)
現在の僕らは最悪の事態に陥っている。もし、解決出来るとするなら、ライトか、もしくはキリト。……だが、その頼みの綱のキリトの魂も聞こえない。ーーーー最悪、僕本来の力を使うしか無いかも知れない。
その代わり、僕の存在が抹消されてしまうその代償を払わなければならない。
「……二人とも、まずは野営地に降りて、ベルクーリさんに会いに行こう?話はそれからだよ」
「……そうね」
未だ衝撃から動揺をしているユリアを見て、ユイリが頷いた。
野営地に降り立つと、そこにはアリスとベルクーリ、エルドリエが立っていた。
「おう、お前さん達も来たのか」
「ご無沙汰しております、ベルクーリ・シンセシス・ワン整合騎士長殿!」
ユイリが敬礼すると、手を上げる。
「あー、そんなの良いから。それより、お前さんだ」
ベルクーリが僕を指す。
「……お前さん、あの雷剣士じゃねぇな?髪と目が違うし、何よりも纏っている物が違う」
ベルクーリは剣士の眼をしながら問うてくる。
「流石は整合騎士長ベルクーリ・シンセシス・ワン。衰えても尚、その慧眼は冴えて居られる」
僕は言うと、膝を折って頭を垂れる。
「我が主、ライトの人格で在ります、名をロードと申す者で御座います。そこにいらっしゃる整合騎士アリス・シンセシス・サーティと、その仲間たる整合騎士に助太刀したくまがり越しました。我が銃剣、この世界の為に振るいましょう」
すると、ベルクーリは笑った。
「お、小父様!?」
「ああ、悪い。このご時世だ、こんな立派な奴がコイツの中に居たんだ。笑わずにいられるか」
ベルクーリは言うと、僕は顔を上げる。
「お前さん、気に入ったぜ?なら、その銃剣とやらで、小僧が守りたかったものを守って見せろ」
「……必ず。僕はその為だけに生まれて来た様なものです」
(そう。あの日からずっと、僕はその為だけにライトの側に居続けた。ライトの希望を、絶望に変えないために)
僕は心の中で言うと、ウィザードラゴンの方へ歩いて行く。
『……本当にお前はぶれないな。心の中に、絶望を一切感じない。何故、貴様の中には絶望が無いのだ?』
ウィザードラゴンは僕に問うてくる。
「決まってるさ。僕はライトや、他のみんなを信じてる。魂が繋がっている限り、僕は絶望なんてしてやらない。僕はライトの『光』だ。ダークとは対称の存在だからこそ、僕は僕の出来る事をやるんだ。いや、出来なきゃ意味が無い!」
僕はその問いに答える。
僕の存在はライトの『希望』であり『光』だ。
ダークはライトの『闇』であり、また『希望』でもある。
なら、僕はそのどちらも救う。哀しみに囚われない様に、ライトの絶望を全て僕が受け持とう。
それが、僕に出来る唯一の事だから。
†††
神場
「どういう事だ!?納得行かねぇぞ!!」
俺は目の前にいる者ーーーガルムに叫ぶ。
「納得行かないも何も無いわよ!!これはゼウスの最終審判だ、覆る訳無いでしょう?」
尚もガルムが良い放つので、俺は口を開こうとする。
しかし、それはジェイダによって止められた。
「……ガルム様。ライトの存在がどれだけダークネスに影響をもたらしたのか、ご存知の筈ですが」
冷え冷えとした口調でジェイダが言う。
「……それは承知よ。あの馬鹿にも言ったわ。でも、行くなの一点張り。聞く耳持ちやしない」
「その判決に他の神達も抗議したのだが、さしもの上級神の進言でも、判決は覆らなかったよ」
クロア・バロンが言う。
「……どうにか、ならねぇのかよ」
「無理ね。あの馬鹿は頑固だもの。それこそ、神格を奪わない限りは判決なんて覆らないでしょうね」
ガルムが言うと、俺は苛立つ。
「あの糞駄神に直訴してくる!!」
「止めなさい、ダーク。無駄」
何時にまして五割増しで怖いジェイダが俺の肩を持つ。俺はジェイダの手を掴み。
「悪いな」
ガルムの方へぶっ飛ばした。
「んなっ!?」
どがしゃーん!!と大音量が響き、ガルム達は倒れるが、ジェイダは神器を持って立ち上がる。
「行かせませんよ」
「押し通る!!」
ジェイダが接近するも、俺は闇の刃を幾つも放ち、ジェイダを消し掛ける。
だが、ジェイダはそれすらも避けて接近してくる。
「……悪いけど、此方はやられてやるわけには行かんのよ」
ジェイダの腕を取り、蹴り飛ばすと、俺は走り出す。
すぐに回廊を出て、ゲートへと向かうと、そこには複数の神達が。
「皆!?」
「……さっさと言ってこい。お主の援護をしてやる」
オーディンがグングニルを取り出して言う。
「オッサン……」
「何、ゼウスの奴も色々在るのだろう。だが、友を助けさせないと言うのは些か許せんのでな。お主を支持する神らを集めて回ったのだ。行ってこい、友が待っているのだろう?」
「サンキュー、オッサン」
俺は礼を言うと、ゲートに近付く。
そこには、漆黒騎士団の面々が。
「騎士長グリー以下五十名、我が主の名に置いて馳せ参じました!」
「急いで行くぞ、神の決意を無駄にするな!」
俺は指示を飛ばすと、今一度オーディンを見る。
「オッサン!ありがとう!!」
「礼は良い!早く行け!あ、後儂の所からヴァルキリュリア一人を部隊に権限で突っ込んだからよろしくな!」
「自由すぎるぜアンタ!!」
俺は言うと、最後の団員がゲートに飛び込んだ事を確認し、俺も飛び込む。
「ゲートを壊させるな!死守せよ!!」
『オオオオオオオッ!!』
背後で神達の戦争が起きている事を確認して、俺は光の渦へ入っていった。
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