dead or alive
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第五話 『脱出』
前書き
皆さんこんにちは。久々の投稿になってしまいました。読んでくださっている皆さん、大変申し訳ありませんでした。今回は、第五話を書かせていただきました。普通では考えられない、ニトログリセリンによる爆破のあと、どのような展開が繰り広げられていくのか、どうぞお楽しみください。
それは、俺が小学校五年生の夏だった。プールにいった帰り、ふとコンビニにたちよったのだ。そこには、中学生くらいで、髪を金や茶色に染め上げた、いわゆる不良たちが溜まりに溜まっていた。小学生の俺は、必然的にそいつらのターゲットとなった。人気のないところにつれていかれ、金を要求され、暴行をうけた。そんなときに俺を助けてくれたのが、当時同学年で別クラスだった雲母零斗だった。相手は中学生7人。勝ち目はないはずだった。でも彼の目はいたって冷静だった。余裕綽々で近づいていった一人の男をフック一撃で沈め、後の奴等も同じく地面にひれ伏していった。気が付けば不良たちはいなくなり、俺と零斗だけになっていた。
「なにしてんだよ。そんなとこに座ってないでさっさと帰るぞ」
彼はそう言うと、俺にてを差し出してきた。
「要らねーよ」
助けて貰ったくせに不意に何故かそう言ってしまったが、彼はなにも言わずに手を引き
「なら立て。帰ろーぜ」
「……ああ」
これが、俺と零斗が仲良くなった理由だ。まるで漫画見たいだが、そのお陰で色々と乗り越えることができたのだ。まあ、また助けられちまったんだがね。
12時30分 事件発生から約三時間後
「待たせちまったか?陵太、皆。助けに来たぞ」
などとちょっと決め台詞を言ってはみるのだが、コンクリートの煙と奴等の返り血のせいで服はグチャグチャ。全くきまっていない。
「その格好で言われてもな」
まるで心を読んだかのように言葉を返す陵太だが……良かった。どうやら怪我は無いようだ。柄にもないことを考えて少し恥ずかしくなった俺は、他の生存者たちに目をやる。人数は3人。二人は同じ科なのでわかるが、一人だけ知らない奴がいた。
「そちらは?」
「ああ。そっか知らないんだよな。彼は千歳直哉君。機械科の人らしい」
陵太がそう紹介すると、千歳という男は一歩前にでて右手を差し出してきた。
「えっと、千歳だ。よ、よろしく」
落ち着かない様子で挨拶してきた千歳に、
「おう。よろしくな千歳」
差し出してきた右手に自分の右手を重ねると、くるっと陵太の方へむきなおった。
「陵太さっそくだがな、ここの脱出用の梯子は使えないのか」
ここに来る途中に浮かんだ疑問を早速陵太にぶつける。
「ああ。ここに来たとき真っ先に確認したんだが、どうやら壊れてるみたいなんだ」
やはりそうか。何となくそんなきはしていたが、脱出ルートが少なからず狭まってしまったな。
などと難しい顔をして考えていると、
「雲母くん……だよね」
と、佐伯がキョトンとした顔でたずねてきた。
「な、なんだよいきなり……見りゃわかんだろ?」
突拍子な質問で、言葉をかみつつ受け答えると腕をくんで下を向きながら、
「いや、いつものほほんとしてるめんどくさがりやの君からは想像できない豹変ぶりだからさ」
などとちょっと失礼なことをいってきた。
「お前な……俺をなんだと思って……」
そういいかけたときだった。
バリーン!!
耳をつんざくような音に全員が振り向くと、そこにはいるはずのない男が一人、首もとと口から血を垂れ流しながら立っていた。
「う、うわぁぁ!!ゾンビだ!アンデッドだ!もうだめだ!」
千歳と言ったその男は、突然の感染者の侵入に泣き叫びだしてしまった。それとほぼ同時に、そのゾンビもどきはこちらに襲いかかってきた。
「クソッ……」
反射的に走り出した俺は、教室に備え付けで置いてあった机を、ゾンビもどきへ向けて蹴り飛ばし、そいつの足へ命中させ足を崩す。そこにすかさず飛び掛かり、立ち上がろうとする男の喉仏の三センチしたに短い助走で放った蹴りを叩き込む
「らあっ!!」
『うぐごあっ!』
奇怪な悲鳴をあげた男は魂が抜けたかのように、地面へ倒れこんだ。上向きで倒れているのに頭が体の下にあるのは、触れないでおこう。
「流石だな零斗」
などと陵太はのんきに話しかけてくるが、4階の音楽室にどうやって奴は登ってきたのだろうか。そう思い、割れたガラスに触れないように下を覗くと、
「な、なんだよ……これ……」
そこには想像もできないような光景が広がっていた。数え切れないほどの感染者たちが山のように積み重なり、その山は次第に高くなっている。
「不味いぞお前ら!このままだと奴等の昼飯にされちまう!」
「んなこといってる場合かバカ!さっさと逃げねーとヤバイだろ!」
などと陵太から真面目な回答が帰ってきた。だが、このままだと本当に奴等の餌になりかねん。クソッ……出来れば取っておきたかったが、仕方がない。
「皆!俺がぶち開けた穴から化学室に入れ!」
全員をなんとか束ねて化学室移動すると、部屋に残しておいたニトログリセリンの爆弾を、反対側の壁に設置し、可燃させる。
「離れろお前ら!」
そういって部屋の反対に移動した次の瞬間
ドゴオゥゥゥゥ!!!!
「よし。ここから隣の物理工学室にでて外をめざすぞ。俺がポイントマンになる。ルートは状況に応じて変更するから、はぐれんなよ」
自分でも驚くほど緊張感のある声でそう言った。さっきまで泣きわめいていた千歳とか言った 男も、今はその雰囲気に飲まれている。
「わかったな。それじゃいくぞ」
全員がうなずいたのを確認すると、壁に空いたメートルほどの穴の中へと歩み出た。
学校のなかは相変わらず、恐ろしいほどの静けさでつつまれている。物理工学室から出た俺たちは、ひとまず外を目指すことにした。ひどい騒ぎだったからか、廊下にも、教室にも色々なものが散乱している。車を使って移動できれば良いのだが、あいにく車を運転できる人間はここにはいないので、徒歩で移動するしかない。などと考えながら歩いていると、ふととなりから声が投げ掛けられた。
「ねえ、雲母。あいつらはいったいなんなの?まるでバイオ○ザードのゾンビみたい」
優衣架のやつが、ちゃっかり著作権に引っ掛かりそうなことをたずねてきやがった。やめとけバカヤロー。
「たしか、アラビア半島の方で流行ってた感染症……らしい」
「アラビア?なんでそんなの日本に流行してんのよ。そもそも人間がゾンビみたいになるなんて聞いたことないわよ?」
いつになく真面目な返答をされたので、少々驚きながら言葉を返す。
「さ、さあな。それを俺に聞かれても……陵太、なんか考えられるか?」
「そうだな……アラビアから送られてきた物資にウィルス付着してくる。もしくは旅行や仕事でアラビア半島にいった人間が感染し、潜伏期間をへて日本で発症すると言うことは考えられる。それにその感染症は、狂犬病の一種だってニュースでは伝えてた。それが本当なら、ゾンビみたいになるのもうなずける」
相変わらず冷静に受け答える陵太だが、辺りを警戒している感じが伝わってくる。昔はあんなに弱かったのに、いつのまにか頼れるやつになってやがる。などとのんきに昔を思い出しているときだった。
「止まれっ」
陵太の小さくも鋭い声が、辺りを緊迫した空気に包み込む。
「ど、どうした……?」
千歳がたどたどしく聞くと、
「静かにっ……奴等がいる」
陵太のその声に、俺は窓のガラス越しに曲がり角の向こうを確認する。
「ッ!マジかよ……」
そこには、通路に無数に広がる感染者たちの群れだった。その容姿はおぞましいもので、裂けた腹部から腸があふれ出したものや、腕が関節からちぎれて無くなったもの、何があったのか下顎が無くなっているものなど、種類は様々だ。
「こっちは無理そうだな陵太。迂回しよう」
「ああ、そうしよう」
ルートを変えるべく、後ろへ下がろうとしたときだった。
ガキン!
「……ッ!」
顔を青ざめさせながら後ろを振り向くと、外れて落ちた窓ガラスを、千歳が踏みつけてしまっていた。
「うわ!ご、ごめんなさい!」
皆に凝視されてしまったせいか、てんぱって大きな声を上げてしまった。
「バカッ……!大きな声をだすな……!」
陵太が千歳の口を塞ぎ牽制するが、時すでに遅かったようだ。俺たちの姿を見つけたらしい感染者たちが、群をなしてこちらに走り出した。
「不味い!みんな逃げるぞ!」
悲劇は終わったものだと思っていた。でも、違った。これからが本当の、終焉わりの始まりだった。
後書き
人物紹介
千歳直哉
神河工業高校機械科にかよう一年生。パット見はひ弱な印象をもち、実際とても臆病な性格をしている。だが、棒状のものを持たせるとまるで人が変わったように強くなる。彼いはく、中学生のころは剣道部に所属していたらしい。
いかがだったでしょうか。楽しんで読んでいただけたのなら幸いです。第六話は、できるだけ速くアップしたいと思いますので、どうぞご期待ください。
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