たまには違うことも
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第三章
「これが」
「まあ車はな」
「凝る奴は凝るからか」
「そうした世界だからな」
「それで俺もその世界にか」
「今入ろうとしてるってことだな」
マードックはブライアンにこう返した。
「つまりは」
「そういうことか」
「それでどうだい?今の気持ちは」
マードックはそのブライアンにあらためて問うた。
「アメフトばかりから変わったかい?」
「ああ、確かにアメフトのことは考えるさ」
仕事だからだ、フットボーラーとして当然である。
「けれどな」
「それとは別にだな」
「こっちのこともあれこれ考えて調べてな」
そして、というのだ。
「熱中してな」
「いい感じにだな」
「気分転換になってるよ」
「それは何よりだ」
「いいな、車も」
「それにな、趣味自体もな」
これを持って熱中することそれ自体がというのだ。
「いいものだろ」
「前から音楽だの読書だの釣りだのしてたけれどな」
「趣味は多い方がいいんだよ」
「それだけ気分転換が出来るか」
「それでな」
さらに言うマードックだった。
「人間としての深みも出るってな」
「そうも言われてるんだな」
「だからな、車もな」
「楽しむといいんだな」
「それでどんな車にするんだ?」
マードックはブライアンにまた問うた。
「一体」
「そのことか」
「ああ、どんなのにするんだ?」
「それを今考えてるんだよ」
これがマードックの考えだった。
「どんな車にしようかってな」
「そうか、それがまただな」
「面白いな」
「そうだろうな、俺もな」
「あんたも車の趣味があるのか?」
「いや、俺はオーディオだよ」
音楽の方だというのだ。
「あんたは好きな歌手のそれを聴くけれどな」
「あんたはオーディオセットをか」
「充実させてな」
そしてその充実させたオーディオセットでだというのだ。
「それで聴いてるんだよ」
「部屋も凝ってそうだな」
「響音も外への防音も万全にしてるぜ」
「本当に凝ってるな」
「どんな部屋にするか考えることもな」
「それでどんなのを買うか」
「そうしたことを考えることもいいんだよ」
楽しいというのだ。
「仕事のいい気分転換になるさ」
「そうか」
「そうだよ、かなりな」
マードックはブライアンに笑顔で話した、そしてだった。
ブライアンはマードックのその言葉を受けて自分の車について考えていった。そして買った車はというと。
マードックはブライアンが披露したその車を見てだ、まずは口笛を吹いた。そのうえで笑って彼に言った。
「これは意外だったな」
「そう言ってくれるかい?」
「そう来たかって感じだよ」
笑顔でこう言うのだった。
「まさかイタリアにするなんてな」
「あそこが一番かって思ったんだよ」
「デザインがか」
「色々とぬるいところはあるけれどな」
整備面でだ。
「そこは俺が自分でちゃんとしてな」
「それでか」
「ああ、色はこの通りシルバーにして」
フェラーリの最新車をわざわざ特別にその配色にしてもらったのだ。
「その塗料もな」
「特別のものだな」
「いいシルバーだろ」
「何か違うな」
「そうしたんだよ」
「そうか、そこもか」
「特別にこうしたんだよ」
そうだというのだ。
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