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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第八十一話 獅子と兎

 
前書き
アリサとすずか合流。

チビモン[リリカルアドベンチャー、始まるよ] 

 
トノサマゲコモンの城からかなり離れた場所にある森。
そこではアリサが時空の歪みに吸い込まれた大輔達を探していた。
深い森。
風が吹く度に木々が揺れ、ざわざわと騒ぐ。
ここにいると、嫌なことばかり考えそうだ。
一先ず、もう暗い。
明日、ここを抜けることにした。

アリサ「コロナモン、やっぱり大輔がいなきゃ駄目ね」

コロナモン[アリサ?]

苦笑を浮かべるアリサに、なんと言葉を返せばいいか分からず、困惑するコロナモン。

アリサ「この森って…結構大きいのね」

コロナモン[そうだな。今日で何日目だっけか?]

アリサ「そんなの数えてないわよ」

もう大分彷徨っている。
ところが、道らしき道は見つからず、出口もない。
完全に迷ってしまった。
食事や水分は補給出来るだけ良いのだが、精神的に追い詰められるのも、時間の問題。

コロナモン[…ん、誰かの話し声。それも沢山]

アリサ「何処よ?」

コロナモン[こっちだ、アリサ!!]

走り出したコロナモンを追う。
直ぐに追いつき、抱き上げた。
そしてコロナモンが指差す方へ足を進める。































アリサ達が着いた所はトコモンが沢山いる村だった。

コロナモン[トコモンだ!!]

アリサ[…可愛い]

ポツリと呟くアリサ。

ルナモン[すずか~!!此処トコモンの村だよ!!]

すずか「うわあ、可愛い~♪」

アリサ、コロナモン「[………]」

聞き慣れた声にアリサとコロナモンが互いの顔を見合わせ、声のした方に向かう。
そこにいたのは久しぶりの親友とそのパートナーの姿だった。

アリサ「すずか!?あんたどうして…」

すずか「アリサちゃん!?」

ルナモン[コロナモン、久しぶりだね]

コロナモン[おう]

呆然としているアリサとすずかを尻目にコロナモンとルナモンは握手をする。
トコモンがアリサ達の元に群がって来る。

[人間だ~]

[どうしたの?]

[道に迷ったの?]

[お腹空いたの?]

アリサ「ちょ、ちょっと一辺に喋んないでよ!!」

マシンガンの如く矢継ぎ早に紡がれる言葉にアリサは思わず叫ぶ。
今のトコモン達は玩具を目の前にした子供のように目を光らせていた。

すずか「可愛い~♪」

すずかがトコモンを1匹抱き上げた。
トコモンはすずかに頬擦りする。

ズキューンッ…!!

アリサはすずかが心を撃ち抜かれたのを見た。

すずか「ねえ、アリサちゃん」

アリサ「何よ?」

すずか「この子、持って帰ってもいい?」

アリサ「駄目よ!!絶対駄目!!誘拐になっちゃうでしょ!!?」

すずか「そんなあ…」

アリサ「ふて腐れても駄目。早く降ろしてあげなさい。」

すずか「はあい…」

すずかは渋々とトコモンを地面に降ろす。

アリサ「さてと、これからどうしようかしら…」

コロナモン[ここに泊めさせてもらったらどうだ?]

ルナモン[お腹も空いたもんね]

[どうぞ!!]

[大歓迎だよ!!]

[豪華なものはないけれど…]

[ようこそトコモンの村へ!!]

快く承諾してくれたトコモン達に笑みを漏らす。

[僕について来て]

アリサ達はその小さい背中を追っていく。
案内されたのは、他とは少々デザインが違うテント。

アリサ「ここ、どこかチビモンの村に似てるわ」

すずか「言われてみればそうだね」































しばらくすると、食べ物が運ばれてきた。

[これ美味しいよ]

[今日は宴だー]

[皆、優しいんだ]

すずか「ありがとう」

口々に喋りたがる為、誰が何を言っているのか全く分からない。
しかしそれさえも可愛く思えてしまうのだ。
アリサの視線の先には、2匹のトコモン。
その間には、1つの果物。

[これ、僕のだよ!!]

[嫌だよ、僕だって食べたいんだ!!]

2匹が取り合う1つの果物。

[はーなーしーてーよー!!]

[嫌だあ!!]

ぐいぐいと、引っ張る。
見兼ねたアリサが立ち上がる。

アリサ「果物1個で喧嘩しないの。」

アリサは果物を半分にするとトコモンに渡す。

アリサ「分け合えばいいでしょう?喧嘩しないで」

[[うん]]

2匹のトコモンは果物にかじりついた。
すずかが微笑ましげにトコモン達を見つめていた。
このまま穏やかな時間が過ぎると思われた。

ドオォォオンッ!!

アリサ、すずか「「!?」」

突如聞こえた轟音にアリサとすずかが急いでテントから出ると巨大な武器コンテナと超大口径レーザー砲を持つ完全体のサイボーグ型デジモン。
キャノンビーモンがいた。

キャノンビーモン[選バレシ子供達、排除スル。]

その言葉に、アリサ達は凍りついたのである。
選バレシ子供達、という無機質な言葉は明らかに自分達が標的なのだと証明していた。

キャノンビーモン[死ネ]

キャノンビーモンは巨大な武器コンテナからミサイルを放つ。

すずか「ルナモン!!」

ルナモン[うん!!ルナモン進化!レキスモン!!]

ルナモンはレキスモンに進化するとすずかを乗せて森の方に向かう。
キャノンビーモンもレキスモンを追い掛けて森に向かう。

アリサ「あ、あの馬鹿!!コロナモン!!」

コロナモン[コロナモン進化!ファイラモン!!]

多少遅れてアリサ達も森に向かう。






























森はまるで誰もいないかの如く静まり返っているのだ。

すずか「(静かすぎる…どうして…?)」

すずかは不安げに周囲を見渡す。
レキスモンもすずかに倣って辺りの様子を探ってみるのだが、気配は全く感じられないと返すしかない。
レキスモンの俊足に任せて、森の奥深くにまでやってきたはずである。
すずか達ははっきりとした違和感を覚えていた。
今までこの森を歩いていたが、こんなにも気配を感じないことなど1度もなかった。
警戒しながら、キャノンビーモンの追跡をかわしながら、懸命に反撃の機会を窺っていたのだが、今までデジモンと一切会うことはなかった。
遭遇しないのはかえって不自然極まりない。
不自然なまでに静寂に包まれている森林を駆け抜けていく。
後ろを振り返らなくても分かる。
背後から迫りくる轟音は焦燥感を植え付ける。
どれだけ、茂みや岩場を見つけて身を隠したとしても、たちまち探知されてしまうのだ。

レキスモン[すずか…]

すずか「うん。多分アンドロモンと同じ機能が付いてるんだ…」

すずかは冷や汗をかく。
キャノンビーモンのミサイルの威力は凄まじく、単純な攻撃力ならアンドロモンやエテモンを上回るかもしれない。

すずか「っ!避けて!!」

ミサイルが地面に落ちるのと数秒経たずに広がる閃光と衝撃波。
耳の鼓膜が破裂してしまいそうになる。
爆音の後に、待っているのは焦土。

レキスモン[ムーンナイトボム!!]

両手のムーングローブから催眠効果のある泡を発生させ、キャノンビーモンに喰らわせるが、全く効いていない。
直接攻撃することも考えたのだが、キャノンビーモンの超大口径レーザー砲により、蜂の巣にされるだけだ。
キャノンビーモンは再びミサイルを放った。
レキスモンは背中の突起から氷の矢を引き抜いた。

レキスモン[ティアーアロー!!]

氷の矢とミサイルがぶつかり、ミサイルが凍結する。
凍結したミサイルは大きく軌道をずらし、池に落ちると豪快に水しぶきを上げた。

キャノンビーモン[選バレシ子供達、排除スル!!]

すずか「くっ…!!」

キャノンビーモンがレキスモンとすずかに突っ込んでくる。

ファイラモン[ファイラクロー!!]

横から入ったファイラモンが炎を纏った強靭な前足でキャノンビーモンを吹き飛ばす。

ファイラモン[大丈夫か!?]

レキスモン[ファイラモン!?]

すずか「アリサちゃん!?」

アリサ「すずか、あんた勝手に動かないでよ、もう…」

すずか「ご、ごめんね…」

ファイラモン[アリサ、説教は後だ。まずはあいつを倒さないと]

アリサ「…そうね」

ファイラモンが翼を羽ばたかせ、キャノンビーモンに向かっていく。
キャノンビーモンがファイラモンに向かってミサイルを放つ。
ファイラモンは網目を縫うようにミサイルを回避すると額から火炎爆弾を放った。

ファイラモン[ファイラボム!!]

火炎爆弾を受けたキャノンビーモンの動きが硬直する。

ファイラボム[ファイラクロー!!]

硬直したキャノンビーモンを吹き飛ばす。
キャノンビーモンは池の中に落ちる。

すずか「凄い!!」

アリサ「当然よ!!」

レキスモン[まだ油断しないで!!]

気を抜いたアリサとすずかにレキスモンが注意を飛ばす。

レキスモン[ティアーアロー!!]

池に数発、氷の矢を放ち、池を凍らせる。
これで合流するまでは持つはずだ。
レキスモンがファイラモンの元まで近づいた途端。
キャノンビーモンが凍りついた池から出て、ファイラモンに向かっていく。

ファイラモン[ファイラボム!!]

ファイラモンが再び火炎爆弾を放つが、キャノンビーモンはそれをたやすく避けていく。

レキスモン[ティアーアロー!!]

ファイラモンを援護しようと、氷の矢を放つがたやすく回避されてしまう。
ファイラモンの炎もレキスモンの氷も通用しない。
どうすればいいのだろう。
すずかとアリサは必死に頭を巡らせる。

ファイラモン[ファイラボム!!]

ファイラボムを受けてキャノンビーモンが僅かながら吹き飛ぶ。
しかし、超大口径レーザー砲から放たれたビーム…ニトロスティンガーがファイラモンの翼を撃ち抜いた。

ファイラモン[ぐあああああ!!!!]

アリサ「ファイラモン!!」

落下していくファイラモンの元へ駆ける。
レキスモンは大きく跳躍し、キャノンビーモンに急降下する。

レキスモン[ムーンナイトキック!!]

背後から一撃を受けてキャノンビーモンは落下する。

アリサ「ファイラモン!大丈夫!?」

ファイラモン[な、何とか…]

すずか「レキスモン!?」

アリサ「!?」

すずかの叫び声に反応して上を見上げるとニトロスティンガーが直撃し、撃墜されたレキスモンの姿があった。

ファイラモン[レキスモン!!大丈夫か!?]

レキスモン[何…とか…]

弱々しく立ち上がるレキスモンにアリサの中の何かが切れた。

アリサ「あんた…絶対に許さない!!」

アリサの叫びが響き渡った。
仲間を目の前で傷つけられたという事実が突き付けられた瞬間、アリサにあったのは純粋な燃え上がるような怒り。
その感情に応えるようにD-3に紋章が浮かび上がり、朱色の光がアリサとファイラモンを包み込んだ。

アリサ「ユニゾンエボリューション!!」

アリサとファイラモンが一体化し、新たな姿へと進化する。

ファイラモン[ファイラモン超進化!フレアモン!!]

ファイラモンは仲間の為にはどんな困難にも立ち向かう心の強さを持った獣人型デジモン。
その威風堂々とした鬣とその存在感はレオモンに近いものを感じるフレアモンへと進化した。

すずか「進化した…」

レキスモン[…フレアモン……?]

すずか「レキスモン、大丈夫?」

レキスモン[…うん。]

フレアモン[紅蓮獣王波!!]

フレアモンが拳に闘気と火炎のエネルギー波を放つ。
キャノンビーモンはそれを回避する。
あまりの熱量にキャノンビーモンはフレアモンから距離を取りつつミサイルを放つ。
フレアモンは俊敏な動きでミサイルをかわす。
飛行能力を持たないフレアモンでは攻撃手段が限られてくる。
援護が必要だと思った。

すずか「レキスモン…」

レキスモン[何?]

すずか「まだ動けるよね?」

レキスモン[当然。私はすずかのパートナーだよ]

すずか「アリサちゃんを…フレアモンを助けよう」

レキスモン[…了解!!]

レキスモンが上空にいるキャノンビーモンを睨み据える。
すずかはD-3を握る右手を、己の胸に当てた。

すずか「私達は、あいつに勝ってみせる。アリサちゃんとコロナモン…そして、ルナモンと一緒に!!」

凛々しく。
そして、勇ましく。
すずかは宣言した。

すずか「だから私は…私達は、絶対に負けない!!」

D-3のディスプレイに凛然の紋章が浮かび上がる。
すずかとレキスモンを光が包み込んだ。

すずか「ユニゾンエボリューション!!」

すずかとレキスモンが一体化し、光が収まると、そこには力強いフレアモンとは対象的に柔軟さを持ち、しなやかな動きで敵を討つ完全体の魔人型デジモン。
流麗な戦闘を得意とし、月の光を受けると倍増すると言われているクレシェモンへと進化した。
クレシェモンは自身の武器、ノワ・ルーナを1つにし、ボウガンのような形にする。

クレシェモン[ダークアーチェリー!!]

闇の矢は寸分違わずキャノンビーモンの超大口径レーザー砲を破壊した。

アリサ『すずか!?』

すずか『ごめんアリサちゃん。遅れちゃって』

クレシェモンと一体化しているすずかが謝罪する。

アリサ『別に。すずか、クレシェモン。あんた達、アレを止められる?』

フレアモンと一体化しているアリサが尋ねて来る。

クレシェモン[…出来る]

すずか『私とクレシェモンなら…』

アリサ『それじゃあ任せたわよ!!』

フレアモン[頼りにしている!!]

クレシェモンは動き回るキャノンビーモンに狙いを定める。

クレシェモン[アイスアーチェリー!!]

次に放ったのは氷の矢。
それは狙い違わずキャノンビーモンに命中し、レキスモンの氷の矢とは比較にならない威力で一瞬で凍結した。

アリサ『今よ!!』

フレアモン[うおおおおおお!!!!]

フレアモンは大きく跳躍し、拳と足に焔を纏わせる。

フレアモン[紅・獅子之舞!!]

キャノンビーモンに高速で繰り出される格闘乱舞を喰らわせる。
凍結したキャノンビーモンは一瞬で粉砕された。
それを確認するとアリサとすずかは融合を解除し、フレアモンとクレシェモンはサンモン、ムンモンに退化した。

アリサ「やったわね」

すずか「うん!!」

パンッ!!

ハイタッチ。
景気のいい音がした。

賢「おーい!!」

フェイト「アリサ!!すずかー!!」

アリシア「大丈夫ー?」

ルカ「ご無事で何よりです!!」

向こうから賢とフェイト、アリシア達の姿が見えた。
残る仲間は後1人。
 
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